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2016/12/31 | デザイン | 557view

もうひとつのデザイン・シンキング

「Structre(構造)とChaos(混沌)の関係性」は、monogoto Inc.のCEO 、Ziba Design Inc.のエグゼクティブフェロー 、京都大学デザインスクールの特命教授でもある、濱口秀司氏が1998年から提唱されています。
濱口氏は、デザイン思考には「DTn(Design Thinking driven by needs)」と「DTf(Design Thinking driven by frameworks)」2種類あり、イノベーションを生み出すのは後者である。といったような独自の切り口での主張を展開しています。興味がある方は『Harvard Business Review 2016年4月号 特集 デザイン思考の進化』をご覧ください。
本稿の下部にも参照先として、濱口氏の「TED」と「WORKSIGHT LAB.」の映像を表記しております。併せてご覧ください。

構造と混沌の間

濱口氏は「イノベーションを生み出すには、バイアス(固定概念・先入観)を壊す必要があり、このバイアスを壊すためにクリエイティブ(創造的)に考える必要がある」と主張します。
では、創造的に考えるとはどのいったことなのでしょうか?そこで登場するのが「Structre(構造)とChaos(混沌)の関係性」です。濱口氏は、人が物事を考える時には「structred」と「chaotic」という2つのモードがあると述べています。それぞれの内容は次の通りです。

structured = logic / number / formula / reliability
chaotic = intuition / inspiration / picture / validity

簡単に置き換えますと「structred」が論理的でその考えに理由がある左脳の機能。「chaotic」が直感的でその考えに理由がない右脳の機能となります。そして「structred」と「chaotic」の中間地点が最も創造的な状態であると主張し、そのスイートスポットを「Structured Chaos」と定義しています。
これらの主張に学術的な裏付けはありません。しかし、濱口氏が実践してきた500を超えるプロジェクトの成功事例は、主張の正当性を強固にしています。

Structured Chaosへの到達方法

濱口氏は「Structured Chaos」に到達し、創造的に考える状態を維持するには、3つの方法があると述べています。
structuredとchaoticを行ったり来たりする
思考が表出するメディアを監視し、コントロールする
創造性のレベルを下げる
本稿では2つ目の方法である「思考が表出するメディアを監視し、コントロールする」について言及します。
濱口氏は「structred」から「chaotic」の段階によって、思考の表出方法が異なることに注目しました。それは次の通りです。

structured > number > diagram > doodle > drawing > chaotic

最も「structred」に近い状態では「number(数)」が表出され、反対に最も「chaotic」に近い状態では「drawing(絵)」が表出されると仮定した場合、「diagram(図表)」と「落書き(doodle)」が表出されている時は「structred chaos」のスウィートスポット付近に違いないと濱口氏は考えたのです。
「diagram(図表)」と「落書き(doodle)」がメディア(紙、ノート、ホワイトボードなど)に表出するように心がければ、創造的に考える状態を維持しているといえます。つまり、思考が表出しているメディアを監視することで、自分(もしくはチーム)の思考状態を視覚的に捉え、把握することが可能となるのです。
また、この「diagram(図表)」を描くということが、バイアスの崩し方と密接な関係にあります。

バイアスの壊し方

濱口氏はバイアスを壊すには視覚化する必要があると述べています。なぜならば、見えないもの・構造なきものは、壊せないからです。反対に視覚化さえできれば、論理的にバイアスを破壊できる方法が分かるのです。
だからこそ、プロジェクトの初期段階はアイデアではなく、アイデアの切り口やアイデアの背景に潜むモデルを描き、現時点のバイアスを知る必要があると濱口氏は言及しています。無作為にアイデアを自由発想しているだけでは、バイアスの影響下から抜け出しづらいのです。

クリエイティビティの再現性について
今回の「Structre(構造)とChaos(混沌)の関係性」について、濱口氏の論述を追っていくうち、藝大の須永先生との会話が頭の中をよぎりました。
“デザイナーは自分でアウトプットした物事の意味と価値を分かっていない。だから、他者は偶然できたに違いないと思っている。残念ながら、偶然できたものへの、対価は払いづらい
だからこそ、デザイナーはデザインした物事の意味と価値を分かり、言葉にして他者に示す必要がある。意味と価値を分かった上で言葉にすると、偶然の産物でないことを証明できるからだ”
(須永剛司,2016)

濱口氏が主張する「Structured Chaos」は、まさにこの再現性を高めることで、結果や成果物が偶発生まれたことではないことを証明しているのです。
濱口氏は1998年から「Structured Chaos」という切り口で創造性に対して言及しています。興味深いことに、2000年代初頭のアメリカでプロダクトデザインの領域から、ビジネスの領域へと「デザイン思考」が転用されることで、デザイン思考という言葉が市民権をえますが、同時期に創造性の体系化を試みていたことです。
今回のゼミの中で、草野氏は「“技能”を形式化することで、再現性を高め“技術”にする」と述べていました。まさにいま、デザイナーの技能を形式化することで、再現性を高める事業に注目が集まっています。
例えば、人工知能を使ってデザインが実行される「Firedrop」というサービスがあります。このようなサービスが一般化された時、デザイナーは何をもって、デザインしたと言い切るのか、これからの時代を生きていくデザイナーの課題なのかもしれません。

Break the bias: Hideshi Hamaguchi at TEDxPortland 2012
https://youtu.be/6g2pMOYmyoQ

WSL_濱口秀司_「認知バイアス」にイノベーションのカギがある
https://vimeo.com/48997854