クリエイティブ経済誌 BUSINESS TIMELINE
Vol.24
アート
2017.06.16

最低限の道具で最大限の技術を魅せる 「フェイスペイント」に迫る

昨今、コンピュータグラフィックスなどのデジタルツールが発展したことで表現の幅が飛躍的に広がっている。一方、人の顔に筆と色だけで描くという非常にアナログな手法を追究し続けるアーティストもいる。今回は、フェイスペイント・特殊メイクの技術を駆使して映画や広告関連の現場で活躍する、Shanic Maiyel CO.,LTD.( art design eND[LLC])のアーティストAmazing JIRO氏の作品表現について紹介したい。

左:(※2)『skull』 右:(※1)『doll』

リアルを多角的に捉え、作品に「二面性」を持たせる

JIRO氏は最低限の道具でどこまで表現できるかを伝えたいという想いがある中で、「リアル」には多角的な捉え方があると話す。
JIRO氏「物事には『二面性』(※図解1)があると考えていて、そういった要素を制作に取り入れるようにしています。『人形のような可愛らしさ』と『人間のありのままの姿』(※1)という二つの要素を組み合わせたり、人間が心に持つ『ダークな部分』にあえて『綺麗なもの』を加えることで、より美しさの際立つ現実感を映し出すことができるのです」
作品の中に二面性を持たせることで、見る側に違和感や驚きを与え、考えるきっかけを生み出している。二面性とは、「ものが相対する二つの性格を内包している」ことを指すが、わかりやすく表現した例として、『skull』(※2)という作品がある。女性の顔の中心が骸骨になっているのだが、女性自身は滑らかな肌にピンク色のチークを施した美しい女性のように見える。
JIRO氏「『skull』というタイトルにもあるように、女性の心の中に潜む『ダークな部分』をわかりやすく表現しています。顔を骸骨にする表現はよくありますが、この作品ではピンク色のチークを入れるなど、女性が元々持っているピュアな部分をあえて強調していることが特徴です。また、骸骨の眉間を寄せたり歯を牙にしたりすることで、反映された女性の心を表しています」
物事が秘める裏表や光と影のように、相反する要素が垣間見えたとき、純粋に人の心は動くだろう。見る側に考えてもらう余地を残すため、あえて作品の設定を作り込みすぎないようにしているという。


アナログとデジタルの狭間にあるものとは

デジタルで表現できる幅は着実に広がっているが、デジタルとアナログの表現の違いをどのように捉えているのか。
JIRO氏「今って、デジタルで何でも表現できてしまうと思うんですよ。私自身極めてアナログな技術を追求する一方で、デジタルの良さも理解しています。いずれ取って代わられる可能性もありますが、アナログだからこそ伝わるリアリティがあります。例えば、デジタルは画面を通して見ることが多いですが、ペイントは生で現物を見られるという大きな違いがあります。制作過程のデモンストレーションを行うなど、様々な見せ方を通してアナログの技術を伝承していかなくてはならないと感じています」



横を向いた女性の顔が、かざしている手の方に映っている。映った顔には、どこか見下すような表情が強調されている。

「あっ」と驚く表現で記憶に残るクリエイションをつくる

また、インスタグラムなどのSNSを活用して自身の作品を撮影し発信している。フェイスペイントは「メイキングを見たい!」と言われることが多いという。筆で描くという、いわば誰でもできる手法の延長線上でこんな面白い表現ができるということを伝えることで、より興味を惹きつけることができる。
JIRO氏「以前から、人が何かを見たときに『わっ』と驚きが起こることに興味がありました。『人にサプライズを与えること』の実現は、自身の活動において常に考えています」
現在、国内外で広く活動するJIRO氏だが、今後は今まで以上に海外展開に力を入れたいと話す。感覚に訴えかけるクリエイションは、捉える側が意図しなくとも記憶に鮮烈に残し、言葉や文化が異なる海外においても強力なメッセージを伝える有効な手法となるだろう。

Instagram @amazing_jiro


■art design eND [ LLC ]