クリエイティブ経済誌 BUSINESS TIMELINE
Vol.24
アート
2017.06.16

現代アーティスト小松美羽が描く「死生観」

どんなにテクノロジーが進化しても「魂」は消えない『神獣〜エリア21〜』
2016年1月発行BTL特集「人間力/小松美羽」から約1年半、小松美羽は更なる進化を遂げていた。2017年6月3日から紀尾井カンファレンスで小松美羽展『神獣〜エリア21〜』を開催、2017年も勢いが止まらない小松美羽のクリエイションを追う。




「文明」と「文化」の違い

現代アーティスト小松美羽を理解するうえで、まず知らなければいけないこと。それは、文明と文化の違いではないだろうか。昨今、著しい進化を遂げる科学やテクノロジー、それに伴う物質的な豊かさなどが文明的な所産とすると、文化は、より普遍的で哲学や芸術・思想などの精神的な部分に重きをおいたものだろう。小松美羽は、日本の伝統文化に現代アートを融合させて、世界へ発信する芸術活動を行っている。


黄金比と大和比から感じる大和力

美しいデザインには「黄金比」があると言われている。モナリザ、サグラダ・ファミリア、凱旋門、最近ではアップルマークにもある比率。そして日本には古くから「大和比」があるといわれている。黄金比が1:1+√5/2(近似値1:1.618)に対して、大和比は1:√2(近似値1:1.414)。1600年前の大和絵では幾何学のしっかりとした構図を持ち、そのルールの中で表現されている。法隆寺など日本建築に多く見られる。また、室町時代の能面にいたっては、面打ちによって黄金比と大和比の使い分けがされていたという説がある。自然界で美しいと言われている黄金比に対して、建築等の人工物の安定的な大和比の美は、日本人のDNAに刷り込まれている美意識だとも言える。
小松美羽「日本は最古の国と言われているように、ずっと長く続いてきた国であり、多くの文化が流れてきてそれが魂につながって一つ一つができるのです。そして私たちの身近なものへ変化してきたのだろうと感じます。大和力というのは、日本のものだけではなく世界の文化に感謝し尊敬すること、そして世界へ伝えることが大切だと思っています」


小松美羽の「大和力」とは

一昨年、『天地の守護獣』として有田焼の狛犬に小松美羽が絵付けをし現代アートとして蘇らせた。その狛犬が、ロンドン大英博物館に永久所蔵され常設展示になったということで話題になった。
小松美羽「狛犬を海外へ持って行くと、『狛犬ってもともとなんなの?』と聞かれるのです。スフィンクスやユダヤの神獣が元になっていることを伝えると、その派生したものがイギリスでは『グリフォン』だというような声がもどってきます。日本の文化だと思っていたものが、実は一つ一つ分解していくことで、色々な国に繋がっていくことを知ることができます。そういった身近な会話になることのひとつが伝統工芸なのだと思いますし、それが『大和力』だと思います」


台湾の展覧会で「狛犬」が受け入れられる

2017年4月、台湾に出品した展覧会において小松美羽としての新たな気づきと進化が感じられる出来事があった。
小松美羽「台湾の展覧会では『狛犬はすごく平和的で幸運の象徴に見える』と言われました。私は、狛犬を守護的で人の魂を守るようにと思って描いていたので、ちょっと違った見方をされているのはおもしろいなと感じています。台湾で狛犬を買っていただいた方は産婦人科を開業されている方だったのですが、『狛犬って悪いものを寄せ付けないものでしょ。幸せな子供達が生まれるためだから』というお話を聞いて、色々な人と関わることで私の絵は進化していくのだなと思いました」

『魂を見つめる守護獣』

新「狛犬」に魚の尻尾が!?

次なる狛犬として『魂を見つめる守護獣』を制作。その狛犬には「魚の尻尾」が付いているが、なぜなのか理由を聞いた。
小松美羽「狛犬というのは、高句麗犬(こうくりいぬ)がなまって狛犬になったので、狛犬として確立したのは日本になるのですが、実は隣国があってこそなのです。高句麗から日本に渡るときは『海』を渡っていることになるので、水を受け洗礼されて日本にやってくるという意味合いを持たせて、魚の尻尾で表現してみました」

『灯し続け、歩き続け』

テクノロジーが進化しても「魂」を失ってはならない

昨年、G7長野県・軽井沢交通大臣会合のアンバサダーとしてひとつの絵を描いた小松美羽が強く打ち出したことがある。
小松美羽「この作品タイトルは『灯し続け、歩き続け』です。これは、『車などの自動運転の時代が思ったよりも早く来るので、それをイメージした絵をお願いしたい』というオーダーでした。私が絵に込めたものは、どんなにテクノロジーが進化しても、人間の魂は変わらないで欲しいという想いと、便利になることで魂が小さくなってしまうことはいけないので、『魂が燃えているものだけに呼応して妖精たちが集まってくる』ということを描きました」


『神獣〜エリア21〜』に込められた想い

2017年6月3日から9日間、紀尾井カンファレンスにて個展を開催。テーマは『神獣〜エリア21〜』、作品を際立たせるために3つのワード「天界」「結界」「黄泉(よみ)の世界」をコンセプトとして世界観を表現。
小松美羽「『天界』は、宇宙から地球を見た時に国境ではなく、正二十面体の区画で見ているのではないかという考えで、エリア1からエリア20までの区画で表してみました。そして『結界』は、そのエリアごとの△(三角)の結界です。三角にはそれぞれエネルギーがあり、20の全てにエネルギーの結界があります。それはすなわち、全ての国にあるパワースポット的な場所で、我々が物理的に認識できないようなエリア、つまり魂で感じるスピリチュアルなところで繋がっている世界なのです。21番目が『黄泉の世界』になるのですが、そこは人間が近寄れない場所で人間が死んだあとに魂が行ける場所です。現代において希薄になってしまったり信仰心がなくなったり、遠くなってしまったところをぐっと近づけるという狙いがあります。言葉にしてしまうととても宗教的になってしまうかもしれませんが、アートにすることでとても普遍的なものになると思っています」