クリエイティブ経済誌 BUSINESS TIMELINE
Vol.25
カルチャー
2017.07.18

地産品クリエイティブを敢えてシンプルに魅せる

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地産品ショップというと、観光名所などの写真やイラストを用いた商品が多いイメージがあるのではないだろうか。そんな中、敢えて地産品の情報を多用せず、シンプルなデザインを起用した地産品ショップがある。JR東日本が駅構内を中心に展開する「のもの」事業である。その背景には、「人とものをつなぐこと」をテーマに首都圏での販路を広げ、さらに実際に現地へ足を運んでもらうところまでつなげたいという想いがあった。
その想いを受けビジュアルの魅せ方を担うのが、DODODESIGN代表の堂々氏だ。全ての根底となる「旬のもの、地のもの、縁(ゆかり)のもの」というコンセプトを中心とし、店舗デザイン、ロゴ、商品パッケージなど多岐にわたるクリエイティブを展開している。


共有されたイメージがコミュニケーションの起点をつくる

子どもの頃、誰もが描いたことがあるであろう「へのへのもへじ」をモチーフとしたデザイン(※1)は、ロゴなど随所に用いられている。どのようにしてこのモチーフへと行き着いたのか、堂々氏に伺った。
堂々氏「受け手側を想像したときに、専門の方でない限りデザインを常に意識しているわけではないのが当たり前。そこで、誰もが知っているデザインの要素、つまり、へのへのもへじを入れることで、受け手側とのデザインを通じたコミュニケーションを円滑にすることができると考えたのです」
堂々氏は、新しい商品やサービスを世に送り出す際、消費者との最初の接点となるビジュアルにおいて、常に受け手側の視線を留めるアイデアとして「どこか馴染みのある要素」を意識的に取り入れていると言う。
一方、JR東日本では、「青森のもの」「秋田のもの」など店舗で地方ごとの魅せ方を考えていた。そのため、「へのへのもへじ」のモチーフに、「〇〇のもの」という文字を組み合わせた魅せ方がしっくりとはまったそうだ。このモチーフはポスターなどでも用いられ、駅構内での掲示により通勤などの駅利用者への認知度が向上。店舗への来店者数増加にもつながっている。


面白さは「想定外」のものから生まれる

「のもの」の店舗等で取り扱われるオリジナル商品パッケージは、女性が気軽に手に取れることを意識したデザインを採用。実際に20〜40代の女性客が多くなったという。デザインには、昔懐かしいモチーフが用いられている一方で、どこか新しさを感じるモダンな要素もある。そこにはどのような背景があるのだろうか。
堂々氏「『モダン』という言葉には近代的な『洋』のイメージがあるかもしれません。ですが、本プロジェクトを進める中で日本語表現や和のモチーフからも洋の表現ができることに気が付きました。たとえばひらがなの『の』も、よく見るとアルファベットの『e』のように見えてくることがあります。人間の想定内のところから面白いものは生まれない。思ってもいなかった意外性がデザインには必要なのではないかと思うのです」
また、堂々氏を含むJR東日本との打ち合わせでは、今までにない地産品ショップとして新たな試みを考える中でも、柔軟なコミュニケーションが思いがけず展開を促したシーンがあったという。
堂々氏「打ち合わせの雑談の中で、今後の広がり方について冗談交じりでよく提案させていただいています。カフェやジュースバー、居酒屋などそこから実際に実現できたものは多くありました」
現在に至るまで多岐にわたり展開してきた「のもの」。JR東日本では、「人ともの」を繋げることから、今後はより「人と人」を繋げていくことをテーマに、生産者が地方の魅力を直接発信できる場作りなど構想を膨らませていく。


編集部の視点

地方企業では、商品の認知拡大の中で、外部への発信がうまく実現できていないケースも多くあるようだ。今後さらに首都圏の一極化が予想される中で、地方から首都圏に留まらず多方向的なコミュニケーションを模索していくことが必要だ。



■株式会社DODO DESIGN