クリエイティブ経済誌 BUSINESS TIMELINE
Vol.45
カルチャー
2019.03.22

「長野県白馬村」オールシーズン楽しめる世界有数のマウンテンリゾート構築

圧倒的「絵力」と戦略的「広報力」で地域活性化
白馬ファンがオールシーズン楽しめるマウンテンリゾートへ

POINT
✔スキー場をオールシーズン楽しめるマウンテンリゾートへ
✔白馬の圧倒的「絵力」は、著名ブランドをも魅了する
✔お客様にアンバサダーになってもらう努力と、「シェア」を継続的に促す取り組みを行っている

八方尾根

スキー場として日本有数の山岳地域になる長野県白馬村。しかし、スキー人口減少に伴い、スキー場としての維持が難しい状況となっている。スキーは冬のスポーツであるため、冬以外の春から秋にかけても、人を呼び込むためのインフラ作りに立ち上がったのが白馬観光開発。都内からも2時間半ほどで行ける距離と、オールシーズン楽しめるマウンテンリゾートへ向けた戦略的な開発によって想定以上の来場になっている。果たして、どのような戦略で開発が進んでいるのか。白馬観光開発和田寛氏へ取材を試みた。

冬の「スキー場」から、オールシーズン「マウンテンリゾート」へ

−現在進められている「オールシーズンで楽しめるマウンテンリゾート」について全体構想を教えていただけますでしょうか。また、その企画に至った経緯を教えてください。

和田氏「日本国内の人口がこれから大きく伸びることは期待できない中、冬本番のスキー参加率もここ20年で1/3程度まで縮小しています。もちろん、私たちのお客様の中心が国内のスキー・スノーボードであることはこれからも変わりませんし、そのお客様が少しでも増えるような業界全体の取り組みを当社としてもリードしていく必要があります。また、私たちのスキー場を選んでいただけるようにしていく努力はこれからも怠らず進めていきますが、今後大きな伸びを期待することは難しいと感じています。一方、春・夏・秋のグリーンシーズンの方が1年の中では長いという事実と、圧倒的な山岳景観という類稀なる資源を持つ白馬のポテンシャルを考ると、もっとこの魅力をお客様に理解していただける取り組みを続けることで、この地域がより潤っていくのではないかと考えました。オールシーズンでお客様に来ていただける体制を整えることは、現在の冬季の短期雇用が多いことによる労働力確保の苦労の低減やサービスレベル改善の頭打ちの解消、域内人口の増加などに繋がります。それに伴い宿泊施設やレストラン、ショップ等の稼働が改善されることで個別施設のリニューアルや、より魅力的な施設誘致にも繋がり、地域の課題を解決する大きな一歩となるはずだと考えています。単なる『スキー場』ではなく『マウンテンリゾート』を目指すということが、オールシーズンの魅力を伝えていくためには必須だと考えています。例えば、お客様の本質的なニーズは、『スキーやスノーボードをしたい』というだけではなく『雪の上で味わう非日常感』や『他のレジャー・スポーツでは味わえない爽快感』といった要素が強くなっています。実際、白馬にいらっしゃる外国人の方を見ていると、1日中滑っている人は少なく、大半の人は雪の上でビールやハイボール、コーヒーを飲んだり、街で買い物をするなどゆっくり時間を過ごしながら、滞在そのものを楽しまれています。白馬のロケーションはこうした非日常感・爽快感を味わう『マウンテンリゾート』としてのポテンシャルを高く持っていると感じています」

–それぞれの施設エリアでは、海外ブランドを始め日本の注目ブランドとも上手く組まれていますが、一緒に取り組もうとなった「決め手」はどのあたりにあると思われますか?

和田氏「白馬という地の利を持つ場所だからこそ、組んでいただけるケースが多いと思っています。白馬の自然の雄大さ、美しさは圧倒的ですし、住んでいる人間が言うのもなんですが、日本であれだけ山が綺麗に見える場所はないと確信しています。もちろん、お声がけした先に全て出て来てもらっているわけではなく、裏では色々断られるケースも少なくありませんが、粘り強く白馬の良さを経済効果へも換算しながら、きちんと説明を続けることでパートナーの方たちにもしっかり魅力として受け取ってもらえていると考えています」

白馬つがいけWOW!

想定以上の来場で、キャパシティ増強の必要性?

–マウンテンリゾート化に向けての開発が進むにつれて、どのような変化がありましたか?

和田氏「新しいことを仕掛けることでお客様は如実に反応してくれるなという感触は持っています。例えばフランス発祥の『Xtrem Aventures(エクストリーム アベンチャーズ)』を日本で初導入した施設で、自転車での空中散歩など、9種類のスリリングなアクティビティが楽しめる『白馬つがいけWOW!』は、昨年8月の開業後3ヶ月で予定の1.5倍以上となる8,000人が来場しました。また、白馬岩岳山頂において、ニューヨーク初の老舗ベーカリー『THE CITY BAKERY』も信州初出店した北アルプスの絶景を一望できるテラス『HAKUB MOUNTAIN HARBOR』は、さらに人気が爆発していて、開業約1ヶ月で昨年比5倍以上、当初想定の2倍以上となる3万人超の来場がありました。人気のプレッツェルクロワッサンは昼前にはすぐ売り切れてしまう日もあり、早々にキャパシティ増強の必要性を感じています。白馬岩岳エリアに昨年12月に開業した、日本情緒あふれる古民家などを再生・利用した高級古民家リゾート施設『旅籠丸八(はたごまるはち)』についても、本年2月には約80%の稼働率を達成するなど、順調に集客も進んでおり、お客様のニーズに合わせた街並みのリノベーションも進み始めています」

–では最後に、認知等を促すために行っているプロモーションや広報活動など教えてください

和田氏「まずは『日本初』『日本最大』といった、分かりやすい話題になる取り組みを徹底することでメディアやSNS で取り上げてもらいやすくすることを心がけています。また、ありがちではありますが、白馬の大自然という圧倒的な『絵力』を背景に、来場いただいたお客様にアンバサダーになっていただき、『シェア』していただくことを促すような取り組みも継続的に進めていきます。そのためにも顧客アンケートなども活用しながら顧客サービスや施設の改善を続け、白馬の『ファン』を増やしていくことが何よりも重要だと考えています」

星空観察会

編集部の視点
関東圏からのアクセスの良さ、加えて自然豊かで空気の良さや絶景も相まって観光地としてのみならず、昨今注目される2拠点ライフスタイルの候補地としても人気高いようだ。自然の良さを最大限生かしながら、来場者を飽きさせない様々なコンテンツを展開し続けている。今後、益々の注目を集める白馬であり、壮大なマウンテンリゾートがどのように作られていくのか、注視すべき地方活性化の動きである。


和田 寛 Yutaka Wada
白馬観光開発株式会社 代表取締役
1976年生まれ。東京大学法学部を卒業後、農林水産省に入省。その後米国Duke大学でMBAを取得し、世界的コンサルティングファーム「ベイン・アンド・カンパニー」に転職。2014年、「白馬観光開発」の親会社である「日本スキー場開発」に入社。2017年より白馬観光開発株式会社の代表に就任。