クリエイティブ経済誌 BUSINESS TIMELINE
Vol.32
エンタメ
2018.02.16

想像の答えは一つではない ルールや思い込みで自分を縛らない

Creativity&Innovation

作家 アナ・ジーグラーによって実話をもとにして描かれた『Photograph51』。科学の分野において、まだ女性の地位が認められなかった1900年代前半、ロザリンド・フランクリンという一人の女性物理学者は、常に孤独のなかでDNA構造の研究に向き合い、DNA構造の発見に大いに貢献したにも関わらず、研究者としての評価は生涯日の目を見ることはなかった。今回、ロザリンドを演じる女優の板谷由夏。実在したロザリンドをどのように想像するのか、作品のテーマでもある「想像力と革新」から、役作りのプロセスを紐解く。


家族を大切にしているにも関わらず、頑なな生き方
ロザリンドが研究者として生涯日の目を見ることが出来なかった理由については、色々な見方ができる。彼女はなぜ裏切られてしまったのか。女性だから? 頑固さゆえ? それとも周りの男性のせい? 様々な憶測が出るなかで、板谷にはロザリンドはどのように映っているのか。
板谷氏「ロザリンドは、とにかくストイックで強い女性だと思います。彼女のやりたいことは、研究を続けることと研究の結果を出すことで、とことんそれだけに集中している強さがあるんです。そしてさらに、やり遂げる強さがあります。孤立を恐れず、周りの声も気にしない。自分のやりたいことに打ち込んでいる姿は、徹底して一本の筋が通っている女性だなと思います」
もし、板谷がロザリンドの友人だったとしたら、どのようなアドバイスが出来たのだろうか。
板谷氏「『もっとチームプレイをしたほうが良いんじゃない!?』と声をかけたいですね。彼女は決して、チームプレイをしたくないわけではないと思うんです。ただ、チームプレイができない不器用さがあるんだろうなと思います。それが男性から見ると『気難しくて仲間をつくろうとしない、チームプレイができない不器用で気の強い女』に思えてしまう。ただ、男性に負けたくないと思っているわけではないのではないかなとも思うんです。ただ子供のように、無邪気に集中していたいだけ。自分のやりたいことをやりたい。そういった行動が、男性から誤解を生みやすかったのかもしれないです」


クリエイティビティは、思考の行き来が大切
ロザリンドとは正反対の性格だと話す板谷は、自身にないものを生み出すためにどのように想像力を高めているのか。
板谷氏「想像の答えは一つではないと思っている部分があります。これは芝居にも繫がるのですが、『想像を固める=芝居を固める』ことになってしまうと、がんじがらめになって柔軟性がなくなってしまうんです。妄想も想像も、答えを一つに決めないということを心がけていて、更に『分かった!答えが出た!』ということは言わないようにしています。それは、いつでも思考の行き来を出来るようにするためです。そうすることで、自分の想像はこうだったけど、違う考え方があるということを受け入れられるようになるんです」
とにかく人のアドバイスを多く聞いて、そこから良いと思えるものを受け入れる。板谷流の役作りは、想像を柔軟に行き来することであった。
板谷氏「自分を固めたくないという気持ちがあるかもしれないです。自分自身をルールや、やらなければいけないことで、決めてしまいたくない。ゆるゆると身を任せて流れられるようなフットワークの軽さを持ち備えていたいんです。実は今回の舞台で、演出家のサラナさんから『由夏には、人間が持つ自由の振れ幅は既に備わっているから、ストイックさの追求や、頑なというところを追求したほうが良いよ』と言われました。確かに、ロザリンドのように『頑なな絶対』を私は持っていないので、そういった意味では役を通してロザリンドが教えてくれることが沢山あると思っています」
人と人との関わり方について、板谷由夏という一人の人間を通して伝えたいことを次のように話す。
板谷氏「心が動くことを止めてはいけない、避けてはいけないと思っています。最近だと、一人でSNSをやるのも良いけれど『心は動いていますか?』と尋ねてみたい。役を通して人の役に立ちたいし、何かのきっかけになれるのがベスト。作品を通して心を動かして欲しい、心のひだに触れるきっかけがあると、それだけで私たちがやっていることに意味があるのかなと思えます」


想像の先にある、思わぬプレゼント
今回の作品テーマになっている想像力と革新。板谷にとっての想像の先にある革新とはどのようなものなのか。
板谷氏「びっくりというのかな、プレゼントが待っていると思います。そこに期待しています。答えを決めないで流れるほうが、自分の想像を超えるプレゼントがやってくると思っています。ラッキーみたいなもの。ただ、失敗の例も想像しておかないと、失敗のプレゼントが来ることもあるから、良いことも悪いことも色々なパターンの想像力を働かせておくと、プレゼントを受け取る準備もできるし良いと思います」


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