クリエイティブ経済誌 BUSINESS TIMELINE
Vol.45
エンタメ
2019.05.15

日本テレビが仕掛けたVTuberビジネス、後発組でも「エンタメ」枠は勝算あり?

3つのチェックポイント

入社半年の若手社員2名が提案したVTuberビジネス案が採用される
アニメキャラクターを起用し、双方向コミュニケーションをVTuberで確立する
新しいエンターテインメントビジネスを作る

今回はTV局がVTuberビジネスを行う目的、今後の構想について事業の発起人である大井氏、西口氏に取材を行った。

「入社半年」の若手TV局社員が手がけるイノベーションプログラム

−そもそも、なぜTV局がVTuberビジネスを始められたのでしょうか?

大井氏「社内で新規事業を募集する『日テレイノベーションプログラム』がありまして、入社半年で別部署なんですが同期だった西口君と『VTuberやりたい』というビジネス案を出して採用されたのがきっかけになります。もともと、西口君は学生時代にYouTubeに多数の動画投稿をしており、日本テレビでは技術開発部門の部署で、AIやアンドロイドの開発を手がけていました。私はCMに関する部署にいましたが、入社前から日本テレビで新規事業を立ち上げたいという思いがありました。このVTuber事業のコンセプトは、『もっとバーチャルな世界を世に広めたい』です。私は「1億総VTuber時代」と勝手に呼んでいますが、世の中の人が1人1人のアバターを持ち、リアルな世界と並行してバーチャルな世界でも生活するような未来が来ると考えています。これは理想の自分になりたいという誰もが持つ普遍的な人間の欲求にこたえているからです。今のVTuberはその先駆け的な存在であり、彼らがいることによってバーチャルな個人が存在し、活動をするという概念が世に普及しているのではないでしょうか。ただ現在のVTuberは認知は広がっているものの、まだまだ一部の層での支持で成り立っているように捉えています。このままではサブカルの一つで終わってしまうのではないかという危機感もあり、日本テレビの強みを生かしてVTuberを「マス化」したいという思いでVTuber事業に取り組むことを決めました。」

−そういった意味では、アニメキャラクターを採用したところも大きいですか?

西口氏「VTuberのことがまだよく分からない人たちがVTuberを知り、興味を持つ入り口として一般知名度の高いアニメキャラクターを起用したいと考えました。また、従来の一方向の視聴によるアニメの消費ともまた違う『双方向のコミュニケーション』的なアニメの消費方法を確立し、アニメの新しい価値を生み出したいと思っています。」

−新規事業を進める際に、苦労していることなどあれば教えてください。

大井氏「この事業は、僕達2人が中心となって進めているのですが、ざっくり役割を分けると僕が事業周りで、西口君が制作周りを担当しています。ただスタートアップなので、テレビ番組のような分業制とは違って組織体制から制作、営業、プロモーションまで全ての役割を自分たちが進めていかなければいけません。だからこそ周りを巻き込んで仲間を増やしていくことが必要不可欠ですし、社内外の多くの方々に支えられながら事業が成り立っていると思っています。」

−ネットとTVで制作面において違うポイントがあれば教えてください

西口氏「テレビの場合は一方向の配信になりますが、ネット動画の場合はコメントやSNSで配信者とファン、また、ファン同士がコミュニケーションをとることが可能なので、配信者を中心としてどのようなコミュニティを作っていきたいかを考えながらコンテンツ制作をすることが重要だと思っています。ただ、人が面白いと感じる本質的な部分はTVでもネットでも変わらないので、デバイスやプラットフォームによってそれをどのように表現するかを変えていくというのが必要なのだと思っています。この両方を学べているのは、すごくありがたいですね。」

新しいエンターテインメントビジネスを作る

−事業として具体的なマネタイズはどのように考えていらっしゃいますか?

大井氏「キャラクター事業としては主に3つあると思います。1.配信者として、動画やライブ配信などユーチューバーと同じようなアドセンス、企業タイアップ、投げ銭収入2.タレントとして、イベント出演やTV出演の際の出演料3.キャラクターとして、グッズ販売、キャラクター使用料などです。その他にもイベントやプロデュース、プラットフォーム事業などVTuberビジネスは様々なものが考えられますし、新しいエンターテイメントの形として大きな可能性があると思います。」

西口氏「VTuberは2017年はまだ数百人しか存在しなかったのに、2019年3月現在で7000体近くまで増えています。Ready Player Oneのように一人一人が自分のアバターを持ってVR空間へログインし、その中で他の人達とインタラクティブなコミュニケーションが生まれるようになる時代がいつか来ると信じています。そのバーチャル空間には、リアルなタレントも居ればバーチャルタレントもいて、混在しているようなイメージです。VRエンタメとして存在感を出していけるような創造をしていきたいと考えています。」

Profile

日本テレビ放送網株式会社 社長室企画部/VTuber事業プロデューサー
西口 昇吾(にしぐち しょうご)
西口 昇吾(にしぐち しょうご)

1991年生まれ、三重県出身。大阪大学大学院の石黒浩教授の元でロボット演劇や意図と感情の研究を行う。在学中にCity University Londonに留学し、五感を使ったコミュニケーションデバイス「Kissenger」の開発や、マレーシアのジャングルにて先住民族へのロボットの神格化実験を行う。2017年に日本テレビに入社し、技術開発部にてAIの開発やアンドロイドアナウンサー「アオイエリカ」プロジェクトの立ち上げ及びプロデューサーを務める。その後、2018年よりVTuber事業を立ち上げ、社長室企画部にてVTuber事業を進める。

Profile

日本テレビ放送網株式会社 社長室企画部/VTuber事業プロデューサー
大井 基行(おおい もとゆき)
大井 基行(おおい もとゆき)

1994年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学の在学中にUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)に留学しハリウッドのビジネスを学び、日本で世界に通用するエンタメビジネスを立ち上げることを志す。卒業後、2017年に日本テレビに入社し、1年目は営業局でCMに関する業務を行う。2018年よりVTuber事業をを立ち上げ、社長室企画部にてVTuber事業を進める。