From the Editor in Chief
ビジネスタイムライン編集長 /倉本 麻衣今回は、市場的に厳しい音楽分野で活躍する田中隼人氏へ、世の中に受け入れられるためのモノゴトの見方について話を聞いた。その中で印象的で且つ、一言に集約できるのが「大局観で捉える」ということであった。「大局観」とは、将棋や囲碁、チェスなどのボードゲームで使われる言葉。ひとつひとつの部分的なところに注目するのではなく、全体を見通して判断すること。田中氏は大局観で捉えることを意識しているからこそ、リスナーがどこを向いていて何を求めているのかの最大公約数を出すことができるのではないか。
取材の中で、「例えば5000人に受け入れられるには、その中のコアとなる10人、20人にまずは刺さらないと広がらない」という見解を出していた。大局的にモノゴトを捉えながらも、軸となる部分へブレずに当てにいける感覚は、自分自身を理解した上でその目線に持って行き、モチベーションを維持できるからこそ成立することだろう。
また田中氏は、自身を「サラリーマン型ミュージシャン」という言い方をしているが、それは決して単純に流れてくるものを処理するという受け身の意味合いではない。社会的に達成するために意思を持って応えようとする、仕事として捉えている。
仕事とは「work」であり、労働「labor」とは違う。つまり、生きるためだけのお金を稼ぐことが目的となる労働とは違い、クリエイションするという意味である。
「働く」ということがどういうことなのかという大局的な捉え方と、自分がどういう働き方をしているのかということに意識がなければ、なかなか表現しづらい言い方だろう。
まずは自分が置かれている環境を大局的に捉え、自分は労働をしているのか、それとも仕事をしているのかという棚卸しをすることが、真の意味での働き方改革への第一歩になるのではないだろうか。