
From the Editor in Chief
日本の現代アート界で活躍するミレニアル世代で、日本以上に海外からの注目度が高い書家 岡西佑奈。それには2つの理由があり、アートとマーケティングの考え方がしっかりとはまる。一つ目は、日本の伝統芸能である「書道」に、岡西の感性で鮫の動きを掛け合わせ「現代アート」に昇華させたということ。次に海外でのアートフェアへ積極的に参加していること。日本人以上に海外のアート好きな人たちにとって日本の伝統芸能は評価が高いということなのか、作品を出品すると完売する。結果的に、海外のアートフェアでの出品数は増え、グットスパイラルが起こる。これはビジネス的に言うと、海外でのマーケティング戦略がうまくはまっているということだろう。
この数年、テクノロジー分野では技術革新が著しいこともあり、新しい技術を取り入れる新興国が技術的に発展段階にある先進国を飛び越えていく現象が起こっている。そういった現象を『リープフロッグ(Leap Frog)』と表され、マークするべくビジネスキーワードの一つとなっている。この途中段階を全て飛び越えて一気に最先端に進化してしまうリープフロッグは、中国のスマートフォン普及、インドのHV(ハイブリッド)を飛び越えてのEV(電気自動車)シフトなどが代表的だろう。インフラが未整備な場所へ、先進国から技術流入があり、それまでにない斬新なアイデアが融合することでイノベーションが起きる。これは、先進国で起こる破壊的創造としてのイノベーションよりも、ルールや既得権益が存在しない場所で新しい仕組みや文化を形成するほうが早いということの証明ではないだろうか。
クリエイションやアートに置き換えても、伝統文化が根付くその場所で次への革新として新しい文化を根付かせることは大事なことであるが、全く違う土地で斬新な文化を投入することで、「現代アート」として評価され広がる。つまり、書道という日本文化を海外でアートとして広め、海外評価を日本へ持ち帰る。リバース・イノベーションとも言えるかもしれないが、技術革新のみならず、日本の伝統文化を次の世代へ継承するべく、ミレニアル世代が行動する世界に向けた活動は、価値あるものとして今後も目が話せないイノベーション活動に繋がっていくだろう。