クリエイティブ経済誌 BUSINESS TIMELINE
Vol.45
テクノロジー
2019.03.27

3ヶ月で「AIエンジニア不足」を解決できるサービス

学生起業家が「AI人材不足」に危機感を持ち
たった1年半で150社に選ばれるサービスを展開できた理由

POINT
✔大学に入り、AIについて学べる場所がなかったことがきっかけで、学習の場を場所を自ら作る
✔最大公約数的な技術を考えた結果、3ヶ月で「AIエンジニア」になれるカリキュラムができた
✔AIエンジニアを育成することが目的ではなく、2022年までに「AIプロジェクトを1万件成功させる」こと

一昨年のAIブームから、多くの日本企業ではAIへの取り組みを実施しては失敗を重ねるという試行錯誤を繰り返しながら、実用化に向けた動きが加速している。しかし同時に、AIエンジニア不足の課題も深刻だ。AIは業務課題を抽出し、データを収集・分析して法則性を導き業務プロセスの改善に貢献する。これら一連のプロセスがAIエンジニアを中心としたチームによって進められるため、AIエンジニアはこれまでのプログラミング技術だけでなく「データ」や「数字」をどのように分析するかの視点が必要となる。そんな中、現役大学生が法人向けにAIエンジニア育成のためのサービスを立ち上げ、多くの企業が業界問わず注目し社員教育の一環として取り入れはじめている。サービスを立ち上げたSTANDARD 代表取締役 石井大智氏へ、どのようなサービスなのか話を聞く。

サービス立ち上げからたった2年も経たないうちに収益化できたインパクトは大きい

−AIエンジニア育成のためのサービスを立ち上げられたのは、どのような背景があったのでしょうか?

石井氏「大学に入った当初はAIを専門にしていたわけではなく、C言語やJAVA、統計データ分析などを勉強していました。世の中でAIが取り上げられることが増え、最新テクノロジーであるAIを勉強したいと思ったのですが、当時はまだインターネットや書籍での情報も少なく、大学の授業やサークルでも学習できる場がありませんでした。そこで自分たちで勉強するために、2016年に大学の先輩とサークルを立ち上げました。その時は2人で勉強会を開いて海外論文の情報収集等を通じて学んでいたのですが、Facebookで活動報告をしているうちに人が集まるようになったのです。1年で6、70名くらいまで増えたのですが、その理由は勉強できる場所がなかったから。またその頃には自分自身のスキルが付いてきたこともあり、実際に企業のプロジェクトに携わる機会を頂くようになりました。座学で学ぶことだけでなく実践経験を通じてより実用的な知識を付けることが出来るという実感を得ていきました。そして、現場に出て一番課題だと感じたことは、人命に関わる医療系の案件が多い中で、AIに携わることのできるエンジニアの数が圧倒的に少ないということです。もっとAIエンジニアが増え案件に手を回せるようになれば、苦しんでいる人を救えるかもしれない。日本の産業界の発展のためには自分一人がスキルを付けて少ない案件をこなすよりも、自分と同じように開発できるエンジニアを量産した方がインパクトがあるように思ったのです。2017年、AIを一緒に学んでいたサークルの同期とシェアハウスに住み、人材育成の事業を始めました。当初は学生向けに対面で勉強会をやっていましたが、勉強会を続ける中で当時ご縁のあった企業からインターンの学生のスキルを評価いただき、『なぜこのような人材を育成できたのか、そのノウハウを知りたい」とおっしゃって頂いたのが、法人向けeラーニングという形式での提供の始まりになります。2017年8月にサービスを初めて2年弱ですが、現在すでに1200名以上に受講頂いています。おそらく、このビジネスの根本に『自分ごとだった』、『他にやる人がいなかった』、『自分しかやらない』というのが、動機として強くあったのだと思います」

AIエンジニアは、2020年に5万人弱も足りない

–では、具体的にAIエンジニアは世の中でどれくらい不足しているのでしょうか?

石井氏「2016年に経産省から出ている推計では、2018年時点で約3万人、2020年時点で約4万8千人のAIエンジニアが不足すると言われています。一定の人材供給はあるものの、それ以上に需要が拡大していくため、不足人数は増えていくとの試算です」

「3ヶ月」という期間は、最大公約数的なAI技術を学べるカリキュラムを揃えた結果

–AI_STANDARDでは、「3ヶ月」という期間を大きく明示していますが、どう行った検証で3ヶ月という期間設定ができているのでしょうか?

石井氏「それは、どの現場でも使われるような最大公約数的なAI技術を学べるようにしたところ、要する学習期間が3ヶ月となることがわかったためです。教材の制作にあたっては、エンジニアが何を身に着けていればAI開発の仕事をこなせるのか、あるいは多くの会社で共通して求められる分析スキルは何かを追及しました。具体的には新しいエンジニアが入ってきたときに、どこの部分を押さえておくと仕事ができるのか?実務で使う場合に欠かせないものは何か。どの会社に行っても覚えておくべきものを効率よく教えていくためのポイントを考え抜きました。自分のインターン経験や現場のプロジェクトマネージャーの意見を反映させて、実践ベースで考えられたものになっています。とはいえ、時間をかけて身につけなければならないのはデータに基づいてものを考える思考力です。人間は経験や勘、度胸で意思決定をしてしまうことがよくありますが、この考え方を矯正していく過程が必要です。そのため、現役のエンジニアからの手厚い学習サポートが必要になります」

2022年までに1万件のAIプロジェクト実績を作る

–このサービスの目指すところや目標などあれば教えてください。

石井氏「『2022年までに1万件のAIプロジェクトの成功を支援する。』というものを掲げています。もともとエンジニアをやっていた時代に、放置されている課題がたくさんあるという問題意識からこのサービスを立ち上げていますので、プロジェクトの成功にどれだけ貢献できるかというのを成果としたいと考えています。単純にエンジニアを育成するだけでなく、その先で顧客企業のAIプロジェクトが成功することを目指して、教育サービスをつくり込まなければなりません」

–また、AI _STANDARDサービス開始後、AIエンジニア資格としてG検定とE資格が出てきました。それぞれの役割を教えていただけますか?

石井氏「G検定は、AIのジェネラリストとしての閾値を定めた検定になります。受験しているのは経営者や営業職、その他の分野のエンジニアの方など様々で、実装はしないまでもAIプロジェクトに関わるあらゆる方々が活用しています。試験勉強をする中で、AIに関する歴史、法律、ハードウエアに関する知識、情報収集のために参照すると良いサイトについてを学ぶことが出来ます。一方のE資格は、ディープラーニングをメインに実装していく人が受験しています。プログラミングや、数学の深い理解が問われます」

ミッションは、「日本企業におけるAI活用のベストプラクティスを作る」

–最後に、サービス名の「AI_STANDARD」に込められた想いがあれば教えてください。

石井氏「私たちは、「日本企業におけるAI活用のベストプラクティスを作る』というミッションを掲げています。AI活用人材の『標準規格』という意味で、社名にもサービス名にもSTANDARDを命名しました。今はAIだけをテーマに教育サービスを提供していますが、今後は活用が進んでいないその他の先端テクノロジーにも対象を広げていきます。これらについても、活用が進んでいかない原因はテクノロジーを適切に扱える人材の不足であり、AIと同様のアプローチで解決が見込めます。そのため、AI人材の育成で汎用的な人材育成の仕組みをつくりたいと考えています。今、注目しているのは『RPA(Robotic Process Automation /ロボティック・プロセス・オートメーション)』や『IoT(Internet of Things / モノのインターネット)』です。今後も次々に新しいテクノロジーが登場していきますので、業務課題をテクノロジーに落とし込むことができる人材の育成は、企業が永遠に取り組むべき課題になってきますね」

サービス概要
3つのプランから選べるAI人材育成サービス
・エンジニア向け:3ヶ月サポート
・ビジネスパーソン向け:1ヶ月サポート
・マネージャー向け(2019年5月スタート)、2ヶ月サポート