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2016.01.29 | The Nippon Brand

#03_オープンイノベーションが全ての源泉


BTL TOKYOが見据える日本のグローバル化について
編集長/倉本 麻衣

今回の取材において、桐島氏と東氏から発せられた印象的なワードをBTL編集部として時代背景とともに考察していきたい。それは「歪み(ひずみ)」というワードとともに、それに紐づく今という時代、そして今後の日本を担っていく若者世代の考え方について関係性を探ってみた。まず、「歪み」とは一体どういう意味なのか。辞書では、「物の形がゆがんでいること」や、「物事の状態が正常でないこと」とある。それは、社会的なところであったり、人間関係的なことであったりを描写する際に使われる言葉。では、現代社会における歪みとは、どのようなものになっているのだろうか。

戦後、日本は高度経済成長、バブル期とバブル崩壊、そしてデフレ時代を経てきた。この中でも1990年代のデフレ期(※1)は、今の若者の考え方を形成する一つの大きな時期と捉えることが出来る。それは、デフレ時代と言われつつも、卸売物価こそ著しく下がったが消費者物価は安定していた。それはつまり、卸売物価が下がったことで、低コストでもそれなりに満足度の高い生活を送ることが出来るということだ。今でこそ、物価は上昇傾向にあるが、それでも東京都内で数百円も出せば、それなりに美味しい食事を頂くことができる。結果的に、今の20代の若者たちの間では、「現状の生活に満足をする人が約8割に上る」(※2)までになっている。

ある程度満足度の高い社会では、どうしても危機感が薄れてしまうとともに、リスクを負ってまで新しい何かを生み出そうという行動はなかなか起きにくい環境にある。今の日本は、少子高齢化(65歳以上が25%を占める)、先進国と言われている中での国の財政赤字、福島原子力発電所の廃炉問題など、社会的問題は山積みでありつつも20代を中心とした若者の幸福度の高さは、まさに「社会の歪み」と言うに相応しい現象である。

では、その「社会の歪み」を脱却する方法があるのかないのか探ってみる。インタビュー内にもあった企業のスタンプラリー構造が一つの例として分かりやすいかもしれないが、「何か新しいものを」とアイデアが浮かんだとしても、それを具現化するには、なかなか難しい日本企業独特の組織環境であることは認知済みだ。要は、上から言われたことを卒なくこなしていければなんとなくそれなりの生活が出来るという環境こそが、日本のガラパゴス化を起こし、イノベーションが起きにくい歪んだ世の中へとなってしまっている可能性が高い。もちろん、起業してイノベーションを起こす若者も一部でいるが、それもほんの一部だ。

日本人は、自立心が高くそれによって高品質の生産を行うことが出来る。だからこそ、デジタルカメラや自動車、新幹線といった世界に誇れるモノを生み出してくることができた。そして今後、2020年を見据え、日本が真の意味でのグローバル化を目指すには、具体的な環境づくりが必要となる。

(※1)デフレに関する参考文献「デフレーションと金融政策」http://www.esri.go.jp/jp/others/kanko_sbubble/analysis_02_04.pdf
(※2)2014年の内閣府「国民生活に関する世論調査」http://survey.gov-online.go.jp/h26/h26-life/zh/z03.html





ここでは、具体的な施策として「オープンイノベーション」(※3)をキーワードに2つの例を紹介していく。

まずは、2013年9月から始まった、BTL TOKYO発行元ネクスゲートがタイアップをしているNTTデータによるオープンイノベーション。組織の枠組みを越え社内外から広く知識・技術・人脈の結集を図り、新規ビジネスの創発を目指すフォーラム「豊洲の港から」を設立。以来、毎月1回のペースでフォーラムに集まるベンチャー企業、NTTデータの顧客(大手企業)、そしてNTTデータの3者が互いにWin-Win-Winの関係となるようなイベント・交流会を続けている。開設当初でも100名程の傍聴者が毎月集まっていたが、今では毎月200名を超える傍聴希望者が集まり、開催スペースが満杯になるほどだ。NTTデータという日本を代表する企業においても、先進的なベンチャー企業と組むきっかけの場を積極的に設けることで、新しいビジネス、プラットフォームが生まれはじめている。

次に、2016年4月に日本上陸予定のTechshop(テックショップ)。Techshopは、カリフォルニア州サンホゼに拠点を置くハッカースペース。サンホゼを始め、サンフランシスコ、デトロイト、ピッツバーグ等、全米8都市で運営している。バラク・オバマ米大統領が「モノ作り復活の象徴」として視察したことでも有名だ。店内には3Dプリンター、レーザーカッターの他、ミリングマシン、溶接機、ワイヤーカッターといったモノづくりのための60種類近くの各種機械を用意。個人でももちろん利用可能だ。様々な人々の知識を共有し、想像力を高めて新しいコトを生み出す社会の実現を目指す。

そのイノベーションスペースをFUJITSUが協力し、Techshop Tokyo(テックショップ東京)として開設される。日本で既に馴染みがあるのが、スマホやタブレットでのクレジットカード決済サービスを提供する Square(スクエア)。カードリーダーのプロトタイプは TechShop で誕生した。ちなみにSquareの創始者は、twitterの創始者でもあるジャック・ドーシー氏であることで有名だ。2009 年の創設以来世界中で急成長を遂げ、日本では三井住友カードと提携している。もし、日本でSquareそのものを生み出すということを想像した場合、金融関連企業が集まる霞が関、いわゆるスーツ組と、IT関連のベンチャー企業が集まる六本木・渋谷周辺のいわゆるカジュアル組の掛け合わせが必要となる。その掛け合わせについて想像しても、文化の違い等で簡単にはイノベーションできないのではないかと考えてしまう。

しかし、TechShop Tokyoでは、誰もがどんなものでも作れる、クリエイティビティの場として個人メンバーシップ月額18500円(予定)で利用可能。本格的な工作設備が使い放題のうえ、工作設備の専門クラスとドリームコンサルタント(※4)のサポート体制がある。大企業に在籍している一個人でも、先行投資がなかなか難しい中小・ベンチャー企業でも使えるということで、そこでの新しいイノベーションの可能性を感じられる。そう、日本人が苦手だったプラットフォームの誕生が、可能となる日が近いかもしれない。今後、オープンイノベーションの場から、まだ日本に眠っているアイデアが具現化され、世界に届けていくことが、日本の次なる技術革新にも繋がるだろう。BTL TOKYO発行元であるネクスゲートでは、新しく生まれるロールモデルに注目して行きたい。

そして2016年、BTL TOKYO本誌では、オープンイノベーションについて随時、特集し届けていくことをミッションの一つとしていく。

(※3)カリフォルニア大学バークレー校のヘンリー・チェスブロウ博士によって提唱された、イノベーションを促進する新たな概念。オープンイノベーションの定義は、企業による通常の製品開発プロセスを可視化し、社内外を問わず広く技術やアイデアを集め、今までには不可能だったイノベーションを実現していく、というもの。
(※4)「ドリームコンサルタント」 と呼ばれる専門知識を持ったトレーナーが常駐し、実際のモノづくりや、会員同士のネットワーキングを手伝う。



■ BTL TOKYOの誌面はこちらから (無料定期購読) →http://www.nexgate.jp/order_inquiry

桐島 ローランド

桐島 ローランド

写真家・映像作家・クリエイター。1968年横浜生まれ。47歳。小学校3年でNYへ移住。ニューヨーク大学・芸術学部写真科を卒業。ニューヨークで写真家として活動を始め、1993年、活動の拠点を東京に移す。父親はアメリカ人、母親は作家の桐島洋子。長姉はモデル・女優の桐島かれん。次姉はエッセイストの桐島ノエル。2002年に結婚。子煩悩な二児の父親。2007年のダカール・ラリーにモーターサイクル部門で初参戦し、完走。2014年より、日本発のフォトグラメトリー専用スタジオAVATTAをオープン。フォトグラファーとしての技術と才能を活かし、デジタル撮影による3Dクリエイティブの分野においても活躍の幅を広げる。趣味 : 茶道・バイク


東 真子

東 真子

フォトグラファー。1985年生まれ、大阪府出身。人物およびクルマを専門にす る写真家。広告、雑誌などの撮影を手がける。2012年、NYCで開催される世界最高峰写真コンペ(IPA)にてHonorable Mention受賞。2013年、ポーランドにて撮り下ろしファッション写真集Glossを出版、全国書店にて発売。「レクサスRX×東真子」など、写真作家としての広告も手がける。2015年、Sony Mobile Xperia広告出演。同年、AKB48マドンナの選択のMVで初の動画撮影。その他、2015年度の仕事例に、あべのハルカス、Lucua1100、日清やきそばU.F.O.など。