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2016.01.29 | 人間力

現代アーティスト/小松 美羽 インタビュー

人間力

「日本から見る海外」「海外から見る日本」という境界線を作るのはむしろ古い。
宇宙から見れば、地球はひとつの個体であり日本も海外も全て繋がっている。
今回、取材した現代アーティストの小松氏は、日本に古くから伝わる伝統的工芸にアートを施し、新しいモノを生み出す。
「日本の伝統的工芸は、日本だけのモノではない」と語る小松氏がアートを通じて、人々へ何を伝えようとしているのか?
小松道から私たちが学ぶべきポイントを洗い出してみたい。






Traditional Japanese Art Crafts

日本の伝統的工芸の一つである有田焼が、世界を魅了する理由。



上田原古戦場のベビー狛様


有田焼創業400周年 古き良き文化と現代アートの融合

2016年、日本は有田焼創業400周年を迎えた。この4世紀に渡る年月を振り返ると、日本に古くから伝わる「侘び寂び」の精神を唱えた千利休の心まで遡ることになる。日本で有田焼が生まれた理由、それが受け継がれる精神を紐解く。

室町時代の日本は、高価な中国製の茶道具を使ったきらびやかな茶道が主流だった。しかし、豊臣秀吉が天下人だった頃の日本では、千利休の精神によって「極限まで無駄を排除する」茶道スタイルが確立される。茶道特有の侘び寂びは、「不完全な中に美しさを見出す」という考えで、「不完全な美」を基本とする侘び茶が完成されたと言われている。その侘び寂びこそが、茶道を日本固有の文化として昇格させた概念とされ、また、日本を代表するクリエイティブの一つとしても認識されることになる。

当時、秀吉は、朝鮮半島から渡ってきた「高麗茶碗」と言われる茶道具を利休から珍重されたことで、陶器を知ることとなる。陶工技術を日本へ持ち込みたいと考えた秀吉は、朝鮮出兵の引上げの際に、後の有田焼の生みの親とされる李参平(りさんぺい)を日本へ連れ帰る。(※諸説ある)

李参平は、日本において初めて白磁器を作ったと言われている。当初、九州・佐賀県の伊万里方面で作ったことで、伊万里焼とされていた。しかし、思うような仕上がりに出来なかったことで、陶土を探し求め有田地方にたどり着き、何度も試作を繰り返して1616年に日本で初めての「磁器」が誕生した。それが有田焼である。400年経った今でも日本を誇る焼き物の一つとして、有田焼の陶工技術は受け継がれている。

白磁器へ絵付けをしている


伝統的工芸から今をクリエイションするアート

 小松氏は2015年、とあるプロジェクトで、庭園を護る「狛犬」のアート作品をクリエイションした。それは、小松氏が描いた狛犬を有田焼の職人が白磁器として再現し、真っ白な狛犬に小松氏がアートを施すというもの。小松氏は、狛犬の制作を振り返った。

「私が考える狛犬は、磁器で創るには、形状的にとても大変だったようです。例えば、尻尾の付け根をもっと細くして欲しいとか。また、しっぽの先は大きくしたいと思ったのですが、焼きあがるとバランス的に難しいようで、尻尾が折れてしまうんですよね。職人の方と何度もやり取りを繰り返して、結果的に今の形に仕上がりました。いつもの制作とは違うクリエイティブ魂が刺激されたよ、と職人の方から仰っていただけて、大変だったけれど挑戦して良かったなと思いました」


天地の守護獣(右:天/左:地)


世界最大級の博物館 「大英博物館」に所蔵展示

小松氏と職人はやり取りを繰り返し、数々の課題をクリアしたことで、人々を惹き付ける作品が生まれた。有田焼の狛犬は、イギリス・ロンドンにある大英博物館(※1)へ所蔵展示されることになり、日本のみならず世界中から集まってくる人の目に触れ、有田焼の文化の素晴らしさを再認識させることとなる。まさに小松氏が思い描く理想的な現象だ。

「日本の伝統的工芸は、日本のものだけではないと思っています。有田焼も、歴史を振り返ると日本だけで作られたものではないし、また有田焼が創られシルクロードを渡ってヨーロッパへ伝えられたことで、マイセンなどの器が誕生したという背景を踏まえると、世界は繋がっているんだなと思いますね」小松氏は、歴史を振り返った上で、改めて自分が生み出すアートが世界へ出て行くことによって、そこからまた新しいモノが生まれてくるだろうと革新的に動いているように見えた。

しかし、日本のみで認知されているモノを海外の人達へ説明して理解してもらうのは大変でもあったようだ。「狛犬は、日本人なら知っている人が多いと思うのですが、海外の人へ説明するのは大変でした。ガーディアンライオンという例えにしてみても、狛犬は犬にも関わらずライオンは猫科なので、正確な伝え方ではないというところで難しかったです」

そして2016年、狛犬を進化させたいと小松氏は新たな想いを語る。「今、4本足で立っているものを3本足で立たせてみたり、羽を付けてみたり、動きのある狛犬を創りたいと考えています」

(※1)イギリス・ロンドンにある世界最大級の博物館のひとつ。世界中の美術品や書籍、略奪品など約800万点を収蔵。入場料は無料。


大英博物館の日本ギャラリーに展示されている「狛犬」




Power of the Soul

小松美羽の人間力

世界に向けてクリエイティブを発信し、数多くの一流の審美眼にさらされ、評価されることで、自身で気づくことがあると言う。「私の場合は、下地作りの工程が荒削りだなと気付かされました。一方で、世界では新しいものや面白いものが求められていると強く感じたので、今後、それらを創れば受け入れられると確信できたのはとても大きなことですね」自身の作品に対して真摯に向き合い、振り返ることで、課題とそこから解決方法を見出し、次の創作へ生かす。これこそ、クリエイションの中で大切なことの一つと言えるだろう。

また2015年は、世界的オークションハウス・クリスティーズからのオファーによって、自身の描いた絵画を出品し、見事落札された。初めての出品で感じたこともある。「一般的な展示会だと、作品を見てくれる人と直接コミュニケーションが図れるので、そこでどんな人に見てもらえてどんな評価なのかをダイレクトに感じることが出来ます。しかし、クリスティーズのオークションでは、ネットでの入札制度もあり、直接コミュニケーションを図ることが出来ないので、すごく未知な部分が多いです」人とのコミュニケーションを大切にしながら新しい何かを生み出していくその姿勢には、作品に関わらず、地球への底知れぬ愛情すら感じる。

世界を目指す小松氏は、アートを通して何を伝えようとしているのか。「平和を願う心ですね。人種や宗教の違い、文化の違いも全て乗り越えて、世界が深く繋がって行くことが大事だと思っています」深く繋がるということは、理解し合うところから始まるように思う。そのきっかけは恐らくどんなものでも良い。小松氏は自ら生み出すアートという一つのツールをきっかけとして、世界を繋げようとしている。発見し、知ることで理解を深め、そこに共感が生まれることで繋がることが出来る。一つのアートが共感され、人々が動く様子は、マーケティング行動に反映すべき大切なことが詰まっている。

そして、人々が動く一番大切なことについて小松氏は言った。「他国への尊敬の念を持って創作活動をすることが、結果的に想いが繋がることになるのではないかと今は思っています」若干31歳にして世界を見据える目には、まだまだ多くの人々を巻き込んでいく、良い意味での末恐ろしさを感じた。




2016年、更なる躍進

今年、小松氏は新たな挑戦を行う。「実は今、博多織のキャンバスを創ってもらっています。そのキャンバスにイギリス製の絵の具で絵を描く予定です。そこにどんな新しい発見があるのかすごく楽しみですね。」

また、有田焼400周年を迎えた記念として、有田焼の茶器を制作する予定もあるという。これは、冒頭で書いた有田焼が創られる大きなきっかけとされている千利休の茶の湯に敬意を払う感謝の心だろう。


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【小松美羽作品展覧会開催予定】
 日程:2016年3月16日(水)~22日(火)/場所:銀座三越7階ギャラリー
【アートフェア開催】
 日程:2016年3月23日(水)~26日(土)/場所:アートセントラル香港/お問合せ先:彩鳳堂画廊

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■ 小松美羽氏の誌面はこちらから (無料定期購読) →http://www.nexgate.jp/order_inquiry

小松 美羽

小松 美羽

現代アーティスト。1984年生まれ。長野県出身。女子美術大学短期大学部卒業。
出版物:小松美羽−20代の軌跡−2004〜2014、銅版画、ペイント、墨絵、ペン画、有田焼とのコラボレーションなどの代表作108点を収録。過去・現在・未來まですべてを綴ったインタビューなど、小松美羽のすべてがここに。