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2016.03.25 | 表現力

#05_「不気味の谷」を乗り越える 先に見る表現力とは


編集長/倉本 麻衣

今回の特集では、「表現力」について人や物体が持つ魅力の表現方法について、CGテクノロジーを用いて探ってきた。特に「人」そのものをフルCGで魅力的に見せる技術が非常に難しいのは、圧倒的な情報量の他、リアルに近づいた瞬間に「ちょっとだけ違うかもしれない?」と人間の脳が違和感を覚え、嫌悪感を感じて「不気味の谷(※1)」へ落ち込む現象があることが分かっているからだ。

人は明らかに分かる「間違い」「誤り」に対しては大きな印象を受けない。しかし、「嘘かもしれない」という微妙な領域に直面すると嫌悪感を覚えることが多いのではないだろうか。取材した家入レオの「ステージでは嘘がすぐに分かってしまう」という視点は、全てのビジネスパーソンが意識しなければいけないとても大切なポイントである。自分というものを本質的に理解し、強みを見つけ、そこを真っ直ぐに伝えること。シンプルながら、なかなか行動に起こすのは難しい事柄を、常に多くの人の目を意識して自分なりの表現方法を探り続ける家入レオから学ぶことができる。

一方、CGの世界でひとつの表現方法を確立する岩沢氏と濵村氏は、2Dと3Dの違いはそれぞれあるものの、共通して必要なことが2つあると語ってくれた。それは、PCやソフトウエアなどのデジタル力と、「観察力」「解析力」など人へ寄ったスキルであるアナログ力だ。デジタル力とアナログ力のスキル数値が高ければ高いほど、デジタル力×アナログ力と掛けあわせた際に、導かれる品質数値は高くなることが分かる。品質数値が高くなれば必然的に表現力は高まる。しかし、冒頭で記載した「不気味の谷」が障壁となっているCG業界において、そこを超えるためにフォトグラメトリーが救世主となるのかどうか。

1990年代中期に3DCGの本格的な波が押し寄せて以来、特にゲーム業界を中心にリアリティを求めるクリエイターが増え、その頃から「不気味の谷」をどう越えていくのかという議論があちこちでなされるようになった。しかし、なかなか超えられないその壁を前にして、あえてリアリティから外したキャラクター作りやライティング作りがされていたことは言うまでもない。

それから10数年経った今、2D写真を3Dへ変換出来る環境が整ってきたことで、リアルな人をフルCGの街並みへ違和感なく入れ込める時はすぐそこまで来ているように感じる。いやむしろ、世の中に出されるその時を待っているだけかもしれない。本格的なフォトグラメトリーの普及がされることは、広告業界におけるクリエイティブの考え方とアプローチの仕方が180度変わるかもしれないぐらい大きなことである。今、その技術がいち早く世に放たれるとともに、その世界観が広く浸透していくことが重要と考えると、まずはエンターテインメントの世界などで注目されトライアルされる動きに期待したい。

(※1)人間ロボットやCG映像などで、その様態があまりにも人間に近い(忠実度が一歩手前)とき、見る者に違和感や嫌悪感を抱かせるとされる現象のこと。更に見分けがつかないほど人に似せることができれば、再び親近感が勝るとされる。





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家入 レオ

家入 レオ

アーティスト。福岡出身。13歳で音楽塾ヴォイスの門を叩き、青春期ならではの叫び・葛藤を爆発させた「サブリナ」を完成させた15の時、音楽の道で生きていくことを決意。翌年単身上京。都内の高校へ通いながら、2012年2月メジャー・デビューを果たし、1stアルバム「LEO」がオリコン2週連続2位を記録。第54回日本レコード大賞最優秀新人賞など数多くの新人賞を受賞。翌1月より開催の初ワンマンツアーは全公演即日完売に。その後もCM/ドラマなど数多くのタイアップ楽曲を担当し数々のヒットシングルをリリース。年末には第55回日本レコード大賞優秀作品賞受賞。8月19日に、2度目の月9主題歌となる10thシングル「君がくれた夏」をリリース。