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2016.07.04 | 2020年 東京オリンピック最高の「おもてなし」を

03_隈研吾が考える「クールジャパン」とは


フィリピン・マニラ「祖先の知恵博物館」完成イメージ


団魂世代が失ったものからの学び

昨今、発生する災害、各地で起きるテロ事件を含めて、自分の「生命」を考え直さなければいけない時期に来ていると隈研吾は言う。「いわゆる私たち団塊世代は、企業に勤め、家を建てられればハッピーみたいな世代だと思います。でも、東日本大震災を経験して大きく挫折しました。信じてきたものが目の前で崩れたわけですから。でも、20代や30代の若者は、先天的にアメリカンドリームを信じてないです。物質的なものに対して最初から覚めているのですね」


若い世代こそ「クールジャパン」を体現している

日本人が経験している自然災害などの自然条件は、相対主義の価値観を生み出すものと関係しているだろう。マンガ・アニメもまた、相対主義の価値観で表現されている作品が多い。それは日本の文化的に、人とそれ以外の生き物を明確に線引きしないことや、子供文化と大人文化にも明確な線引きがなく融合していて、「善と悪」、「敵と味方」の絶対理論に振り回されないストーリー展開こそが、特定の人たちの占有物になることなく、広く受け入れられるものとして発展してきた。

隈研吾もまた、こう解く。「日本のマンガやアニメは、深いところで日本の無常観と繋がっているんじゃないかなぁ。そこがクールジャパンの本質だと思いますね」


コミュニティへの回帰

あらゆるものが永遠ではないと突きつけられたこの世界で、どう楽しく生きて行くべきか問われる時代がやってきている。物質に頼らない大切にするべきものを隈研吾は答えてくれた。「大事なのはコミュニティです。小さくいうと、家族、そして住んでいる街です。東北の震災以来、小さなコミュニティへ回帰する傾向はより強まっているように思います。そこで楽しくやっていければ、辛いことがあったとしても乗り越えられます」


コミュニティを支える「息づかい」が全てを超える

一つの形成されるコミュニティが大きかったとしても小さかったとしても、人と人の繋がりに生き付く「息づかい」のようなものを感じ取り合うことが現代には必要である。この10数年は特にデジタル化が進み、パソコンやスマホ、ゲーム機など、 電子機器の「無機質」感が強まったことによる「感じる」という人としての感覚をどこかに置いてきてしまっているようにすら思える風潮がある。

時には五感をフル稼働させて自然を感じたり、隣の人の息づかいに気を配ってみることを大事にしても良いかもしれない。



左:フィリピン・マニラ「祖先の知恵博物館」模型 / 右:隈研吾建築都市設計事務所 スタッフの作業風景・自然に外国語が飛び交う


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隈 研吾

隈 研吾

建築家。1954年、神奈川県横浜市生まれ。75年、東京大学大学院建築学科修了。コロンビア大学客員研究員、慶應義塾大学教授を経て、2009年より東京大学教授。主な作品は「水/ガラス」(静岡県)、「森舞台/登米町伝統芸能伝承館」(宮城県)、「石の美術館」(栃木県)、「梼原町役場」(高知県)、「ONE表参道」「サントリー美術館」「根津美術館」(東京都)、「アオーレ長岡」(新潟県)、「竹の家」(中国・北京市郊外)、「三里屯ビレッジ」「三里屯SOHO」(北京)、「ブザンソン芸術文化センター」(フランス)など国内外に多数。著書に『10宅論』(ちくま文庫)、『負ける建築』『自然な建築』『小さな建築』(岩波書店)、『日本人はどう住まうべきか?』(日経BP社・養老孟司との共著)など多数。最新刊『建築家、走る』(新潮社)では、疾走する建築家として世界のパラダイム転換を解き明かしつつ、隈ならではの文明論、建築論を縦横に語っている。
http://kkaa.co.jp/