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2016.08.30 | 徹底した差別化でプロダクトを創る方法

#CASE01_ジュエリー業界における 「顧客価値の創造」

様々な市場がある中で「顧客は何を求めて何を購入するのか?」の答えは、 顧客が「これが欲しい」「これが欲しかった」と合わせて、「これはすごい」と感激するモノを創り出せているかどうかだろう。また、特に女性顧客がメインの場合、その商品を購入することで「幸せな自分を描けるかどうか」が重要になる。今あるものをチェンジするだけではなく、クリエイションによって新しい顧客を創り出すこと。ジュエリー業界における徹底した差別化で実現出来る顧客価値の創造は、どのような思考力が必要なのかを紐解く。



株式会社AHKAH 代表取締役社長福王寺 朱美(ふくおうじ あけみ)



ジュエリー業界はコピー品が氾濫している

宝石商の家に生まれた朱美は、アメリカのジュエリー学校 米国宝石学協会(GIA)を卒業後、約10年間宝石鑑定士として仕事に就く。プライベートでは、幼なじみで日本画家の福王寺一彦氏と24歳で結婚。一彦氏のアシスタントをする中で日本芸術の素晴らしさと奥深さを知るが40歳で離婚。当時全盛であったイタリアンジュエリーを見るため、そしてそこから新しい仕事の鍵となる何かを探すためにフィレンツェ、ミラノなどの工房を訪ね歩いた。

朱美「純粋に夢中になれることを追い求め考え続けた中で、ショップをまわってみて一つの答えを見つけました。それは、自分が欲しいと思う心惹かれるジュエリーが無かったことです。欲しいものが無かったことで、自ら新鮮なジュエリーをクリエイトしたいと強く思うようになりました」  

朱美はジュエリー業界と芸術の世界での相反するポイントに気づく。

朱美「“ジュエリー業界はコピー品が氾濫している”ということがとても気になっていました。しかし芸術は真逆で“オリジナリティーが大切で評価される”ということです。そこから、ジュエリーに芸術の素晴らしい要素を取り入れて、まだ世にない新しい価値をクリエイトしたいと強く思いました。創ることで想いを伝えていこうと」



自ら足を動かし、0からチーム作りを行う

宝石鑑定士として、そして日本画家の妻として芸術を学べる多くの機会の中で本物の芸術品を見極める眼と作家の気持ちを理解出来るようになったものの、実際にジュエリーにするための絵を描けるわけではなかった。精密なジュエリーのデザイン画が描け、しかも原型を造れる人が必要。そこで、朱美と感性が合うパートナーを求めてデザイナー、ジュエリー学校の先生、工芸家など色々な人と出会い作品を見てまわった。そんな朱美の行動に興味を持ったヒコ・みづのジュエリーカレッジ講師の伊藤一廣氏と知り合う。朱美と伊藤氏はクリエイションの目指す方向性が一致し意気投合。そして朱美は、伊藤氏より現AHKAHクリエイティブチームの責任者である当時学生の中林雄大を紹介される。

朱美「伊藤先生は、雄大を私に引き会わせてくれた直後、49歳という若さで還らぬ人となりました。失意の中、自分を奮い立たせて雄大に連絡を取りジュエリーについて様々な話をしました。当然のことですが、雄大には精密な商品づくりが出来るような技術力はまだ備わっていませんでした。ただ、学生ならではのピュアで真っ直ぐな姿勢に心打たれました。その後、雄大を含めた何名かの学生たちを集めて研究会を開き、芸術について、モノづくりについて、絵画、彫刻、ジュエリーについて自分がどう考えているのかを語り、学生達に教えることで自身への問い返しをしていました」

持ち合わせないスキルは仲間を集めてとことん話し合い、チームとして乗り越える。朱美が始めた研究会という名の「ティーチング」と「コーチング」は、チームとして成長し目標達成するための大切なマネージメント手法でもある。



なぜ、ファッション=ジュエリーという位置づけにしたのか?

約10年間、芸術の世界に居たこともあり、初めてつくったジュエリーはとても作品的で「工芸品」のようなものだったと語る。

朱美「それは価格も手頃で綺麗だけれど、一般コンシューマーが身に着けられないジュエリーという課題に気づきました。もっと一般の方に身に着けてもらえるようなジュエリーにしなければと思い、2年目からはオフィス使いも出来るような小ぶりで肌に馴染むジュエリーを使ってファッションとしても新鮮なデザインに寄せていきました」

朱美はブランド設立初期より自然からインスピレーションを受けることが多く、初期につくった百合シリーズは今も続いている。

初期の百合シリーズ


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福王寺 朱美

福王寺 朱美

株式会社AHKAH/代表取締役社長。成城学園高校卒業後、シアトルユニバーシティに進学。ロサンゼルス米国宝石学会にて宝石鑑定士(G.I.A GG)を取得。1997年、AHKAHを設立。