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2016.10.31 | 老舗企業からブランドづくりの真髄を学ぶ

#01_ブランド・マーケティングの目的




ブランドづくりは老舗企業が知っている

日本には創業100年以上のいわゆる老舗と呼ばれる企業が約2万社以上あり(※1)、その数は世界一である。次の代へ受け継いでいくには、企業理念・商品づくり・社員育成など、それらを常に良い状態にしておく必要がある。

創業から320年余り経つ京都の聖護院八ッ橋総本店もまたブランドづくりのための確固たる信念があった。優れたブランドの確立を行うには、目的の明確化、消費者への認知、価値を高めるためのコミュニケーション手法など様々あるが、(※2)にある項目ごとに事例を追う。


八ッ橋の誕生からこれまで

八ッ橋が誕生したのは、元禄二年(1689年)江戸時代中期、近代箏(そう)曲の開祖と言われている八橋検校(やつはしけんぎょう)は、「六段の調べ」など数々の名作を生み出した人物。死後、黒谷の金戎光明寺にある常光院(八はしでら)に葬られたが、墓参りに訪れる人は絶えることがなかった。そのため検校没後四年後の元禄二年、琴に似せた干菓子を「八ッ橋」と名付け、黒谷参道にあたる聖護院の森の茶店にて販売し始めた。現在の聖護院八ッ橋総本店の本店の場所にあたる。  以来、320年余りに渡り聖護院八ッ橋総本店では八ッ橋を製造し続けている。

また、昭和35年(1960年)祇園祭の前日、祇園一力亭にて毎年開かれる表千家の御茶会にこしあんを生八ッ橋で包んだ「神酒餅」が評判を呼び、その後、昭和42年(1967年)に現在の三角形の形をしたつぶあん入り生八ッ橋「聖(ひじり)」が誕生した。


判断基準は100年先も続いていること

まず、ブランド・マーケティングを考えるうえで目的を明確にすることが大切である。聖護院八ッ橋総本店もまた代々受け継がれているからこそ大切にしていることがある。

可奈子氏「時代の流れに合わせて常に商品開発案は出てきます。その際に流行りの味に流されず、出すからには100年続くかどうかというのが大事な判断基準の一つとなります。それだけ自信のあるものしか出さないということなのですが、それはとても難しい戦略です。また最近は、会社によっては効率の良さや安さばかりを追い求めることもあるようです。ただ、それでは会社として長続きしないように思います。一企業として、自社の利益を追求するのは当然なのですが、企業が続くためには一社だけの利益ではなく、周囲からの支えが無くてはならないものだと考えます。当社は聖護院という地域に支えられて現在まで続いてきました。この地域を大切にし、近隣の皆様が過ごしやすいよう、活気が溢れるよう心掛けることも、会社の勤めであると考えています。引いてはそれが京都全体の発展に繋がり、京都に根差す会社の継続の要因になるのではないかと思います。続いていくということ。続いてきたということ。継続するという本当の意味を忘れてはならないと思っています」

(※1)帝国データバンク調べ


聖護院八ッ橋総本店 専務取締役/鈴鹿 可奈子


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鈴鹿 可奈子

鈴鹿 可奈子

聖護院八ッ橋総本店/専務取締役。京都市生まれ。京都大学経済学部経済学科卒業、在学中カリフォルニア大学サンディエゴ校エクステンションにてPre-MBA取得。卒業後、信用調査会社勤務を経て、2006 年聖護院八ッ橋総本店入社。「守るべきことを守ること、続けていくことが大事」という父・鈴鹿且久社長のもと、長い歴史と伝統の味を守り受けつぎながらも、新しい商品づくりに日々努めている。2011 年には新しい形で八ッ橋を提供する新ブランド「nikiniki(ニキニキ)」を立ち上げた。現在、専務取締役。