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2017.01.11 | 大河ドラマ題字に込めたクリエイター魂

ルールとモラル 真価が問われる2017年

BTL TOKYO編集長 兼 アーキテクト/倉本 麻衣


From the Editor in Chief


ちょうど1年前のBTL Vol.8で2020年東京五輪ロゴ問題に触れていた。その際「問題は、真似をした真似をしてないではなく、クリエイティブな分野の知見や知識がない人々がマスコミ報道に乗っかりデザイナーを誹謗中傷したところにある」と一つの見解を出した。

そして2016年は、クラウドワーカーによって大量生産されたコンテンツの誤情報や他サイトからの無断転用などの発覚で幾つものキュレーションメディアがほぼ閉鎖に近い状態へ陥るニュースがネットを中心に駆け巡った。1文字1円以下で取引されるライティング市場を目にして、プロのライターや編集者達は市場価格崩れやモラルに欠けた状況に危機感を覚えたのではないだろうか。現にネットニュースで取り上げられた直後に弊社サイトへも「外注 校正」というキーワードで通常の1・5倍程度のアクセスされた形跡を見ると注目度の高さが伺える。

BTL は2014年9月にWEBメディアとしてBusinessTimeLineをオープン、そして紙メディアのクリエイティブ経済誌を2015年6月に発刊した。当時「何故、紙なのか?」という声も多くあったが、どうしてもWEBだけでは表現出来ないことがあり、敢えて紙メディアの発刊に踏み切ったところがある。紙では誌面を右開きにすることで文章の縦書きが表現出来ることはWEBとの最大の違いでありデザイン性に幅が出る。逆に紙は限られた枠で文字制限があり、印刷後の修正が利かないという不自由さがある。しかしその限られた枠にどんなストーリーを表現出来るか?とても創造力がかき立てられる。更に、間違った情報を出さないために念入りな校閲を行うことで情報価値が上がる。正しい情報を伝えていく中に、プロを目指す若手人材が間違った情報に踊らされることなく情報選択をして欲しいという願いがある。

BTL今号の特集は、半年以上前から2016年最後を「書」で締めるということで決め企画を進めてきた。書は臨書という「真似(まね)て書く」から始まり、「反復」することで自分の型になっていく。因みに「まねる」は「まなぶ」の語源でもある。そこから自分らしさを出すために型を破りながらオリジナル性を追求する。まさに「型があるから型破り」である。見て、真似て、学んで、そして創り出す。これが「書」であり、クリエイションの基本プロセスでもある。例えば、デザイナーもデッサンを繰り返し行うことでデッサン力が養われ様々なデザインへ応用を利かせられるようになる。また、プログラマーに至ってはあらゆる例題をプログラミングで反復することによって言語特有のクセを見つけ最適なコードを書けるようになるだろう。

キュレーションメディアの今回の問題は検索エンジンの機械処理能力の脆弱性にも起因する。つまり「ルール」は機械的に埋め込めても「モラル」を機械に持たせることが未だ難しいということだ。ITはあくまでも手段でしかないことを認識し、正しい知見と知識を身につけモラルを持ってクリエイションし発信すること。コンテンツ制作において言うならば、真似するということから「何がダメなのか?」という学びへ変わった今、次はその学びを持ってクリエイトすることへ変えていけば良いのだ。そして適正価格でビジネスを成立させること。2017年、クリエイティブ業界は真価が問われる年になるだろう。多くの膿出しと気づきがあったクリエイター達の飛躍が期待出来る。




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Maaya Wakasugi

Maaya Wakasugi

1977年 岡山県生まれ。 6歳より書道を始め、17歳で個展開催。 書の名門・大東文化大学を卒業。 “古代文字” をモチーフとした独自の作品スタイルを確立。 近年は、 書をアートとしてとらえ、 ルーヴル美術館公認の関連ロゴマークの制作や、ニューヨーク近代美術館MoMAでパフォーマンスをするなど、様々な場所で表現を展開。 2016年1月は世界経済フォーラム(通称ダボス会議)Japan Nightにて世界経済フォーラム創設者兼会長のクラウス・シュワブ氏と書き初めパフォーマンス。 また毎年国連World Water Dayの活動にも作品を提供。 3月にはUN Waterの公式HPに掲載される。 2017年NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」のタイトル揮毫を手がける。現在フランス ボルドー在住。http://www.maayamaaya.com/