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2017.03.15 | 野村萬斎から学ぶイノベーション力

#02_「芸術監督」として考える もの創りの真髄

2017年、萬斎が芸術監督をつとめる世田谷パブリックシアターは20周年を迎え、4月にはラヴェルの舞踊音楽『ボレロ』と狂言の発想・技法が結集したコンテンポラリー版『三番叟』とも形容できる萬斎渾身の独舞『MANSAIボレロ』を上演。そして、劇場空間を活かした大作の舞台『子午線の祀(まつ)り』を萬斎の新演出で7月に上演することになっている。能舞台と劇場での作品づくりの違い、更にオールジャパンの総力をあげて日本文化を海外に発信するために超えるべき葛藤を探る。



ポリシーは、「縦糸に横糸を通す」ように

子午線の祀り』は、『平家物語』を題材に、天の視点から人間たちの葛藤を描く。平知盛や源義経をはじめとする躍動感あふれる登場人物たち、また日本語の「語り」の美しさを荘厳な響きを引き出す群読(※1)というスタイルに加え、能・狂言、歌舞伎、現代演劇で活躍する俳優、スタッフが、ジャンルを越えて創り上げた日本演劇ならではの舞台として高く評価されてきた。
萬斎「僕の父である万作たちから受け継いだ『子午線の祀り』は、世田谷パブリックシアターの芸術監督として一つのポリシーにしている『縦糸に横糸を通す』ということに気づかせてくれた作品でもあるんです。それはつまり、雅楽舞楽から始まって能・狂言、文楽、歌舞伎、現代劇、舞踏まで、舞台芸術に横糸を通すことで、日本演劇のアイデンティティやあり方を探究したいということです。最近は、オールジャパンの総力を挙げて日本文化を海外に発信していきたいと考えているんです」
萬斎は、日本文化は世界に類を見ない幅の広さを誇っていると考えており、その総力をあげて発信していくことが今必要であると熱く語った。

(※1)複数の役者が分担しながら朗読することで迫力や芸術性を生む手法。


制限があるからこそ「創造性」が高まるもの

伝統的な能舞台と現代の劇場では、どのような演出の違いを考えなければいけないのか。まずは、その空間における数値的感覚を持たなければいけないと萬斎は言う。
萬斎「能舞台では、柱が4本あって屋根がある、ある種の立方体に近い空間で区切られるということは守られていることでもあるのです。閉塞的になることでもありますが、古典的な発想のいいところとして制約があるからこそ、その中で何が出来るかという想像力が働きやすくなります。逆に解き放たれた劇場空間では、能舞台と違いエネルギーの放出の仕方などを変えなければいけない。照明や色々な特殊効果を含めて拡がりを見せていくような演出です。区切りがないということはそれだけ大変だということです」


求められる「深化」と「進化」

制限がある中での創造性と制限のない自由な中での創造性について認識しておくことは、一般的なビジネスの世界においても重要なことである。
萬斎「ビジネスでも重要かと思いますね。あまりに自由だと際限がなくて面白くないかと。例えば、鬼ごっこだって狭い部屋で鬼ごっこをするから面白いわけです。能楽は、決まっている空間だからこそ深められるし、劇場では新しい発想を求められるという『深化』と『進化』があるんです」
萬斎は、上手く現在の時代を取り込みつつ、深化と進化を繰り返し、そして普遍性を獲得していく創造こそが「本物」であるのではないかと言う。
萬斎「確固たる指針、方針を持って、クオリティの高い作品を創り続け、劇場に人が足を運ぶことで様々な価値観を作り手と共有し、互いに生きていることを実感して進んでいく、それが劇場という場だと思います」



世田谷パブリックシアター開場20周年記念公演

トーク&パフォーマンス『MANSAIボレロ』
2017年4月5日(水)
会場 世田谷パブリックシアター【特別招待公演】
出演=野村萬斎 ほか

狂言『唐人相撲』/『MANSAIボレロ』
2017年4月7日(金)〜4月9日(日)
会場 世田谷パブリックシアター【3月12日チケット発売】
出演=野村万作 野村萬斎 ほか 万作の会 唐人公募出演者

『子午線の祀り』
2017年7月
会場 世田谷パブリックシアター
作=木下順二 演出=野村萬斎
出演=野村萬斎 成河 河原崎國太郎 今井朋彦 村田雄浩 若村麻由美 ほか

お問い合わせ:世田谷パブリックシアターチケットセンター
       03-5432-1515 営業時間:10:00〜19:00




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野村萬斎

野村萬斎

狂言師。1966年、東京都生まれ。狂言師。人間国宝・野村万作の長男。重要無形文化財総合指定者。2002年より世田谷パブリックシアター芸術監督を務める。国内外の能・狂言公演や舞台・映画出演はもとより、世田谷パブリックシアターでは『まちがいの狂言』など狂言の技法を駆使した舞台や、『国盗人』(「リチャード三世」を翻案)など古典芸能と現代劇の融合を図った舞台を次々と手掛ける。芸術監督就任後初の構成・演出作『敦 ―山月記・名人伝―』では朝日舞台芸術賞、紀伊國屋演劇賞を受賞。構成・演出・出演を務めた『マクベス』は全国各地で上演を重ねるほか、海外公演(ソウル、ニューヨーク、シビウ、パリ)も果たした。

松井るみ

松井るみ

舞台美術デザイナー。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。劇団四季を経てロンドンへ留学。帰国後、舞台美術家としての活動を開始。2004年『Pacific Overtures』(宮本亜門演出)でブロードウェイデビューし、同作品デザインで第59回トニー賞にノミネート。2007年にはOISTATより“世界の最も名誉ある舞台デザイナー12人”に選出。タン・ドゥン作曲『TEA: A Mirror of Soul』(宮本亜門演出)ではオペラ界においてもアメリカ進出をはたす。さらに、2010年6月には『The Fantasticks』(宮本亜門演出)でロンドンのウェストエンドデビューを飾った。 近年は、上海公演や、AKB48の5大ドームツアー、国立競技場公演のセットデザインを手掛けるなど、活動の幅を広げている。これまでに参加した作品は400以上にのぼり、紀伊國屋演劇賞個人賞、第8回・第19回読売演劇大賞最優秀スタッフ賞,伊藤熹朔賞、菊田一夫演劇賞他、受賞多数。2015年より東京藝術大学の非常勤講師を勤める。