クリエイティブ経済誌 BUSINESS TIMELINE
Vol.36
アート
2018.06.14

永く人々に愛される作品を創る 通天閣天井画復刻プロジェクト


年間100万人を超える人々が訪れる大阪新世界のシンボル「通天閣」。地震に備えた免震工事に伴い、通天閣の象徴でもある天井画を復刻させるプロジェクトが発足した。クラブコスメチックス(以下、クラブ)が初代通天閣に天井画を寄贈して100年、時を超えて現代に甦る。天井画復刻プロジェクトのディレクションを行った株式会社 the laB. media solutionの江口氏に話を伺った。



当初は課題が山積みだった
江口氏「当初は復刻という企画にもかかわらず、初代天井画の原画はなく、資料もほとんど残っていない状態でした。クラブ側がリサーチを進める中で、初代天井画を手がけた織田一磨氏の下書きが見つかりましたが本当に下書きレベル。それをそのまま復刻画として使うことはできません。天井画は免震工事の完成とともにお披露目を予定しており、期限は半年後に迫っていました」
そんな中で、ディレクションを依頼されたのが江口氏だった。これまでの実績と今回のプロジェクトに向けた姿勢が評価され、抜擢されたという。


天井画のディレクション手法
まずは復刻画のコンセプトや目的、表現方法を整理。そして一番重要なポジションである描き手の選定では、画力、経験、柔軟性などを考慮した結果、日本画家の沖谷晃司氏に依頼することになった。
江口氏「下書きから読み取れる情報から、何が描かれているのか、どんな意味があるのか、実在するものなのか、徹底的に調査しました。そこから曖昧な部分はふわっと再現した方が良いのか、それともある程度我々の解釈を加え創作するのか。我々の意図とクラブ側の想いを橋渡ししながら、『見たことのなかった』イメージが沖谷氏の確実な画力によって少しずつ形になり始めました」
天井画は通常現場で描かれるものだが、当時は免震工事中。江口氏は制作方法にも工夫を凝らす。
江口氏「原画は2m×2mで制作しました。原画のデジタル化には、文化財の復刻や保存の実績がある清華堂様に協力を仰ぎました。15cmずつ各部分を撮影し、つなげていく。素晴らしい技術により、岩絵具の質感まで見事に再現されます。また実際は12mの高さの天井に掲げられるものであるため、線の太さや色合い、照明の当て方などの確認は実際に上げて見る必要があります。これは母校である京都市立芸術大学の協力のもと、大学会館にてシミュレーションを行いました。地域の企業や学校の協力のおかげで、無事、期限内に仕上げることができました」


人々の記憶に残る作品
通天閣に来る旅行者は、新しい天井画を見て感嘆の声を漏らす。
江口氏「天井画を見て感動してくれることはもちろん、誰もがこの絵を『ここにあるべき当たり前のもの』に感じてくれている事が嬉しいです。奇をてらって、最初のインパクトだけで忘れられていくものではなく、人々の記憶と感覚に深く根差していくものが創れたらと思います」

編集部の視点
2017年度の旅行意識調査において、行ってみたい旅行目的で一番多かったのは温泉旅行、次いで自然観光、歴史・文化観光となっている。これを年代別でみると50〜70代で歴史・文化観光が上位にくる。大阪の観光名所である通天閣は特に50〜70代の多くは一度は訪れたことがあるのではないだろうか。こうした背景の中、「復刻」という企画は一度観光に訪れた場所に「もう一度来てもらう」施策として重要な役割を果たしているといえる。
※日本交通公社2017年度調査結果

■株式会社 the laB. Media solution