クリエイティブ経済誌 BUSINESS TIMELINE
Vol.39
アート
2018.09.14

大地の芸術祭にみる アート×地域の地方創生

ECHIGO-TSUMARI
ART TRIENNALE 2018

レアンドロ・エルリッヒ「Palimpsest: 空の池」

文化芸術による地方創生
アートイベントを通じて、観光客の誘致や地域のつながりをより深めることを目的に、いまや「芸術祭」は日本国内の様々な地域で行われている。なかでも里山型芸術祭の先駆け的存在として知られている「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ(以降、大地の芸術祭)」は、こうした活動の先進事例として国内外から注目を集めている。
今年で7回目となる「大地の芸術祭 2018」。越後妻有(新潟県十日町市、津南町)を舞台に、2000年から3年に1度開催されており、前回の2015年には約51万人もの来場者が訪れ、約50億の経済効果や雇用をもたらした。
6つのエリアに作品が点在しており、来場者はその地域の自然や暮らしの中に現れたアートを体感できる。「現代の合理化・効率化の対極として徹底的な非効率化を試みる」というテーマのもと、あえて作品を散在させている。常設作品約200点に加え、世界中のアーティストの新作やパフォーマンスを見ることができる。

EAT&ART TARO「ザ おこめショー」

大地の芸術祭 2018のみどころ
今年のみどころは、大地の芸術祭の根幹となる作品を手がけてきた磯辺行久氏のこれまでを紹介する企画展や過去の3作品の再展示。1965年にニューヨークに渡り環境芸術を学び始めてから以降、磯辺氏の作品は、バイオや地質や気象など環境を構成している情報と色彩や形といったアートの伝達ツールを重ね合わせるのが特徴だ。「川はどこへいった」の作品では、昔の信濃川の川筋が全長3.5kmにわたって、約450本の黄色い旗により再現されている。今は目には見えない昔の痕跡がアートによって蘇る。
また、十日町エリアの拠点、越後妻有里山現代美術館[キナーレ]にて展示されるレアンドロ・      エルリッヒによる大型作品「Palimpsest: 空の池」も見逃せない。建物の中央にある回廊に囲まれた大きな池の水面に光が反射し、空や建物を鏡のように映す。視覚的な錯覚を用いて鑑賞者の常識を揺さぶるレアンドロ・エルリッヒの作品は、日本でも人気が高い。

磯辺行久「川はどこへいった」

地域主体のアートイベント
芸術祭をきっかけに、この土地に移住する人も少しずつ増えているようだ。芸術祭のサポーター「こへび隊」へ参加しそのまま移住した人、芸術祭の仕事をするため移住する人もいるという。交流人口も増加しており、特に海外からの観光客はかなり多いとのことだ。
芸術祭をスタートした当初は、アートによる地方創生という前例がなかったため、地域の人々の理解を得ることはなかなか難しく、2つの集落しか作品設置への希望の手が挙がらないほどだったと   いう。今では、越後妻有地域の100以上の集落が主体的にそれぞれの魅力や独自の文化をアートを通じて発信し、世界最大級の国際芸術祭までになっていった。
アートの役割や地域の理解がしっかりなされておらず、一過性のイベントで終わってしまうところもある。作品を通してその土地を知る、そこに住む人々と交流する、また来たいと思う。大地の芸術祭では、そうした永続的な魅力の伝え方を確立しているからこそ毎年多くの人が訪れるのだろう。

イ・ブル「ドクターズハウス」, Photo_Keizo Kioku

会期:7月 29日(日)~ 9月17日(月)  51日間
開催:地越後妻有地域 (新潟県十日町市、津南町)