クリエイティブ経済誌 BUSINESS TIMELINE
Vol.45
アート
2019.02.01

日本一早いお花見を体感できる「FLOWERS BY NAKED」

体感アートで観察眼を磨ける
世界的な浮世絵師「葛飾北斎」に出会う


POINT
✔ AI、バイタルセンサー、ARなどの先端技術を活用し、コミュニケーションの場を表現
✔ 22年前から「ボーダレス」「曖昧さが大事」を言っているが、当時は否定され続けた
✔葛飾北斎の版画「富嶽三十六景」のデプス(深度)を、先端デジタルで表現し没入感を体感

「日本一早いお花見」をテーマに、今年4回目を迎えたFLOWERS BY NAKED。外はまだまだ寒いが、360°桜に包まれるアート空間で、一足先に春を満喫できる。手がけるのは、いち早くプロジェクションマッピングを実現しイノベーションし続けるクリエイティブカンパニーNAKED。毎年、新しい取り組みを発表しているが、今回も多くの人たちとのコラボレーションや先端テクノロジーを起用した表現、また葛飾北斎に出会える没入型映像表現など、まさに五感で楽しめるイベントに仕上げた。総指揮者としてこれらを手がけるNAKED代表の村松氏へ、何故、日本の伝統に惹かれ追いかけ続けるのか、その本質について話を聞く。

テーマである「伝統と革新」を謳う心には、「日本人である僕が何を表現できるか」が常にある

―NAKEDが手がけられるプロジェクトでは、日本の伝統を取り入れた作品が多いように思います。また、今回の裏テーマが「伝統と革新」ということですが、村松氏が考える伝統と革新とはどのようなことをイメージされているのでしょうか?
村松氏「私はもともと映画監督をやっていましたが、その頃は洋画しか見たことがありませんでした。しかし、自分はどこに行っても日本人なので、洋画独特の雰囲気を映像としては撮れないことがわかったのです。その頃から常に考えていたのが、『日本人である僕が何を撮るか?』ということです。世界に出て行ったとしても、当たり前の話ですが自分は日本人である。ある種、そこからは逃げられないものであると思っていました。そのように考える中で、映画の脚本を作っていると、『日本の伝統が変化しながら残り続けている』ということに、とても興味が出てくるようになりました。伝統の表現が、その時代を映す鏡のように何百年と受け継がれて続いていることに、とてもリスペクトがあるのです。そして私の哲学に『二律背反』というものがありまして、映画では光と陰があるように、何か対局するものの中にモノゴトの本質があるのではないかと考えています。伝統は究極のアナログだと思いますし、先端テクノロジーは究極のデジタルで、その距離間があればあるほど面白いイノベーションが起きるように考えています。ですので、伝統の中でもその分野の新進気鋭ではなく、1番のお家元となる方と組ませてもらうようにしています」

―伝統文化と先端テクノロジーを掛け合わせる際に、文化が違うがゆえに難しい部分などなかったでしょうか?
村松氏「これまで様々なお家元の方とやりとりさせていただいていますが、意外にもメンタリティの部分がすごく近くに感じられるのです。逆にすんなり行きすぎるが故に、もう一つ摩擦を起こしたいなと思うくらいです。私たちは、会社を立ち上げた22年前からクリエイティブカンパニーとしてのテーマを掲げ、『ボーダーレス』『曖昧さが大事』ということを言いつづけてきましたが、否定され続けてきました。しかし、2013年頃からSNSの普及が急速に早まったことで、個人へあらゆる情報が行き渡り、それらが1回混ざったことでボーダーレスや曖昧さみたいなものを社会が実感し始めているように思います」


世界の芸術家にも大きな影響を与えた葛飾北斎「富嶽三十六景」の遠近法をデジタルで再現

今回のイベントでは多くの新しい取り組みを出されていますが、中でも「葛飾北斎に出会える」映像作品が当イベントにおいて真骨頂のように見えました。この作品は、どのような背景があり映像化することができたのでしょうか?
村松氏「最近、私は版画にすごく興味があります。パリに130年以上の歴史を持つ由緒あるリトグラフ工房『イデム(idem)』があるのですが、そこの職人の人たちと一緒に、とある制作を進めているのです。進める中で、葛飾北斎の原画が多く保管されている山梨県立博物館との接点ができました。世界的にも親しまれている葛飾北斎の『富嶽三十六景』の原画が、とても状態良く保管されていて、映像とのコラボレーションを考え4つの作品を展開して映像表現することができました。葛飾北斎の版画は、遠近法を取り入れ幾層にも重ねられているので、平面ではなく立体的に見えるところがとても素晴らしいのです。その立体感を、テクノロジーを活用することで、より没入感を出す表現へ挑戦しいまして、デプス(深度)を強くデフォルメしたものになっています。今回は3作品の紹介になっていますが、三十六景あるので、いつか全ての作品を手がけたいと考えています」

―今回、デジタル表現として他にも新しい取り組みがなされているようですが、どのようなものを用意されているのでしょうか?
村松氏「今回、AIを活用した選曲や、バイタルセンサーを起用した空間提案などを用意しています。AIは、エイベックス社との取り組みとしてのプロトタイプ版になるのですが、ヒューマノイドDJがそこにいる人たちの感情、性別、年齢などを拾いながら曲を提案するというものです。バイタルセンサーは、茶室に入るとその人たちの心拍データを取って、毎回違う映像が表現されるようになっています。茶室では、心を整えることや息を整えることの大事さみたいなものを表現したくて、その仕組みを通してコミュニケーションの場にできればと考えています」


編集部の視点
今年で4回目の開催となった「日本一早いお花見」は、先端テクノロジーを活用した新しい体感型アートの提供を行い、記者発表当日も多くのメディアが集まり注目度の高さを伺えるものであった。また、日本の文化を大事にしつつ文脈をきちんと考えられた表現は、歴史や伝統への深い敬意が感じられた。

<FLOWERS BY NAKED開催情報>
― 開催概要 ―
イベント名:FLOWERS BY NAKED 2019 ー東京・日本橋ー
期間:2019 年 1 月 29 日(火)〜3 月 3 日(日)
開催時間:10:00〜20:00 ※入場は閉場の 30 分前まで
※営業時間は変更になる可能性がございます。
開催場所:日本橋三井ホール COREDO 室町 1・5F(エントランスは 4F)
入場料:
当日 (2019 年 1 月 29 日(火)〜3 月 3 日(日))
大人 1600 円〔平日〕2000 円〔土日祝〕
子供 1000 円〔平日〕1000 円〔土日祝〕
主催:FLOWERS BY NAKED 製作委員会
お問い合わせ:nihonbashi@flowers.naked.works
公式サイト:https://flowers.naked.works/2019nihonbashi/
企画・演出・制作:NAKED Inc.

村松亮太郎 Ryotaro Muramatsu
アーティスト/ NAKED Inc.代表/大阪芸術大学客員教授/長野県・阿智村ブランディングディレクター。1997年にクリエイティブカンパニーNAKED.Incを設立以来、映画/TV /MV /広告/空間演出など様々なジャンルでのプロジェクトを率いてきた。監督作品は長編/短編作品合わせて国際映画祭で48ノミネート&受賞。近年では「FLOWERS BY NAKED」「TOKYO ART CITY BY NAKED」に代表される体験型アートイベントを手がける。また、華道/茶道/香道/歌舞伎/能狂言といった伝統文化・芸能と先進の表現を掛け合わせたショーや、長野県・阿智村をはじめとする日本各地での地方創生イベントや文化プロジェクトに取り組むなど、自身の作品、そしてあらゆる人・場所とのコラボレーションを通して新たな価値と体験を生み出している。作品集に『村松亮太郎のプロジェクションマッピングSCENES by NAKED』(2015,KADOKAWA)がある。