クリエイティブ経済誌 BUSINESS TIMELINE
Vol.25
カルチャー
2017.07.18

訪日観光客の旅を支える 九州交通インフラの舞台裏に迫る

DISCOVER JAPAN vol.1

アジアのゲートウェイ 福岡
アジア圏を中心とした訪日観光客は、以前の「爆買い」旅行から新たな旅の楽しみ方へ関心が移ってきている。より「体験」する旅へとニーズが変化するなか、そういった流れを商機と捉え、交通インフラの立場でサービス強化を行う西日本鉄道 自動車事業本部の宮本寛之氏へ、九州地区で今、何が起こっているのか取材を試みた。

「爆買い」から「体験型」消費へ

福岡市は、空港や港と中心都市を地下鉄やバスによって、20分圏内で結ぶアクセスの良さが特徴的。更に、中心都市のひとつである天神には、2015年に大規模改修を終えた「西鉄天神高速バスターミナル」がある。九州全域への高速バスネットワークの起終点である同施設には、九州での新しい体験旅行に関心を寄せる訪日観光客が多く訪れ、九州旅行におけるハブ機能の役割を果たしている。 
宮本氏「西鉄天神高速バスターミナルでは、1日に約2万人の利用客がいますが、最近ではアジアを中心とした海外のお客様が増えています。アジア圏の方たちの爆買いブームが落ち着いて、現在は温泉ブームが起きているようなのです。風光明媚な史跡や自然の多さ、距離的な近さも相まってこれまでの東京・大阪等の都市中心の観光から、九州へお越しになるケースが増えつつあるように感じています。その交通手段は、飛行機とビートル(※1)などの高速船をご利用になるケースが大半です。なかでも別府、湯布院などの温泉地が人気で、空港や港から西鉄天神高速バスターミナルへ移動し、高速バスを使ってそれぞれの観光地へ向かわれます。バスターミナルのリニューアルによって受け入れ体制が整い、閑散としたイメージだった平日昼間の時間帯でも、海外からのお客様で賑わっています」
爆買いから体験型消費へ関心が移った訪日観光客向けに、旅行行程の動向を踏まえて、分かりやすい旅行チケット・サービスの販売促進を行っている。
宮本氏「訪日観光客の方々は、福岡に入られてから湯布院、別府へ行って1~2泊したのち、博多に戻ってきて1泊して帰られる2~3泊の旅が主流となっているようです。そうした需要にお応えできる商品として、九州全域の高速バス・路線バスと一部フェリーが乗り放題となる『SUNQPASS(サンキューパス)』を積極的におすすめしています。利用可能なバス路線数は、約2400路線にのぼり、これ1枚あれば九州の観光地の移動には事欠きません。韓国の旅行代理店への直販を進めており、28年度は11万6千枚ほど売り上げ、過去最高の販売実績を記録しました。最近はSNSなどで影響力のあるパワーブロガーの旅行記などが投稿されると、紹介されたお店が突如として行列ができる等、特有の動きもあるので、日々の情報収集は欠かせません」
インスタグラムでは、ハッシュタグ「#SUNQPASS」を付けてガイドブックやパス写真とともに投稿されているシーンが目立つ。

(※1)JR九州が運航する福岡と釜山を3時間5分で結ぶ海の国際超特急。ジェットフォイルと呼ばれるウォータージェット推進式の水中翼船。船体を海面から2メートル浮き上がらせて翼走することで波の影響を受けない。


「心地よさ」を追求した、九州を結ぶ「ハブ」

これまでのバスターミナルは、その公共的な役割から、バスの乗降機能のみを満たした施設が多く、空港や駅舎のように心地よい環境とは言えなかった。九州の玄関口である「西鉄天神高速バスターミナル」もまた、バス乗り場を超えるものではなかった。そこで、毎日通勤や通学で使う地元の利用客も、これから旅行へ出かける人、そして海外からの観光客にとってもバスの待ち時間を快適に過ごせるよう、クリエイティビティな大規模改修が行われた。
宮本氏「『西鉄天神高速バスターミナル』は1997年に『天神バスセンター』という名称で供用開始しましたが、20年近く経つ中で老朽化・サービスの陳腐化が進んでおり、当時隆盛を極めていたツアーバスに対抗するためにもリニューアルを実施する運びとなりました。その際、バスセンターが今後も九州の玄関口であり続けるためには、それにふさわしいデザイン、機能を持つべきという結論に至り、なかでも、男女ともにトイレの機能強化に注力し、女性向けにはパウダースペースやフィッティングルームも追加しています。また、乗り換えなどで長時間お待ちになるお客様むけには待合室を整備しました。併せてスターバックスやローソンも同じフロア内に併設しており、リニューアル後のお客様の評判は上々です」
2020年に向け、更なるインバウンド需要が期待できるなかで、地に足をつけながらもインフラとソフトサービスを大胆に変えていく施策は、「アジアのゲートウェイ都市 福岡」の本気度が伝わってくる。
次号では、福岡空港リニューアルと連動する都市づくりについて迫る。