クリエイティブ経済誌 BUSINESS TIMELINE
Vol.31
カルチャー
2018.01.15

「土からうまい奥能登」メッセージに込められた歴史と受け継がれる人々の心


石川県能登半島の上部エリアに属する奥能登は、里山里海で育まれる暮らしそのものが評価され、平成23年6月に「世界農業遺産」として認定された。さらに、平成27年3月の北陸新幹線開通や、同年上半期に放送された連続テレビ小説「まれ」の反響で、観光客が前年から130%増加した。しかしながら、翌年以降、その観光客は年々減少、奥能登の魅力を県外へ発信しようと、能登半島の地域再生・活性化を目指したプロジェクトが立ち上がった。それが「土からうまい奥能登」プロジェクト。本プロジェクトのコンセプトワークからアートディレクション・デザイン全般を担当しているBASISのクリエイティブディレクター西村氏へ話を伺った。

奥能登に住む人々の「土」への思い
はじめにコンセプトワークを行う上で、奥能登が課題としていること。それは、世界農業遺産に認定されるほど「農」に特化した地域でありながら、それが世間一般的に認知されていないことだと西村氏は指摘する。
西村氏「まず、広くわかりやすくその地域性を伝える為のキーワードを探す事から始めました。奥能登の歴史や、古くから今に続く伝統や習わし、農に根ざした生活習慣などのキーワードを羅列し、紐解き、このプロジェクトのストーリーを考えたのです。そこからブランドの核となるメッセージが見えてきたんです。それが『土からうまい奥能登』でした」
「土からうまい奥能登」というコピーメッセージは、江戸時代から地域で親しまれている「能登はやさしや、土までも」という思いから生まれた。これは、人はもちろんのこと土までも優しく柔らかく、また奥能登の人は素朴で温かいというような意味で使われている。
西村氏「奥能登の生産者の方々は、豊かな自然と共に暮らしてきただけあって、自然・風土に対しての信仰心が強く、自分たちの生に必要な分だけ自然から食を『いただく』と考える気持ちをとても大切にしています。だからこそ、奥能登と深い繋がりのある『土』という言葉がキーとなるようにしました」

見た目から美味しさを引き立てる
中山間地域(平野の外縁部から山間地を指す)の占める割合が多い能登では、その寒暖差と冬季の積雪によるきれいな雪解け水が、美味しい農作物を育む。その特産物の美味しさを、商品パッケージを通して引き立たせるのも西村氏の役目だ。そのクリエイションに込められた思いを探る。
西村氏「実際に、BASISが手がけた食品パッケージはお米や里芋、お餅など多岐に渡ります。生産物によって賞味期限が異なるので、密封や非密封など食品のルールが細かくあるのです。それを踏まえてのデザインが大変でしたね。また、お米の中でも特別栽培米と通常のお米との差別化、市場に出回る用と通常のものとの差別化も必要です」
更に、「美味しさ」を引き立たたせるためのクリエイティブの工夫について次のように話す。
西村氏「『手しごとを感じるデザイン』を、きちんと引き出すということを大切にしています。それはつまり、キレイでまとまったデザインではなく、粗があり素朴だけど主張がある、商品の味をきちんと隆起出来るデザイン。その為に、特別栽培米のパッケージはタグ(左肩に巻いた紙)の結びで奉納する特別なお米をイメージし、里芋のパッケージは活版(金属や木に文字を彫り込み判子状にしたもの)などの工夫をしています」
では、里芋のパッケージの下に表現されているさざ波のような模様に関しては、どのような思いが込められているのだろうか。
西村氏「『土からうまい奥能登』は、『海と山が育む土』をシンボル化しています。里芋のパッケージは、実は最初に道の駅で一般販売される商品だったのでコンセプトをそのまま具現化しました」

編集部の視点
ICTや移動手段の発展は産業・経済構造を大きく変え、地方にいながらダイレクトに県外や国外と繋がることができる。地方産業もこの構造の転換期に遅れることなく、流通の見直しやブランドづくり、情報発信の手法など新しい視点を取り入れ、試していくことが求められるだろう。


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