クリエイティブ経済誌 BUSINESS TIMELINE
Vol.45
エンタメ
2019.02.05

福岡人気フェス「CIRCLE」主催者の挫折と復活

オルタナティブ・新インドア・フェス「Q」開催決定
メディア初インタビュー

POINT
✔福岡の人気フェス「CIRCLE」は、オルタナティブなフェスである。
✔フェス開催におけるブッキング、集客、コスト管理など、イベント運営のノウハウを改めて学び直した。
✔新インドア・フェス「Q」は、大人が楽しめるイベントとして屋内での開催となる。


音楽フェスの中では珍しい、所謂「ロック」の匂いがしないフェスが福岡にある。それは、九州の音楽好きの間では知らない者がいないフェス「CIRCLE」。主催者は、宮崎出身のマネージメント会社TONE代表を務める 是澤氏。CIRCLEは、2007年に初回を開催。そして2回目を迎えられたのは、5年後の2012年だった。それ以降は毎年開催されている。なぜ5年のブランクがあったのか、その理由を知ることでフェス開催の難しさと厳しさを知れる。また、新インドア・フェスとして「Q」を今春に開催予定。どのような背景があって開催が決まったのか。これまでメディア出演を控えていた是澤氏が、今回メディアとして初のインタビューに答えてくれた。

福岡には、カフェオーナー開催の数万人が集まるイベントがある

―福岡で人気のフェス「CIRCLE」は、どのような背景で立ち上げられたのでしょうか?
是澤氏「福岡には、毎年9月に開催されるSunset Liveがあります。既に20年以上続けられている素晴らしいフェスです。カフェのオーナーさんが主催していて、最初はカフェ前の駐車場でイベントを始めたことがきっかけで毎年大きくなり、万単位で人が集まるフェスに成長しています。私は宮崎出身ということもあり、いつか九州でこんなイベントをやりたいなと漠然と考えていました。2005年頃に懇意にしている九州のプロモーターのBEAさんが野外フェスをいよいよ立ち上げるという噂を聞いて(猛プッシュしたのは私ですが)、私自身は出演者のブッキング等を行う制作担当として参画しました。その頃、40歳過ぎで、『故郷に恩返しをしたい』という感情が芽生え(皆さん、そうですよね?)、自分が仕事にしている音楽で恩返しできればと思ったことがフェス開催に向けての動機として大きかったと思います」

フェスの頓挫から、「自分が100%リスクを取る」と覚悟を決めたフェスの復活

―2007年に第1回目の「CIRCLE」を開催後、2回目の開催は5年のブランクを経て2012年になっていますが、その理由を教えてもらえますか?
是澤氏「ビジネス的な理由で2回目の開催は頓挫してしまいました。すごく悔しくて、翌年から東京や大阪でイベントを開催して、コンサートのノウハウを勉強し直しました。そして2011年に、意を決して、現地プロモーターのBEAさんに「CIRCLE」をもう一回やらせてくださいと相談に行きました。とはいえ、BEAさんとしてはリスクを負えないと。前回のことがあるので当然ですよね。『どうしてもやりたいので、弊社が100%のリスクを背負います』と交渉したところ、承諾してもらえたのです。そして、翌2012年に新生「CIRCLE」を開催しました。今では笑い話としてお話しできるのですが、直前の週間天気予報で「晴れ」予報が出た途端、ありがたいことにチケットが急激に売れ始めました。イベント主催側として当日に向けての飲食や必要備品など、数週間前には発注をしなければなりません。開催1週間前に3,000弱のチケットが購入されていましたが、蓋を開けてみたら4,500枚ほど売れていたのです。あらゆるものが不足する事態になりました。午前中にビールは売り切れ、入場時のリストバンドが足りない、仮設トイレの数も圧倒的に足りず・・・等々、お客さまに大変ご迷惑をおかけした結果になりました。ですが、イベント自体は高い評価を頂け、且つ少しだけ利益を残せました。BEAさんと利益を折半させていただき、改めて『僕は本気なんです。来年以降も開催させてください』とお願いしました。翌年以降はBEAさんと損益折半という形を取らせていただき、現在も続けてこられています。BEAさんに感謝しています」

インドア・フェス「Q」出演者/clammbon

「CIRCLE」は、ブッキングコンセプトがオルタナティブで面白い

―音楽好きの人たちの間ではとても評価の高いフェスだと聞いています。その理由の一つであるブッキングコンセプトについて教えてください。
是澤氏「まずは、自分が見たいものというのは根底にあります。次に存在が『オルタナティブ』であるということ。これは音楽のジャンルの話ではなく、個性的であり、時流を超えた音楽性、等々。あとは『お客さまに対して誠実であること』です。ビジネス的な視点はもちろん大事ですが、純粋に面白い!と思ってもらえるようなブッキングを心掛けています」


「大人が楽しめるイベント」を、インドア・フェス「Q」では実現したい

―2019年春に東京と神戸で開催が決定したインドア・フェス「Q」は、どのような位置付けにされようとしていますか?
是澤氏「個人的な話で恐縮ですが、昨年末に私は50歳になりました。昨年頭くらいから、還暦まで元気に働くと考えると、あと10年しかない。終活ですね。シンプルに『みんなに喜んでもらえるような仕事をしたいなぁ』と思いました。そこで、信頼している同業者の友人達に『僕は何をやったら良いと思う?』と聞いてみたのです。そうしたら『東京でもCIRCLEみたいなのやったら良いのでは?』と言う声をもらえて。『お客さまも楽しくて、出演者も楽しい。みんなが喜んでくれることを』と思い、イベントの全体構想を考えました。会場を決める上で、自分ができる範囲内でやるには、遠方での開催はイメージできませんでした。なので、主に東京都内近郊の公園を探しました。屋外で大きな音を出せる場所が何箇所かあるのですが、来年開催のオリンピックのため、整備や工事で残念ながら使用できない状態です。そこで屋内がひらめいたんです。『大人が楽しめるフェス』にしたかったので、天気も気にしなくていいし。色気があって、客席内で飲食ができるところ・・それは両国国技館しかない!と。関西の会場も同様に考えて、神戸のワールド記念ホールにしました。当日は、ステージ転換のタイミングがありますので、その時間も楽しんでもらえるようなイベントにできればと考えています」

インドア・フェス「Q」出演者/Hanaregumi

編集部の視点
「フェス」と言えば、屋外で且つフード店が軒を並べて多くの人があちこちのお店を巡りながら楽しむようなイメージがあるが、思い切って屋内を選択し、且つ飲食が可能な場所を選び、フェスそのものへ魅力を感じてもらおうという主催者の思いが感じられる内容であった。東京ならではの会場と中身の演出によって、一味ちがったインドアフェスを楽しめるのではないだろうか。


インドアフェス「Q」開催情報
記念すべきフェス第一回目の出演者は、GODIEGO、Cornelius、ハナレグミといった ベテラン勢から、ペトロールズ、never young beach、クラムボンというシーンを台頭する アーティストと、年代を問わずオルタナティブでポップな6組です。
2019年3月31日(日) 神戸・ワールド記念ホール、4月14日(日) 東京・両国国技館にて、新しいインドア・フェス「Q(キュー)」が開催されます。「Q」は、“CUE”『素晴らしい音楽に触れる「きっかけ」に』、“休”『最高の休日に』という思いが込められています。インドア・フェスという名の通り、会場内で飲食をしながら、最高の音楽をゆったりと快適に楽しんでいただきます。

『Q』公式サイト


有限会社トーン代表 是澤泰志
宮崎県出身。ミュージシャンのマネージメントを行う傍、コンサート制作、イベントやフェスの企画、運営、ブッキング等を行う。福岡のフェス「CIRCLE」主催。2019年、新インドア・フェス「Q」を企画、東京と神戸で開催する。