クリエイティブ経済誌 BUSINESS TIMELINE
Vol.28
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2017.10.16

空からクリエイティブ力を引き出す


BTL TOKYO vol.1でインタビューした脳科学者 澤口俊之によると、人間は青色を見たり、退屈な時間をあえて作ることでクリエイティブ力が向上すると いう。しかし、スマートフォンの普及によって、私たちは目に飛び込んでくる 情報量に一息つくことも難しくなった。そんな中で、座ると背もたれが傾き、空をぼーっと見上げさせてくれるベンチがある。デザインを手がけたNOSIGNER 代表 太刀川瑛弼氏にベンチに込められた思いを尋ねた。

デザインはあくまでも目的を達成するための手段

太刀川氏は常に、自分が関わるプロジェクトについて「良い未来仮説を描くことができるのか」という問いを大切にしているという。たとえ、クライアントがデザインイメージを持っていても、ときには抜本的にデザインの骨組みを変える。そんな、太刀川流の未来仮説の描き方とは。
太刀川氏「まず、プロジェクトに関わる全ステークホルダーの状況を整理し、クライアントの本当の目的は何なのか、それを達成するためにはどんなデザインが良いのかを深堀りして考えます。そして、目的を達成した先にある未来の仮説を立てておくのです。未来仮説を立てれば、確度の高い未来が見えるので、あとは戦略立ててデザインに落とすのみ。そうすると、クライアントも納得してくれることが多いですね」

人の「体験」に残るキャンティレバー構造

このベンチは、後ろ足のない「キャンティレバー」構造でできている。背もたれ部分が折れそうで折れないギリギリをキープするため、私たちは空を見上げることができる。もっとも、2人で座ったときに一番良い角度になるように設計されているそうだ。そこには太刀川氏のある仮説から見えたこだわりがあった。
太刀川氏「従来の広告は、お金がかかるわりに一定期間で消えてしまいます。そこで、人の『体験』に残る広告で社会との関係性を図ろうと考え、ある仮説を立てました。それは、ベンチ×夏×アイスを通して『青春』を思い出してもらおう、というもの。僕の中の裏テーマですが、男女二人で座ると最高に青春を感じてもらえるはずです(笑)。今回は、幸福学を研究している慶應義塾大学の前野先生にも監修いただき学術的にも根拠のある、上を向いて幸せになれるベンチになりました」

キャンティレバー構造

自分に火がつくのは、頭が空っぽのとき

今回のコンセプトである「no think なにも考えない、アタマを空っぽに 」を通して、どのようなメッセージを届けたいのか。
太刀川氏「『何も考えない時間』が人を元気にしてくれると思います。ぼーっとする時間自体には何の価値もないかもしれないけど、『それ』について考えないことに価値があるのです。その時間こそが自分に火をつけるイノベーションの源泉ではないでしょうか。例えば、炎も木と木の間に空間があって初めて燃えますよね。人間もドライブがかかるのは、心が空(くう)なとき。だからこそ、このベンチをきっかけに、大きな空を感じて何も考えない時間に向かうことを大切にしてほしいと思っています」

編集部の視点

スマートフォンなしでは人間関係や仕事も円滑に進まない時代。VR/ARなど・・・テクノロジーが加速する社会に逆行するかのようなこのアナログなベンチは、日々をめまぐるしく生きるビジネスパーソンにとって、短い時間で頭を空っぽにするきっかけを与えてくれる。忙しいときこそ、心を空にする時間を作ることもストレス社会で生きるためには必要なセルフマネジメントなのかもしれない。