クリエイティブ経済誌 BUSINESS TIMELINE
Vol.24
特集
2017.06.14

【落合陽一】#01_現代の魔法使いが創造する 「メディアアート」

落合陽一 論 THE「エモい」コンセプチュアル思考でエモーショナルを分析する
落合陽一

「現代の魔法使い」と称される落合陽一は「メディアアーティスト」という肩書きを持つ。ではメディアアートとは、どのように捉えるのが正しいのか。それは、とても幅広く奥深い視点が必要となる分野である。

シャボン膜に超音波を当てて膜を細かく振動させることで光を乱反射させスクリーンにする『コロイドディスプレイ』

発明家トーマス・エジソンをリスペクト

アーティストでもあり教育者でもあり、そして起業家でもある落合氏は、類稀な才能を発揮すると同時に努力家でもあり、多くの文献などから知識ベースを作る。歴史や偉人から学べることは多いが、その中でも落合氏がリスペクトするエジソンから得られる気づきとは何だったのか。
落合氏「僕の場合は、テクノロジーそのものをメディアとして表現する『モチーフのないモチーフ』をつくることを意識しています。でもメディアをアート表現することは結構難しい考え方だと思われがち。歴史上の人物では、エジソンが『メディアアーティスト』だと思っているんですが、彼は当時『映像装置は一人一個持つべき』だと言ってたんですよね。予言通り現代の皆さんはスマホで映像を見ていますよね。また、『音楽は体感するもの』という概念で蓄音機を音声コミュニケーションで使う   ものだと言っていたのですが、     今まさにそうなっています。しかし100年かかっているんです。実は、エジソンよりもリュミエール兄弟(フランスの映画発明者)が開発した壁に投射する映像装置の方が後発でヒットたんです。それは、ビジネス化した周囲の人たちが優秀だったのだと思います。ただ、そのときエジソン自身はメディアアーティストだったのではないかなと思うんです。なぜなら、既存メディアにはないものを創り社会へ問いかけるということを、ずっとやってきたからです。それは明らかに五感に纏わる文化の枠組みで、モチーフとコンテンツを持たないアートと言えるのではないか、その問いが僕の考えるメディアアートの始まりの一つです」

6個のボールが空中に静止し、浮遊した状態でゆっくり公転する『レビトロープ』

「三次元的な感覚」を表現したい

そこで、落合氏自身におけるメディアアーティストとしての活動が、具体的にどのような考えと思いで行われているのか聞いてみた。
落合氏「人間の新しい五感表現や感覚に訴えかけてくるような、もしくは新しい体感を生み出す仕組みそのものを創るジャンルがあっても良いのではないかと思っているんです。そのような仕組みを作ることで、どういう感覚になるのか考えてみる、ということを主にやっています。今のオーディオビジュアル(視聴覚装置)は、体感的には一次元か二次元なんです。それをどうにかしたくて、三次元に浮いて見えるもの(P3 のイメージ『レビトロープ』)を作ってみるというのが、僕の中で重要なメディアアート活動です。また、直接空中に音を出したり光で描いたりもしています」


「メディアアート」と日本文化の関係性

「アート」とは、ビジュアルイメージで表現されたものが一般的だろう。落合氏の場合、五感などの感覚へ訴えかけるものを表現する際に、さらに日本文化についても考えていることが分かった。
落合氏「日本には不思議な言葉がたくさんあって、僕の中で一番フェチズムな言葉が『幽玄』です。この言葉には『かすかでおぼろげで奥が深い』という意味がありますが、これは意味合い的に矛盾しているんです。世の中の美しいものが必ずしもおぼろげである必要はないんですよ。Googleで幽玄を検索してみると、ビジュアルイメージが多く出てきます。そのビジュアルイメージを入れた瞬間にメディアではなくただのコンテンツアートになってしまう。つまり、ビジュアルイメージを入れないで幽玄を表現するのは非常に難しいということです」
日本には、自然的なものと幾何学的なもの(寄木などのモチーフ)を組み合わせて表現する独特な文化がある。落合氏は、そういった日本文化を意識しながらも自身の表現において決めていることがある。
落合氏「『山紫水明』という言葉も好きです。片方が霞(かす)んでいてもう片方がはっきりしているようなものに美を感じます。それらを『日本的テクニウム(※1)』と呼んでいて、不確かなものの上にはっきりしたものを表現したいという思いがあるんです。しかし、僕の場合は日本的な文化や歴史を意識しながらも、なるべくその『日本的』な部分は取り除こうとしていて、逆にテクニウムは取り除かないようにしています。なので、ビジュアルのモチーフとして日本的なものは使わないのです」

(※1)生命における生態系と同等なものとしてテクノロジーの空間をテクニウムと定義

Profile

落合陽一 論 THE「エモい」コンセプチュアル思考でエモーショナルを分析する
落合陽一
落合陽一
1987年生、2015年東京大学学際情報学府博士課程修了、2015年より筑波大学図書館情報メディア系助教デジタルネイチャー研究室主宰。専門はCGH、HCI、VR、視覚聴覚触覚ディスプレイ、デジタルファブリケーション。著書に『魔法の世紀(Planets)』など。2015年米国WTNよりWorld Technology Award 2015,2016年Ars ElectronicaよりPrix Ars Electronica, EU(ヨーロッパ連合)よりSTARTS Prizeを受賞。2016年末から2017年まで自身初となる大規模個展『Image and Matter: Cyber Arts towards Digital Nature』をマレーシア・クアラルンプールで開催した。