クリエイティブ経済誌 BUSINESS TIMELINE
Vol.24
特集
2017.06.14

【考察】モノゴトの「原理」を知り 「本質」を見極める重要性|落合陽一

落合陽一 論 THE「エモい」コンセプチュアル思考でエモーショナルを分析する
落合陽一

BTL TOKYO編集長 兼 アーキテクト/倉本 麻衣
From the Editor in Chief


今回の落合陽一氏の取材で見えたことは、世の中が「何かおかしいな」と感じていることの原理を追究し、そこから本質を見極め発信すること。落合流の「エモい」には深い根拠があり、世の中のニーズが絶妙に汲み取られているからこそ支持者が増えているのだろう。
日本には「木を見て森を見ず」という諺がある。小さなことにとらわれすぎて全体を見通せないことの例えであるが、言い換えると原理原則を知らずに小さなことで判断していると、大きな間違いをおかす可能性があること。

そこで今回は「技術革新」の視点で考察していく。技術革新とは、技術進歩とともに経済へ導入し画期的に普及していくこと。技術革新だからということで「技術先行型」の動きをすると、なかなか上手くいかない。それは「木」を見ているに過ぎないため、「森=ニーズ」を見る必要がある。すなわち、ニーズがあるからこそ技術革新は起き、商品やサービスが市場で圧倒的な支持を得られることになる。代表的な事例として1970年代のBetamaxとVHSの家庭用ビデオテープレコーダーの規格競争がある。先行して販売したBetamaxに対してVHSは2年遅れで販売された。権利を独占しようとしたBetamaxに比べて、企業秘密にせず試作機を貸出して他メーカーも改良に参加出来るスタイルを取ったこと、また日本最大の小売店網を持つ資本所有者の説得に成功したことで、大きな市場が味方し「市場の標準化」になった。この逸話は、のちに映画化(『陽はまた昇る』)されたほどだ。この事例から学べるポイントは、「市場原理」を把握して受け入れられるための「本質」を見極め、実現に向けて行動に移せたからにつきる。

このところ「ブロックチェーン」を使ったビジネス事例が出てくるようになった。ブロックチェーンと言えば、金融分野としてビットコインとセットで語られることが多い。そこから一度切り離してブロックチェーンの原理を理解し、社会ニーズと掛け合わせることが技術革新に繋がるのではないか。ブロックチェーンは「偽造防止・暗号化技術」「分散型の台帳管理」「スマートコントラクト」「コンセンサスアルゴリズム」の4つの要素が組み合わさって実現される。分散型で高度なセキュリティが求められる分野は、金融に限らず他にもあるだろう。例えば、法律分野における技術革新の「リーガルテック」。その理由をクリエイティブな視点から考えると、日本のアニメや漫画などの知財管理が分かりやすい。創作に関わるクリエイターを守る部分において高い効果を発揮できるからだ。
モノゴトの原理を理解し、ニーズ、課題解決などに対しどのように技術を使えるか?を考えること。そこから創出されることが、結果的にビジネスへの近道になるのではないだろうか。


参考文献/ブロックチェーンレレボリューション【著】ドン・タプスコット+アレックス・タプスコット【訳】高橋瑠子

Profile

落合陽一 論 THE「エモい」コンセプチュアル思考でエモーショナルを分析する
落合陽一
落合陽一
1987年生、2015年東京大学学際情報学府博士課程修了、2015年より筑波大学図書館情報メディア系助教デジタルネイチャー研究室主宰。専門はCGH、HCI、VR、視覚聴覚触覚ディスプレイ、デジタルファブリケーション。著書に『魔法の世紀(Planets)』など。2015年米国WTNよりWorld Technology Award 2015,2016年Ars ElectronicaよりPrix Ars Electronica, EU(ヨーロッパ連合)よりSTARTS Prizeを受賞。2016年末から2017年まで自身初となる大規模個展『Image and Matter: Cyber Arts towards Digital Nature』をマレーシア・クアラルンプールで開催した。