クリエイティブ経済誌 BUSINESS TIMELINE
Vol.24
特集
2017.06.14

【WEB限定版】デジタルネイチャー時代へ向かって

落合陽一 論 THE「エモい」コンセプチュアル思考でエモーショナルを分析する
落合陽一

近代と現代の比較、そしてポスト近代から脱し現代に生きるためにコンピュテーショナルな世の中になるということ。落合氏はそれを『デジタルネイチャー』と言う。現代を手に入れた我々は、近未来に向かってどのように変化していくのか?

デジタルネイチャー時代に持つ表現形態とは?

コンピュータに求める速さ、映像に求める解像度の高さなど、人の感覚はテクノロジーに対して自分たちにとって自然かどうかを、随分前より求めているのではないか。それは、コンピュータが速くなっても、もっと速いものを。映像が綺麗に見えるようになると、より綺麗になるものをというように意識は変化していく。
落合氏「コンピュテーショナルになるということを僕は『デジタルネイチャー』と呼んでいます。“Super Nature Defined by Computation(超自然は数式によって定義される)”という意味で、ネイチャーよりも『超自然』なものなんです。そこには、機械学習や数式の果てに何かあるかもしれない。表現形態の情報として何を持っているかというと、唯一『解像度』だけは持っていると思うんです」
落合氏はデジタルネイチャーの考え方として、モノと人や環境と人といった人間と機械系の価値観が崩れ、よりシームレスな状態になるのではないかと創造する。
落合氏「デジタルネイチャー時代になっていく時、『相転移(※1)』がキーワードとなります。どうやってデジタル化するかとどうやって物質化するか。拡張人間と拡張情報空間。視聴覚をコンピュータで補完して、人間の筋肉機能を生かすということ、空間にある機能をどうやって視聴覚に補っていくかという2つのアプローチは今後、ものすごく発達します。頭にヘッドセットをつけることで、自分自身が話せない言語を扱えるようになる。接客の現場なんかだと、普通にコンビニで働けるようになります。その時代はすぐそこです。また、既にユーチューブなどは字幕を設定することが出来ますよね。近々、オートで字幕がつくようになると、世界中のコンテンツが相手になるため日本はもっと過酷なコンテンツ競争に巻き込まれていくのだろうと思います」


「量子コンピュータ」がもたらす未来

また、コンピュータは技術の進化によって物理の限界に到達し、機械を使える限界をむかえた。それらを解決するために考案された量子コンピュータがもたらす未来に待ち受けるものは何だろう。
落合氏「量子コンピュータが普及してくると、機械学習に対する問題が解きやすくなります。総当りの問題や暗号問題も解きやすくなり、分子構造の解析などにも役立ちます。そこで、創薬(医学、生物工学および薬学において薬剤を発見したり設計したりするプロセス)やがん治療薬といったところに大きなイノベーションが起きる可能性があります。結果、平均寿命が伸びるのです」


人口数変化における経済圏の変動

現在2017年。技術の更なる革新スピードによってむかえるといわれているシンギュラリティ(技術的特異点)。それは2040年代と言われているが、落合氏が世界の変化について予測してくれた。
落合氏「年表(※1)のように、2019年から2020年にインドの人口が中国を超えると言われています。試算段階ですが、色々な研究所が出しているデータだと2026年くらいには中国がアメリカの人口を抜きます。アメリカを抜いた中国が最も利用される国がインドになるはずなんです。すると、そこに経済圏が生まれることを意味します」
また、人口数の変化だけではなくエネルギーのあり方も早い段階で変わってくると言う。
落合氏「2025年ぐらいに人口の10%ぐらいの人が自動運転を使っているだろうと予想されます。ドイツの原子力発電所が停止するのが2020年以降にあるはずで、それ以降あらゆるところのエネルギーは原発ベースではなくなってくる可能性が高いです。2020年から2030年代にかけて自然エネルギーである太陽電池に変わっていくことで、あらゆるエネルギーよりも生産効率が高くなるのです。今後、中国やインドが更に強い国になると、ユーラシア、アジアが最も強い圏になって、その周りにアメリカや日本がくっついているみたいな世界像は、まだ誰も目前ではないんです。そういった世界でやっていくには、エンタメやアートなど高付加価値のものと捉えています」

(※1)熱力学や統計力学で使われる。ある系の相が別の相へ変わることを指す。例えば、気体から液体、気体から固体など変わること。

Profile

落合陽一 論 THE「エモい」コンセプチュアル思考でエモーショナルを分析する
落合陽一
落合陽一
1987年生、2015年東京大学学際情報学府博士課程修了、2015年より筑波大学図書館情報メディア系助教デジタルネイチャー研究室主宰。専門はCGH、HCI、VR、視覚聴覚触覚ディスプレイ、デジタルファブリケーション。著書に『魔法の世紀(Planets)』など。2015年米国WTNよりWorld Technology Award 2015,2016年Ars ElectronicaよりPrix Ars Electronica, EU(ヨーロッパ連合)よりSTARTS Prizeを受賞。2016年末から2017年まで自身初となる大規模個展『Image and Matter: Cyber Arts towards Digital Nature』をマレーシア・クアラルンプールで開催した。