クリエイティブ経済誌 BUSINESS TIMELINE
Vol.25
特集
2017.07.14

考察_エンターテインメントの飛躍には「ビジョン」が核にある

エンターテインメントというビジネスを解剖する
阿部サダヲ

BTL TOKYO編集長 兼 アーキテクト/倉本 麻衣
From the Editor in Chief

上演当初より、こけら落としの『髑髏城の七人』で連日ソールドアウトが続いているアジア初の新劇場「IHIステージアラウンド東京」は、どのような思いとプロセスで完成に至ったのか?について解剖してきた。今回は、エンターテインメントを一つの例として、ビジネス化する時に必要なもの、そしてビジネスを続けていくために必要なものが何かを考察したい。

没入型エンターテインメントと言われる新劇場建築プロジェクトは、0から立ち上げたプロジェクト。実現にもっていくための根底には「面白い、感動する、あっと驚く」という思いがあった。これこそが皆が思いを一つにできる「ビジョン」だろう。「ビジョン」を核として、企画、演目、キャスティング、脚本、演出、制作、プロモーションなどで「輪環の順(りんかんのじゅん)(※1)」が出来上がる。その輪が大きくなっていくには、外からの「経験・意見」と「新しいヒト・モノ・コト」を巻き込み、必要なものとそうでないものが判別されながら、必要なものが取り込まれていくことが重要ではないだろうか。
今回の新しい劇場づくりでポイントとなっているのは、「ビジョン」を大切にしながら「アクター」と「観客」の間で、これまでにない一体感が生まれ、ひとつのコンテンツが完成されることだ。『髑髏城の七人』という作品から生まれるアクターと観客のコミュニケーション。ビジネス的に最も重要なコンテンツ部分になる。先端技術を取り入れながら、コミュニケーションのあり方を追求したことで、エンターテインメントにおける新たな仕組みが具現化された。TVとも違い、これまでのライブや舞台とも違う新しい体感型のエンターテインメント。

取材したTBS事業局の吉田氏が、「予想もつかないような新しい可能性をまだまだ発見出来るのではないか」と期待感を持っているように、今後も新しいコンテンツが生まれ、新しいビジネスモデルがいくつも創出されてくることが推測出来る。「ビジョン」を持つことは、大きな輪環が出来上がっていくために必要なもの。また、プロジェクトを進めていく中で起こりうる迷いや、衝突の際に立ち止まって見直すべきものも「ビジョン」であり、何よりもビジネスにおける核になる。

(※1)a-b-c-aのサイクルを意識した式の書き方。英語では「サイクリック」と言い「循環的な」という意味。





Profile

エンターテインメントというビジネスを解剖する
阿部サダヲ
阿部サダヲ
1992年の舞台「冬の皮」より大人計画に参加。同年にはTVドラマ初出演も果たす。舞台、ドラマ、映画と幅広いフィールドで、コミカルな作品からシリアスな作品まで幅広く活躍している。07年には映画「舞妓 Haaaan!!!」で初主演を飾り、第 31 回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。11 年には民放ドラマ初主演となった「マルモのおきて」(CX)が社会的現象になるほどの人気を博した。また、パンクコントバンド “グループ魂”のボーカル・破壊としても活動している。近年の主な出演作に【ドラマ】「下剋上受験」 (17・TBS)、「おんな城主 直虎」(17・NHK)【映画】「殿、利息でござる!」(16)、「ジヌよさらば〜かむろば村へ〜」(15)、「寄生獣」シリーズ (14-15)、【舞台】「ゴーゴーボーイズ ゴーゴーヘブン」「逆鱗」(16)、 「八犬伝」「シダの群れ 第三弾 港の女歌手編」(13)など。劇団☆新感線には本作が4作目の参加となる。