クリエイティブ経済誌 BUSINESS TIMELINE
Vol.28
特集
2017.10.16

01 『泣き』より難しい『笑い』の取り方

『笑い』プレゼンテーションの考え方
安田 顕


舞台『スマートモテリーマン講座』は、2012年以来の5年ぶりの上演。この舞台の一捻りされているところは、キャストと観客の間に『架空の観客』が居る設定であること。すなわち、来場した観客は、「目には見えない観客に向かって演じるキャストたちを見る」という不思議な感覚を体験する。しかし、その空間は福田雄一の世界感であることを忘れてはならない。「時事ネタ」を交えた笑いを欠かさない演出の連続は、観る者の“クスり”を刺激する。福田雄一に欠かせない「笑い」は、どのようにして具現化されるのか。それは、主演をつとめる安田顕との対談から見えてくる。


『笑い』のツボは千差万別

「泣かせること」と「笑わせること」、比べるのは非常に難しいが、どちらかというと「笑わせる」ほうが難しいのではないか。福田雄一と安田顕が考える「笑いの演出」とはどのようなものなのか。
福田「泣きのツボって、実は数えると4つくらいしかないんですよ。でも、笑いのツボは千差万別なんです。それは人によってすごく違うので、会場の全員を笑わせる笑いって一体どういうものなのだろうと考え始めると、とても深いところにいってしまうんですよね。出来るだけ多くの人に笑って欲しいじゃないですか。そうすると、やはり僕ひとりの頭で考えるより、みんなの頭で考えた方が絶対に良いわけです。そう考えたときに安田さんには、僕にはない脳みそで色々なことを言ってもらえて、最終的にハッピーな仕上がりになることは間違いないんです」
安田「色々と演じさせて頂いていますけど、モテリーマンさんが役として凄いところは、圧倒的にコミュニケーション不足なところですね。あの人、一方通行でレスポンスを求めていない。時々、他の演者さんと二言ほど会話するんですが、それが会話になっていないんです」
福田「一方通行なんですが、設定としてはモテないサラリーマンを何百人か集めて喋っているわけじゃないですか。一番のボケは、『こんなに集めたモテないサラリーマンを前に間違ったことしか言わない』ということなんです。モテリーマンがコミュニケーションを取るべき相手は、講座を受けにきた架空のお客さん。結果的にこの人は、だれともコミュニケーションを取っていないことになる。そこが僕は一番面白いところだと思うんですよね」


挑戦的な舞台演出設定を思いつく

これまでにBTL TOKYOでは、いくつかの舞台演出に関するクリエイションを取り上げてきたが、キャストとオーディエンスの間に「架空の観客」を入れるという舞台演出の取材は初。一つ次元が増えることで非常に難しい演出になるように見えるが、福田雄一は何故、このような挑戦的な演出設定にしたのか。
福田「最初にこの舞台の話を頂いた時に、どうやるべきなんだろうと色々と考えました。『スマートモテリーマン講座』である以上は、『講座をやるべきだな』と思いついた時は、ちょっと嬉しかったのを覚えています(笑)」
安田「台本の時点で本当に面白いんです。例えば、『モテリーマンがセグウェイに乗って真ん中で止まってはいけない。行き過ぎてから戻ってくる』という設定があるんですが、それだけで面白くなるんです。以前、セグウェイに乗っている時に一度だけ頭を打ったことがあって、その時の福田さんの嬉しそうな顔は忘れられないです」
福田「アクシデントって、自分の意図したことと全く関係のない予想していないことが起こることじゃないですか。安田さんは、自分で意図してそこに向かって行くんですよ。向かっていった挙句のおまけとしてアクシデントも起こるから、『やんなくていいのにそこ』っていうことが多いんですよ(笑)」
安田「傍から見たら『そうなるよね』ってことが、僕は分かってないでやっていますからね(笑)」


台詞は書くけど、勝手に変形していく面白さ

舞台稽古は約1ヶ月前から始まるが、福田雄一は公演10日前まで役者へのダメ出しをしないという。
福田「僕は、公演10日前まで基本的には一切のダメ出しをしないんです。それをやり始めたのは、安田さんがモテリーマン講座の稽古中に『ちょっと遊ばしといてもらってもいいですか?』と言ってきたのがきっかけなんです。安田さんが遊んでいる20日間は、その時に生まれてくるものがすごく多い。モテリーマン講座に舞台としての深みは一切ないですから、どれだけ面白いものを多く作れるかが勝負になると考えると直前まで遊ばせる方法は合っていると思います」




■ 無料定期購読はこちらから →https://businesstimeline.jp/order/inquiry

Profile

『笑い』プレゼンテーションの考え方
安田 顕
安田 顕
演劇ユニット「TEAM NACS」メンバー。舞台、映画、ドラマなどを中心に全国的に活動。音楽にも造詣が深く、北海道では音楽番組のナレーションを放送開始から15年担当、雑誌ではアーティストと対談連載ページを持つ。実父とのやりとりを綴った『北海道室蘭市本町一丁目四十六番地』も発刊し、思いの丈を柔らかい文章で表現している。近年は映画・ドラマ・舞台など数々の話題作に出演、硬派な役から個性的な役まで幅広く演じている。
『笑い』プレゼンテーションの考え方
福田 雄一
安田 顕
1990年に劇団「ブラボーカンパニー」を旗揚げし、座長として全作品の構成・演出を手がける。放送作家として数多くの高視聴率番組を手がける一方、ドラマや映画の脚本やDVD作品の脚本・監督など、幅広いジャンルで活躍中。 また2007年よりマギーとの共同脚本・演出のユニット『U-1グランプリ』も立ち上げ好評を博す。 福田雄一の笑いは業界で大いに注目を浴び、舞台の脚本・演出でも引っ張りだこ。 ミュージカル「スパマロット」、舞台「THE 39 STEPS」はじめ、今年もミュージカル「ヤングフランケンシュタイン」、舞台「デストラップ」等が控えている。

Vol.28「『笑い』プレゼンテーションの考え方」関連記事