クリエイティブ経済誌 BUSINESS TIMELINE
Vol.29
特集
2017.11.16

02 MIKIKO流 クリエイション・プロセス

世界を魅了するクリエイションの源泉は「プロセス・マネジメント」にあり
MIKIKO


オーダーから振付までのプロセス
現在、数多くのアーティストやドラマ、CMなどの振付や演出を行うMIKIKOだが、果たしてその制作プロセスはどのように進んでいるのか。
MIKIKO「Perfumeはちょっと特例なのですが、打ち合わせなどもなく曲をもらってからは全部任せられているところがあります。他のアーティストやCM、舞台に関しては最初にプロデューサーや監督と打ち合わせをして、どういうイメージの振付を求めていらっしゃるかをお伺いします。その後、持ち帰ってここのスタジオで何度も曲を聴いて自分なりの譜割りを作って、そこから体を動かして相手に振りを入れながらさらに修正していくという工程で作っていきます」
では、振付する際にMIKIKOが一番大切にしていることは何か。
MIKIKO「『振付や演出が凄い』という印象が一番に来るのではなく、演者の印象が一番残るようにというのは意識しています。用意していた振りが馴染まない時は、ひたすら馴染むポイントを探したりもしますね。私の場合、大抵長く教えている人に振り付けることが多いので、その人のクセもわかっているから。初めて振り入れをする方の場合も最初にその方のことを把握してから振りを付けますね」
これらの制作に、どれ程の時間をかけるのか次のように話す。
MIKIKO「曲をもらってから振りを渡すまでの時間が短い時もあるので、まちまちなのですが、一番タイトな時は、曲をもらって次の日には振りを渡すということも実はよくあることなのです(笑)」

制作は作り始めた時の瞬発力が問われる
制作時間が短いことによるクオリティ担保は、どのように埋めているのか。
MIKIKO「考えている時間は長いですが、作り始めたらそんなに長くはかからないです。スタジオに来て体を動かすまでに時間をかけることはあるのですが、作り始めた時の瞬発力が割と問われるので、制作時間のあるなしはあまり関係ない気はします。長めに制作時間がある時は、早くから取り掛かるというよりも、瞬発力を出すための力を溜める時間にあてているという感じはありますね」

当たりの瞬間は、自分が「お客さんになれた時」
クリエイティブ活動をするなかで、世の中の反応や、ファンの反応など外からの評価は気になるものである。しかし、創り出す自分自身がどのような気持ちでいられるかも大切。MIKIKO自身が当たったと感じる時はどのような時か。
MIKIKO「自分がお客さんになれた瞬間です。気になるところがあると、ハラハラしながら見ているのですが、最終的に『誰が作ったんだろう』と思うくらい自分自身が純粋にお客さんとして見ることができた時は、すごく良かったと思いますね」

人を見て演出することに興奮する
MIKIKOは28歳の時に、ダンサーから振付や演出する側へ転身している。そして、その演出振付家としての才能を発揮することになるが、転身のきっかけをはっきりと覚えていると言う。
MIKIKO「『DRESS CODE』という舞台で、28歳の時に初めて一人でキャスティング、曲の選定、演出、振付を行ったんですが、それが終わった瞬間にはっきり思ったのです。『自分は踊ることじゃなくて表から人を見て演出することに興奮するんだ』ということを・・・」


全ての経験が2016年のリオオリンピック閉会式へ繫がる
MIKIKOがニューヨークへ行ったのは、ダンサーから演出家としての転身を決めた時である。そして、ニューヨークから帰ってきた頃から、Perfumeのダンスがちょっと変わっていて面白いと世の中から評価され始める。当時はまだ振付師としての側面は大きかったものの、演出家としての作品を残そうという思いは募り、2016年のリオオリンピック閉会式へと繫がる。
MIKIKO「たぶん、ニューヨークから帰ってきて舞台だけをやっていたら、演出方法は学べていなかったと思うのです。Perfumeの東京ドームのライブや、広島で大人数の振付を経てフォーメーションを勉強してきたことが全部繋がっているのだと感じています。ライブの演出だけをするのでは難しいだろうし、またステージングを知らない場合でも難しい。ちょうど、ダンスとテクノロジーをうまく掛け合わせて、ライブ中継を観ている人が面白い体験が出来るようにと、みんなで研究していた時でもありました。セレモニーでは、ライブ中継ならではの面白さを提供すると同時に、会場で見ている人たちをいかに沸かせるかという演出を考える際に、今までの経験が発揮できた感じはありましたね」
最近のエンターテインメントでは、テクノロジーを掛け合わせる演出をよく見るようになったが、MIKIKOは次のような核心的な考えを話してくれた。
MIKIKO「色々と長くやっていると飽きないように新しいものを求め始めると思うんです。Perfumeも、テクノロジーを取り入れることで彼女たちがすごい人に化けてみえるように魅せることが出来る。もちろんそれは無くてもよいもので、掛け合わせられる人というのも経験豊富な人しか難しくて、ぽっと出てきた人が新しいコトをやろうとしてテクノロジーを取り入れたとしても感動が薄かったりするんですよね。自分たちが操っているように見せられるか、逆にその中で踊らされているように見えるのかは、結構違うものだと思います」
様々な経験と試行錯誤から見出されたノウハウによって、『魅せる演出』を創り出すことが出来るのだろう。

「無意識から意識的」になったことで見えた自分自身のこと
独学からショービジネス本場のニューヨークであらゆるショーを観て、振付と演出の2つの軸を持てるようになったMIKIKOが、改めて自身のクリエイション・プロセスを振り返る。
MIKIKO「歌いながらダンスをするってどういうことなんだろう、マイクの使い方もよくわからない。そんな無知なゆえに面白いものが生まれていたというのはあるかもしれないです。変わったことをやろうとしていたわけではなく、知らなかったからそうなってしまったことも沢山あります。それらが世間から見ると、『初めて見た』という風になっているのだと思うのです。そういう意味では、独学だったことが良かったなと思うことはあります。ニューヨークへは一人きりで行ったので、自分について考える時間が多くありました。それまでは生徒のことや振付する相手のことを考える日々だったのですが、29歳から30歳になる時に初めて自分をしっかり見つめ直した時期でした。今まで無意識にやっていたことを、なんでこういう風にやっていたのだろうとか、本当に好きなことなのだろうかというところにぶち当たった一年半でした。意識的に考えることで、次のやるべきことが明確になったことは間違いないですし、全てが今に繋がっているのだと思います」

Profile

世界を魅了するクリエイションの源泉は「プロセス・マネジメント」にあり
MIKIKO
MIKIKO
演出振付家。ダンスカンパニー「ELEVENPLAY」主宰。Perfume, BABYMETALの振付・ライブ演出をはじめ、様々なMV・CM・舞台などの振付を行う。メディアアートのシーンでも国内外で評価が高く、 新しいテクノロジーをエンターテインメントに昇華させる技術を持つ演出家として、ジャンルを超えた様々なクリエイターとのコラボレーションを行っている。

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