クリエイティブ経済誌 BUSINESS TIMELINE
Vol.30
特集
2017.12.20

02 キーマンが加わりパワーアップする

スポーツで日本が蘇るR.projectのイノベーション
為末大


丹埜氏は、R.projectとして挑む「合宿事業」は、「固定概念によって見落とされている分野」の産業だと言う。もともと証券会社で働いていた時代に、ニセコへのリゾート投資によって雇用が生まれ、人の流れを作りながら不動産の価値が上がっていく様を目にして、社会性とビジネス性を両立させることに心動かされた。都心から近い素晴らしい自然とそこに余っている遊休施設。この2つの組み合わせの発想こそがR.projectの原型である。そして、現役を引退した為末氏と知り合うことになり、広報的役割を担う人材として迎え入れる。更にR.projectが大きくなるにつれ、現場オペレーションのスペシャリストが必要であると感じた丹埜氏は、当時ぐるなびに所属していた吉田氏と、為末氏の繋がりで知り合うことになり、迎え入れた。

引き受ける施設要件の明確なルール
現在、千葉県をはじめ山梨県の本栖湖、山中湖近くでの合宿施設や都内の外国人向けホステル事業などの施設を運営するR.project。どの施設もリノベーションを行ったのち運営に至っているが、日本には多くの遊休施設がある中でどのような基準で引き受ける施設を決定しているのか、そこにはビジネスを考える上で明確な答えがあった。
丹埜氏「僕らの場合、すごくビジネスが明確です。例えば、古民家をどうにか再生させたいとかではなく『合宿事業』が成り立つかの要件があるからです。まず『都心からの距離が2時間以内くら
い』、『車でのアクセスが良いこと』。そして『スポーツや研修をするために施設が整っていること』などの要件が挙げられます。そういった要件を満たしているにも関わらず、活用されていない施設を選んでいます。再生したいものがあってうまく合宿所にできないかなという建物視点ではなく、顧客視点でその施設で合宿事業を出来るかどうかという見方をしているんです」
合宿事業の一方で、外国人向けの宿泊施設として都内を中心にリノベーションオープンを行うホステル事業も開始。映画『男はつらいよ』の フーテンの寅さんの地、柴又に今年オープンしたばかりの「Shibamata FU-TEN」は、元々は葛飾区の旧職員寮。古き好き日本の雰囲気を残しながら、現代風にリノベーションを施した建物。
丹埜氏「柴又は日本国内では広く知られている地域でありながら、海外ではあまり知られていません。その理由が『寅さん』で有名になったから。世代的には国内の中高年の方で、若い世代や海外の人に知られていない、来る人が少ないというところにポテンシャルを感じました。すぐ近くに浅草など下町の良さが残る街があるのに、柴又はまだあまり知られていないんです。更に、この柴又周辺には宿泊施設も無かったこともあり、自治体の応援もあって僕たちが考えていることが実現出来るのではないかと思いました」


「熱量」を維持するマネジメント手法
施設を運営していくなかで重要なことは、地域とのコミュニケーション。丹埜氏からどのような形でオペレーション側へ引き継がれるのか。
丹埜氏「施設開拓する中で最初に接点を持つのは必然的に僕になるんですが、各地域で発見する潜在的魅力についてオペレーション側へバトンタッチしなくてはいけないわけです。先方は、僕が地域での取り組みにずっと携わってくれると思われていますが、僕は次のプロジェクトのために現場を離れてしまいます。その僕の思いを吉田さんがマネージャーにバトンタッチしてくれることで、熱量みたいなものが薄くならずに維持   でき、地元と良い関係を築ける。連携プレーが大切な部分になります」
熱量を下げず地域の人とのコミュニケーションを続ける秘訣はどこにあるのか。マネージャー教育について、ぐるなびの千数百名の営業組織を作り上げ統括した経験を持つ吉田氏ならではのマネジメント手法に迫る。
吉田氏「自然な形でその場所に居て街の人たちを目の前にすると感じるものがあります。人は相手を知ると必然的に気持ちが入ると思いますし、でも、なんといっても一番大切なことは、『なぜ、私たちはこの街に来たのか?』『何をなそうとしてここにきたのか?』というような本質的な理由を、マネージャーとともに腹落ちしていれば、自然と熱量は維持できます。そこをマネージャーと一緒に話して考えていくことが大事だと思っています。もともと前職も街に入り込んで飲食店の人たちや、商店街の人たちと一緒に何かをやっていくというのが好きだったんです。施設だけではなく街をどうしていけるかということをその地域の人たちとともに考えることの純粋な楽しさを一緒に体感する。街の人に相談したり、ご意見を頂いたり、一緒に何かを作っていくことは実際にとても楽しいですから」

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