クリエイティブ経済誌 BUSINESS TIMELINE
Vol.30
特集
2017.12.20

03 アジアを代表するスポーツ合宿場所へ

スポーツで日本が蘇るR.projectのイノベーション
為末大

月1回のマネージャー定例会議

「一瞬のイベント」から、長期的な可能性を見いだす
2020年東京オリンピック・パラリンピック開催まで3年を切った。「スポーツ合宿」という視点でR.projectは、どのような立ち位置を考えているのか。
丹埜氏「僕らのお客さんは、アマチュア団体が多いのでオリンピックによる直接的な接点は無いのですが、ただスポーツへの機運が高まるというのは間違いなく良い流れです。例えば自治体が遊休施設を持っている場合、世の中がオリンピックで盛り上がっていることでスポーツ場として活用しようと考えるわけで、ひとつの追い風になるんです。僕らが今、運営している多くの施設も近くには立派な運動公園とかがあって、そういうシチュエーションは僕らにとってビジネスチャンスになります。運動公園は国体あると、その1回の大会のために整備することが多いですが、国体が終わると維持管理費がすごくかかることで『どうしようかこれ』となり、我々が相談を受けたりします。オリンピックもそれの最たるものじゃないかと思っているので、都内が中心とはいえオリンピックのために準備した施設、地方で事前合宿を誘致するために整備された施設の再活用を、長い目で見るというのが問われてくるんじゃないかと思っています。一瞬のイベントが終わった時に、僕たちが次の担い手になれたらいいなと思いますね」


日本は、“する”スポーツ国として更に発展性がある
更に為末氏が、日本のスポーツマーケットを俯瞰して見たうえで、そのマーケットの盛り上げ方について次のような展開案を話す。
為末氏「スポーツのマーケットは、“観る”のか“する”のかに分かれますが、日本は多分スポーツを“する”国だと思うんです。ランニングの人口比では最も走る国民になり得るんじゃないかと考えています。各スポーツメーカーも“する”スポーツを支える産業も大きいですし、マラソン大会も日本中で行われています。更にスポーツを“する”国のポテンシャルが高いこととして、実は日本は出来ないスポーツがないくらいの地形を持っています。施設を建ててコーチを集められれば、世界的な合宿の集積地になり得るとも考えられます。高地トレーニングの合宿地として、標高3,000メートルのコロラドが有名ですが、本来は何もなかった場所で、山の上に建物を作ってコーチを集めたら合宿地になったんですよね。ニューヨークからコロラドへ合宿に行くことと、アジアから日本へ来ることを比較すると、後者の方が負荷は少ないわけです。今は、みんなスイスのサンモリッツとかに行っているんですよ。そういう意味でいうと、日本はアジア圏内の合宿集積地になれるんじゃないかと思いますね」
日本には、標高3,000メートル級の山岳がいくつもある。そして、フルマラソンを何度も経験している市民ランナーがサブ4、サブ3などタイムアップを目指す練習のひとつとして、トレイルランへ挑戦する流れも出ている。このようにスポーツをする国として   ポテンシャルが高いなかで、R.projectとしてもスポーツマーケットに対しての想像が膨らむ。
為末氏「以前、安いということで中国は大連のアルビンで合宿していたんです。でも、山の上の方まで空気が汚れていて咳き込むんですよ。そういった中で、日本の山は空気も澄んでいてきれいですし、海外と比べても合宿価格の差がなくなってきていることがあるので、岐阜の高い山あたりが良いのではないかと思っています。例えば、毎年夏になると中国人とインド人の子供のサッカーチームが試合するみたいな、多言語化もありえるんじゃないかとそういった期待もあります」
丹埜氏「合宿地として『海外から呼べる』ということは、日本が気づいていないことかもしれないですね。僕自身もマーケットを国内でしか見ていなかったんですが、そうすると子供から大学生がメインなので、基本的には増えないマーケットなんです。ただ、対象をアジア圏まで拡げて見ることで需要が大きくなるので、事業展開の可能性は考えられます。これまで移動コストがすごくかかっていたことが、LCCの普及でコストを抑えることができ、またアジアの人たちが経済的に豊かになってきていることを考えると、日本として『アジアから呼び込める環境がある』ということに意識を向ける必要が出てきます。実際、今年の12月にインドネシアから長期でアンダー16のサッカー選手たちが合宿にくるというのも出てきていますが、こういった話は2、3年前まではほとんどありませんでしたから」

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