クリエイティブ経済誌 BUSINESS TIMELINE
Vol.30
特集
2017.12.20

04 教育で必要な「Sense of why(なぜ、それを学ぶのか)」

スポーツで日本が蘇るR.projectのイノベーション
為末大


2019年に向けて、R.projectは教育事業高校教育の開始準備をしている。特に、コミュニケーション、言語、プロジェクトマネジメント、テクノロジー、アートなどの実社会で役立てられるカリキュラムを考えている。何故、それらのカリキュラムが必要なのか、丹埜氏と為末氏の教育論から本質が見えてくる。

「パフォーマンス=トレーニング」の考え方
丹埜氏は日本株トレーダーとして金融業界に精通しながらも、スカッシュの日本代表選手として世界選手権への出場経験があるスポーツマン。為末氏は説明するまでもなくシドニー、アテネ、北京オリンピック3大会に連続出場したスプリント競技のメダリスト。スポーツマンの2人ならではの熱くも柔軟性のある教育への想いが見えてくる。
丹埜氏「昔から『社会で生きていくために学校で学ぶことがどう生かされるのか』ということを真剣に考えていまして、教育に関する課題意識がすごくありました。テスト用の勉強を学ぶことでどこに生かされるのだろうと、周りを見渡してみてもみんなほぼ理解できていない気がしていました。もちろん受験に役立つというのはありますが、大人になった時に、その視点では人は評価されていないし、人を採用する立場になっても高校生の頃にどれくらいの偏差値だったのかということは採用基準に大きく左右しません。それよりも人当たりの良さや、能動的に動けるとか、チームワークをどのように図れるかというような観点が重要だったりします。学校と社会との間にすごくギャップがあることに疑問を持っていたのですが、そうはいっても学校教育へ一石を投じるというのは難しい。しかし、最近は色々な形態の学校が出てきているのを見て、やり方は色々あることが分かり始めて、それでチャレンジしたいなと思ったのです」
為末氏「この教育の話でも倫ちゃんとぼくの考えに一番近い点は、『パフォーマンスはトレーニングである』ということなんです。トレーニングをしている間に、パフォーマンスをする舞台は変化してしまっていることに気づかず、前のトレーニングが行われているようなことが教育で起こっているんです。学んでからやるというのではなく、やりながら学ぶしかないよねと思います」
丹埜氏「社会に出た時に必要とされるような能力を身につけてほしいと思っています。どのような職種に就いたとしても、ここで身につけた能力や経験、考え方は役立つと考えています。例えばアートは直接的に役立つというよりも『アーティスティックな考え方』、『0からどんな風にデザインするか』という思考力こそが、どのような人にも間接的に活きてくる   能力だと考えています。現在、330万人くらいの学生が日本の私立と公立の高校に通っていますが、そこの授業料だけで1兆2,000億円くらいになる。でも、多くの学校がテストのために勉強して、テストをした先からその内容を忘れて、大学に行っても覚えた知識はほぼ忘れているというのが現実なんです。『今、因数分解をやってないといけないからやっている』という状況です。しかし本来、因数分解自体ではなく、それよりもモノゴトを組み立てていく考え方を学ぶことの方が大事だろうと考えています。僕たちが今やろうとしている教育は、これまでと違うやり方なので不安な要素もあるかもしれません。でも、多くの高校で行っている教育で、長期的に残ることがほぼ0に近いということに気づいて欲しいのです」
為末氏「僕自身、今もよく覚えているんですが、中学1年の時に陸上の幅跳びで『なぜ、遠くまで飛べるやつと飛べないやつがいるのか』というのを先生に質問したことがありました。その時、これを読んでおけと『物理と陸上』という本を渡されたんです。我々の体はどのような法則で動いているのかということが書かれてあって、勉強しようという気になったんですよ。僕の場合はそうやって陸上競技の体験を通じて世の中を理解するということを学べました。ただ、多くのスポーツ選手は自分自身に『スポーツ選手』という定義づけをし過ぎていて、セカンドキャリアへ進むにあたりそこが足かせになっている部分が多くあるように思うんです。『スポーツを通してなにをしているか』ということを考えることが大事。どの世界においても、もっと上位概念に思考をもっていくことで、世界がぐっと拡がるように思います」

寮/Sunset Beach House

果たして学校は本当に必要なのか?
R.projectが名付けた「SOY ACADEMY」。そのネーミングに込めた想いとは何か。
丹埜氏「“SOY”とはSense of why(センスオブホワイ)の略で造語なんですが、『どうしてだろう?』『そもそもなんでこれを学んでいるのだろう?』という疑問を常に持って欲しいと思っています」
為末氏「学校は果たして残るのかという疑問に近いですね。つまり、学校という機能は今後、社会のなかに残っていくんだろうかという。もしかすると、私塾に戻っていくんじゃないかなというのもありますし、学年と年齢を合わせるような固定概念も今後、考えていかないといけないように思います」

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