クリエイティブ経済誌 BUSINESS TIMELINE
Vol.31
特集
2018.01.15

01 はじまりは「最もエコでないコピーライター」

伝え方はセンスではなく、技術です
佐々木圭一


ロボットが一番のコミュニケーション相手だった
現在、国内外51以上のアワードを受賞している佐々木圭一。もともとコミュニケーションが得意ではないという佐々木氏は、何がきっかけでコピーライターの道へ進むことになったのか。話は、幼少時代へ遡る。
佐々木圭一「幼少の頃から引っ越しが続いたこともあって、友達の輪ができている中へ入っていくことが苦手でした。学校の休み時間は一番嫌いで、理由は人と話さなければいけないから。勉強していたほうが楽だと感じていたのを覚えています。その後、大学では機械工学を専攻していたのですが、就職活動の時に『どんな人生にしたいか』を改めて考える時間がありました。『ロボットとこのままコミュニケーションし続ける人生はまずい』と思い、そこで人ともっとコミュニケーションを取れるように変わりたいと思ったのです。そして、コミュニケーションが上手になれるような会社に入りたいと考えていくなかで、広告代理店がそれに相応しいということが分かったのです。就職活動時は、マルチメディア元年と言われた1996年。windows95が日本に上陸した年で、マルチメディアが全てのメディアを圧巻しているなかで、テレビがなくなると言われていた時代でした」

1日に400枚書いても、「ボツ」になる
そして佐々木氏は、広告代理店へ就職。しかし、配属先は想像とは全く違う場所であった。
佐々木圭一「もともと僕は理系オタクだったので、ホームページを作ることは出来たのです。その頃、学生でホームページを作れる人がほとんどいませんでした。それもあってスムーズに就職ができ、そういったスキルが今後、活かされると考えられていた『コピーライター』が配属先でした。しかし、右も左もわからない状態で『コピーを書け』と言われてもなかなか書けないわけです。1日に400枚くらい書くことが毎日続いて、書いても書いても全部ボツになっていました。紙を無駄にしてしまうことから、『最もエコでないコピーライター』というニックネームを付けられたほどです」

しかし、コトバづくりを繰り返すなかで、佐々木氏らしいやり方で、コピーライターになるためのひとつの糸口を見つけることになる。
佐々木圭一「なんとかしなくてはいけないと思っていたんですが、どうすればよいか分からない。ただ、世の中に存在している自分が良いなと思ったコトバをノートに書くということはしていました。それで、ある時そのノートを見返してみると、『このコトバとこのコトバは似ているな』と感じたことがあって、もしかするとそこに『コトバの法則』のようなものがあるのではないかと思うようになったのです」
コトバをひとつのデータとして例えるならば、世の中にあるデータを集めてそこから法則を見つける。佐々木氏自身も、コトバづくりはセンスだと思い込んでいたところから、コトバの見方を変えたことによってセンスではないものがあることに気づく。


言いたいコトバと反対の意味を持つコトバが並ぶ
多くの名言やコピーなど、コトバに法則があるかもしれないという仮説を検証していくなかで、伝えたいコトバはよりパワフルに、そしてドラマティックになるということに佐々木氏は気づく。
佐々木圭一「ノートに書いていたコトバを見返していくうちに、言いたいコトバと反対のコトバを手前に入れることにより、下げてから上げるとコトバがぐっとパワフルになっていくことに気づきました。世の中の人気プロダクトのコピーを見てみると、全て法則にすることが出来る。例えば、資生堂のキャッチコピー『一瞬も一生も美しく』はすごく素敵なコピーだと思います。これも、『一瞬と一生』という正反対のものを組み合わせることによって出来ます。また、ビールの歴史を変えたアサヒスーパードライのコピーは、『コクがあるのにキレがある』。コクとキレは正反対のコトバなんですよね。世の中にある名言と言われるものの多くがこの技術で出来ています。そこに気づくまでは、コトバづくりはセンスだと思っていたのですが、この法則が分かればヒラメキは無くても作れると気づいたのです」

「法則」を身に付ければ、誰でもコトバは作れる
クリエイティブ活動は、「ひらめくこと」が出来るかどうかが大切と言われる場合もある。しかし、佐々木氏はコピー制作においてひらめくことは出来なかったと言う。新人時代に、「最もエコでないコピーライター」と言われていたところから、権威ある広告賞を何度も受賞できるコピーライターへ、いかにしてなれたのか。
佐々木圭一「意識して法則を見つけようとは思っていなかったんですが、簡単に言うと『ひらめかなかった』んです。森林の中で考えるとひらめくのかなと思って森の方へ出かけてみてもひらめかないし、海を観ながらだったらひらめくかなと思い、テトラポットに登って考えてもひらめかなかった。なんとかならないかなと思っていた時に、コトバ合わせの共通点を見つけられたのは、理屈をもとに法則を見つけるということが、学生の頃から習慣化されていたからかもしれないです。もちろん、ひらめくことが出来る人もいるし、天才もいます。でも皆がみんな天才のように出来るわけではない。実際、僕もそうですし。でも、法則が分かれば誰でもいいコトバが作れちゃうのです」
その発見があってからは、世界的な広告賞であるカンヌライオンズを何度も受賞出来るコピーライターになれたという。

Profile

伝え方はセンスではなく、技術です
佐々木圭一
佐々木圭一
上智大学大学院卒業。株式会社博報堂に新卒入社。のちに書籍「スティーブ・ジョブス」に登場する伝説のクリエイター、リー・クロウのもと米国で2年間インターナショナルな仕事に従事。2014年、クリエイティブ ブティック「ウゴカス」を設立。日本のコミュニケーション能力をベースアップさせることをライフワークとしている。企業向けの『伝え方が9割』講演は、過去200社以上で実施され、高い評価を受けている。