クリエイティブ経済誌 BUSINESS TIMELINE
Vol.31
特集
2018.01.15

03 コミュニケーションは 変化し続けている

伝え方はセンスではなく、技術です
佐々木圭一

人々の生活の中は、コミュニケーションに溢れている。ここでは、ビジネスシーンでよくあるプレゼンテーションでのクライアントとベンダーの関係、上司と部下の関係の伝わるためのコミュニケーションについて佐々木氏が深く考察する。

日本人に欠けている「プレゼン力」は、そもそも習っていないから
佐々木氏は30代の頃にアメリカ留学の経験がある。アメリカでは「何故、日本人がプレゼン下手なのか」について、留学生活を通じて分かったことがある。
佐々木圭一「アメリカの人はプレゼンテーションが上手いですよね。アメリカへ行った時に、何故だろうと色々と探っていくと、アメリカでは伝え方の教育がありました。小学校3年生から伝え方の授業があり、中学になると3つ(ディスカッション、ジャーナリズム、国語)に増えるのです。その理由として、アメリカは色々な人種が集まっていて、それぞれの宗教、文化、習慣があります。喧嘩が起こると収拾がつかなくなるそうです。そういう時、考え方が違う相手にどういう風に自分の考えを伝えるのが良いのかというのが、国としてもともと必要だったということがあるのでしょうね。彼らは、そういった授業を受けたことによって、自分の意見をどう述べるかの手法を身につけられ、社会に出てもそれが普通に行動できるのです。しかし、日本では伝え方に関する授業がないですから、知らないままに社会へ出て、『あなたの考えていることを述べなさい』と言われても出来ない。何故ならやったことがないからなのです」

そもそも、伝え方について意識する必要のなかった島国の日本だが、世界と対等にコミュニケーションを図らなければいけない現代では、これまでの固定観念を捨て、伝え方の技術を習得する必要があると佐々木氏は言う。
佐々木圭一「ただ、日本人は習得する能力は非常に優れていると思います。様々な製品や事象に関する理屈(技術)が理解出来ると、それらを身につけるスピードは早く、効果も出せる。今まで知られていなかった『伝え方の技術』も、身につけようと思ったら意外に簡単に身に付くでしょうね。改善点としては『伝え方はセンスである』と思ってしまっている固定観念を捨てることです。良いモノを作っているにも関わらず、評価されていない企業や製品は多くあると思います。日本には既に世界に誇れる技術と製品とサービスがあるので、技術を持っている企業こそが、伝え方の技術を持つと、世界からの評価が変わってくるのではないでしょうか」

「オーダーミス」が世の中には溢れている
佐々木氏は、競合プレゼンで16連勝している。その理由を次のように話す。
佐々木圭一「一言でいうなら『クライアントの話をきちんと聞く』ということ。皆、クライアントの話はきちんと聞いていると言うかもしれませんが、紐解いていくと実はそうでない場合が多いです。例えば『ペペロンチーノが欲しいと言っているお客様に、ボンゴレの方が美味しいと思ったんで持ってきました』という人が意外にいるということです。その場合、オーダーミスだよねと思うんです。例として料理のオーダーだと分かりやすいですが、広告の業界では料理のように明確な答えがないがゆえに、意外と多くオーダーミスのようなことが起こっているんじゃないかなと思います」
これはすなわちオーダーメニュー は変えてはならず、レシピをどうするかについて深く考え提案する必要があるということだろう。


「何故、伝わらないのか?」
更に、クライアントとの関係だけではなく、身近なところでいう「上司と部下」の関係では時代の変化に伴ったコミュニケーションの技術があると佐々木氏は言う。
佐々木圭一「どの時代にもある『最近の若者は』というワード。これは、時代の変化とともにコミュニケーションも変わり続けていることを、理解出来ていないことから出てくるものです。例えば、こんなことがありました。新人の遅刻癖について社長が『やる気がないなら帰れ』と言ったところ、新人は本当に帰ってしまった。社長はそんなつもりで言ったのではなく、自分自身が若い頃に上司から言われて心を入れ替えたことを思い出して、そのように言ったのです。では、今の時代の正解はなんと言うべきだったでしょうか?『遅刻みたいなつまらないことで評価が下がるのはもったいないよ』。これには2つの技術が入っていて、『評価が下がるというのが、嫌いなことの回避を促す』ことと、『もったいないということで、認められたい欲を満たす』ことで、遅刻しないほうが良いと思うようになるというものです」
伝え方によって、若者の行動が変われば上司への印象も変わる。若者が帰ってしまった場合の上司への印象はおそらくパワハラとして捉えられる。しかし、後者の言い方であれば「親身になってくれる上司」という理解になるだろうと佐々木氏は言う。

技術を持っている人こそ「伝え方=技術」であることを知って欲しい
これまでの流れで、「誰に何をどのように伝えるか」ということには技術(理屈)があり、その技術を身につけられるかどうかによって人が動くかどうかが決まってくるということではないか。これまで日本での意識がなかった「伝え方の技術」について、佐々木氏は最後にこのように締めくくる。
佐々木圭一「良い商品や技術を持っている人は、それを伝えるということをあまり考えたことがない人も多いです。そこで損をしていることは実はすごくあって、技術を持っている人こそ伝え方の技術を学んでもらえるとビジネスが更に上手くいくと思っています」

Profile

伝え方はセンスではなく、技術です
佐々木圭一
佐々木圭一
上智大学大学院卒業。株式会社博報堂に新卒入社。のちに書籍「スティーブ・ジョブス」に登場する伝説のクリエイター、リー・クロウのもと米国で2年間インターナショナルな仕事に従事。2014年、クリエイティブ ブティック「ウゴカス」を設立。日本のコミュニケーション能力をベースアップさせることをライフワークとしている。企業向けの『伝え方が9割』講演は、過去200社以上で実施され、高い評価を受けている。