クリエイティブ経済誌 BUSINESS TIMELINE
Vol.36
特集
2018.06.14

森本氏から見えてくる近未来の組織と個の関係性

企画はおもてなし
森本 千絵

ビジネスタイムライン編集長 /佐藤 元紀
From the Editor in Chief

企業体としての組織の考え方が大きく変容している現代社会において、森本氏の仕事に対するスタンスには、クリエイターのみならず、企業や個人それぞれにも吸収すべき点が多々ある。
昨今、欧米ではホラクラシーという管理職などの役職が存在せず、上下関係を取り除いたフラットな近未来型組織を採用する企業が増え始めている。ホラクラシーは段階的組織構造であるヒエラルキーと対比される組織体である。
管理職が不在で、役割で意思決定が出来る、この組織体は個々がプロフェッショナルであることが前提条件といえる。森本氏の働き方や考え方には、プロフェッショナル人材になるためのアプローチ手法が集約されていると感じた。
アートディレクターという仕事はプロジェクトの行方を左右する役割として、非常に大きなものを背負っている。「他社の5倍の企画案をつくる」「おもてなしという配慮」「企画書を旅のしおりと置き、他人事にならない仕事の仕組化」「プライドが原動力」…など、森本氏から出てくる言葉の中にある思考には、私たちがプロフェッショナルとして近未来の組織の中でもサバイブしていける術が多く秘められているのではないか。それらの言葉や思考を紡いで1つの考え方を表すとしたら、それは「依存しない生き方」と要約できるのではないだろうか。
もちろん、人間はひとりでは生きていけないし、「依存しない」という強烈な言葉は人との関わりが希薄化する意味合いでもない。むしろその逆である。単純な作業などはロボットなどに置き換わってしまうだろう、今後の組織や社会の中で、個同士がそれぞれ持つ「強み」や「能力」をシェアしながら、コミュニケーションを進めていくという助け合いの考え方が、「依存しない生き方」である。
近い未来、プロフェッショナル人材として、ビジネスの世界をサバイブしていくためには、個は「依存しない生き方」でコミュニティやプロジェクトの中で持ち寄れる能力を育成する必要があり、組織は個々を活かし、目的達成へと導く環境を整備することが必要となってくるのではないか。

Profile

企画はおもてなし
森本 千絵
森本 千絵
株式会社goen°主宰。コミュニケーションディレクター・アートディレクター。武蔵野美術大学客員教授。1999年武蔵野美術大学卒業後、博報堂入社。ʼ06年史上最年少でADC会員となる。ʼ07年goen°設立。NHK大河ドラマ「江」、朝の連続テレビドラマ小説「てっぱん」「半分、⻘い。」のタイトルワークをはじめ、Canon、KIRINなどの企業広告、松任谷由実、Mr.Childrenのアートワーク、映画・舞台の美術、動物園や保育園の空間ディレクションなど活動は多岐に渡る。11年サントリー「歌のリレー」でADCグランプリ初受賞。伊丹十三賞、日本建築学会賞、日経ウーマンオブザイヤー2012など多数受賞。