クリエイティブ経済誌 BUSINESS TIMELINE
Vol.38
特集
2018.08.22

どんな時代でも大事なのは音楽で感情を揺さぶれるかどうか

ヒット曲を作れる「サラリーマン型ミュージシャン」という仕事
田中 隼人


華やかな音楽業界に見えつつも、BtoBの仕事であると言い切る田中氏は、何故プロデューサーを目指すことになったのか。
田中氏「高校生の時、プロデューサーとして小室哲哉さんやつんく♂さんが活躍されていて、メディアに出ていたのですが、その頃は音楽を作れるとめっちゃお金持ちになれるという思い込みがありました。今思えばすごく不純な動機だったんですが、単純にやってみたいなと思ったんですよね。その時は、こんなにCDが売れなくなるとは思っていなかったんですが。僕は、一人っ子だったこともあって、家で一人こっそり遊ぶことが得意だったんです。当時は今みたいに情報源が無く、数少ない業界系の雑誌を読んで全て本当のことだと思い込んで機材に関して学びました。少しずつ機材を揃えていって、随分バリエーションが増えたところで仕事になった感じです。昔から一つ興味が湧くと、とことん深掘りしてその道のプロになれるくらい調べるタイプですね」

今の新人作曲家は音楽を発信する場所が多い
趣味で音楽を学んで機材を集めていたところから、ひとつの行動に出たことでプロデューサーの道が拓けることになる。
田中氏「デモテープを聞いてもらえる機会が多かったのもあって、そこからスタジオに呼ばれてアレンジの仕事依頼を受けていました。そしてデモテープを持っていった時に、3万円もらって帰るみたいなバイト的なやり方をしていたんです」
そういったアルバイトをしながら人と人との関係性を積み重ねて今に至る。今の音楽を取り巻く環境と作曲家を目指す若手ミュージシャンの関係性について次のように話す。
田中氏「最近は、YouTubeやSpotifyなどがあるので新人作曲家の間口は広まっていると思うんです。世の中へ一瞬にして届けることができるので、言うなれば誰でもミュージシャンになれます。ですが、単価が下がっているのも事実で、それで生計を立てるというのは厳しいですかね」

答えのない仕事であるということ
音楽のマネタイズが厳しい現代ではあるものの、それは音楽のニーズが無くなったというわけではない。新たな音楽ビジネスが立ち上がる中で、田中氏が考える次の一手とはどのようなことなのか。
田中氏「本当のことは誰にもわからないと思うんですが、生活シーンの中で音楽を聴きたい時に気持ちが高まったり楽しくなったり、感情の揺さぶりみたいなものが音楽の中に必要とされているのかなと思うんです。味気ない曲が増えているように思う今だからこそ、音楽できちんと感情を揺さぶられるというのはとても大事なことだと思います。特にJポップでは歌詞を見る日本人は多いんですよね。悲しい曲でも、それはそれで気持ちを重ねられるか?寄り添えるか?ということが必要だと思っています」

Profile

ヒット曲を作れる「サラリーマン型ミュージシャン」という仕事
田中 隼人
田中 隼人
クラブサウンドとJPOPのバランスが特徴のサウンドデザインと、伊藤由奈「Precious」などに代表される美しいメロディが真骨頂のクリエイター。2005年よりagehaspringsに加入し、FUNKY MONKEY BABYS、YUKI、May J.、flumpoolなど様々なアーティストの作曲・プロデュースを手掛ける。CM音楽、クラブ、VOCALOIDなどあらゆるシーンで音楽を作り続ける傍ら、テレビ・ラジオ・雑誌等でも活躍し、MBS「関西発!才能発掘TV マンモスター+ 」、テレビ朝日「今夜、誕生!音楽チャンプ」などでレギュラー出演を果たす。2017年には米津玄師と共同でアレンジを手掛けたDAOKO × 米津玄師「打上花火」が大ヒットを記録するなど、第一線で活躍し続けている。近年では任天堂(「Nintendo Switch」TVCM)、花王(「ビオレBioré」TVCM)、Honda(「GRACE」TVCM)をはじめとするCM音楽も数多く手掛けている。