クリエイティブ経済誌 BUSINESS TIMELINE
Vol.40
特集
2018.10.12

02 「舞台で自分を表現」するところから、「紙の上で筆を舞う」ところへ【岡西佑奈】

書道を現代アートへ昇華 曲線美のインスピレーションは「鮫」
岡西 佑奈

青曲
Blue Songs


自分の大好きな「鮫」と、長い歴史と伝統を持つ書道の「書技」を掛け合わせて独自のアート表現へと昇華させた岡西。そこに行き着くまでの彼女の葛藤と試行錯誤について迫る。
岡西「7歳から書を始めたのですが、師匠が亡くなったことがきっかけで書から離れている時期がありました。その時、すごく引っ込み思案な性格だったにも関わらず舞台に憧れて、『自分になり変わって表現できる』のであれば挑戦したいなと思い、舞台の世界へ飛び込んだんです。実際にやってみて気づいたことは、舞台って稽古の後に皆で食事したりするのですが、自分は一緒に行かずに自炊して一人で食べていて、なかなか輪に入っていけなくて女優には向いてないかもしれないと思い始めたんです。舞台で表現することは好きだけど、人とコミュニケーションがうまく取れなくて悩んでいたんですよね。そんな時に、たまたま家族ぐるみで仲良くさせてもらっていたご夫婦の方から、実家に貼ってあった私の書を『いいね。また書いたら』と言ってもらったんです。自分のなかにその言葉がすっと入ってきて、押入れの奥にしまいこんでいた書道具を久しぶりに出して書き始めたところ、どうしようも出来ない感情が溢れ出てきて、書家になろうと思ったのがきっかけになります」
人とコミュニケーションをはかることに苦手意識がありながらも、本気で書家を目指した岡西は、書家としての自分を表現できる場所を増やすために動くなかで、ある気づきを得る。
岡西「書家としての名刺を作ったところから始まりました。それを持って勇気をだして起業家たちの集まりに参加したり、名刺交換をしたり。最初は書家としてどのように仕事をすれば良いか分からなかったのですが、街を歩けば、看板や商品などいたるところに筆文字があって『あらゆる生活の一部に書がある』ことに気づきました。そういった書が役立てる仕事へ繫がるように名刺を配っていったんです。そして最初のお仕事、野球選手のホームページのタイトル題字の話をいただいたときは本当に嬉しかったです」


現代アートとして海外へ挑戦
日本での地道な活動を続けながら、同時に海外でも認知を広げる岡西が考える今後の展開を聞いてみた。海外でも、書を受け入れられるポテンシャルが高いことが分かる。
岡西「私は‘書は人なり’というように、書は自分自身を映し出す心の鏡だと感じています。心象そのものが描かれるということ、つまり私にとっては表現という意味でアートと全く変わりはないので、書をアートとして国内のみならず海外でも挑戦していきたいと思っています。今は台湾や中国などアジアからチャンスをいただいているので、一つ一つに全力で臨んで自分の想いが少しでも届けられたらいいなと。欧米でも個展ができたらいいですね。海外では書の受け取り方も印象的です。欧米の人は、書で描いた『愛』を『Oh LOVE!』と、漢字を知らなくても感情で受け取ってくれて、私独自の書体の作品が彼らの洋風の家に飾られると、まさに書がアートになっているんですよね。書も、ひらがなの曲線のありようや漢字の語源に遡って自分流に表現することで、書がアートとなって国の境なく伝えていきたいと思っています」
最後に、岡西自身が書を表現するなかで一番好きな言葉について次のように話してくれた。
岡西「私は、あるがままの『儘(まま)』という言葉が一番好きな言葉です。これは母が『ありのままのあなたが素敵』と言ってくれていることが大きいのかもしれません。この漢字の由来は、人偏に皿の上を筆で空にしていくことで、‘無’にしていくという意味を私らしく表現しています。今後も書の可能性をどんどん追求して、書の新たな世界を発信していきたいです。そして、自然と人間や、異なるもの同士の「調和」こそが、世界平和の一旦を担うというメッセージを込めて伝えられたら良いなと思います」

Profile

書道を現代アートへ昇華 曲線美のインスピレーションは「鮫」
岡西 佑奈
岡西 佑奈
7歳から栃木春光に師事し、高校在学中に師範の免許を取得。水墨画は関澤玉誠に師事。書家として文字に命を吹き込み、独自のリズム感や心象を表現、自然界の「曲線美」を書技によって追求し、国内外で多数受賞。「自も他もなく、全ては一つであり調和している」という禅思想が、自然と人間との調和、ひいては世界平和の一助を担うという信条を持ち創作活動を行う。そうした「調和」をテーマに、キャンバスと色絵の具を用いて、青い海とサメの泳ぎを曲線で描く「青曲」、マグマの地熱を人間の情熱に見立てた「紅畝」で、自身の書技と線描へと昇華、世界平和を訴えかけている。2018年秋の海外のアートフェアに、岡西の『書』『青曲』『紅畝』のほか新作も発表予定で、書の新たな世界観を創造している。国連ウィメン日本協会のアーティストとして活動し、UN WOMENのイベントに参加。また、「子供に命の大切さを伝えたい」という思いからボランティアで小学校での書 道教室を開催している。