クリエイティブ経済誌 BUSINESS TIMELINE
Vol.24
テクノロジー
2017.06.16

「デジタル」と「リアル」の 融合の先にある世界とは

約20年間に渡りバイオハザードシリーズを手掛けてきた小林裕幸氏。ここからは小林氏自身が現在に至るまでの経験と、所属するカプコンが持つコンテンツ力の強みについて考えを伺う。


小林氏の活躍の裏にある、苦手な分野に飛び込んできた経験

もともとカプコンにはプログラマーとして入社したという小林氏。入社後はバイオハザード一作目のプログラミングから始めたという。現在プロデューサーとして、バイオハザードの他に戦国BASARAなどの作品を手掛けるが、当初のプログラマーという職種からどのようなプロセスで現在に至ったのか。
小林氏「ゲームを作りたいと思ってカプコンに入社したので、当初はプロデューサーへの道は全く考えていませんでした。バイオ2が延期になり、バイオ1のディレクターズカットをやることになったときに、数人のチームを作りました。そのとき企画担当がいなかったので、何でも屋のような形で私が担当しました。通常はプランナーが企画内容を紙に書いて制作側に渡すのですが、それを楽しそうにやっている様子を見た人から声を掛けられ、プランナーとして全体の制作進行を取り仕切っていました。ちょうど『ディノクライシス』を担当しているときに、任された仕事を精一杯やっていたら、今度はプロデューサーをやらないかと声が掛かったのです」
当初プログラマーとしてプログラミングを行っていた小林氏にとって、プログラマーからプランナー、プランナーからプロデューサーという流れの中で、求められる能力は異なるのではないか。
小林氏「私は理系の人間でしたが、これまでの経験の中で文系脳になってきたのを感じます。もともとは苦手だった文系の仕事が多くなる中で、人前に出て話す機会が増えましたね。プランナーやプロデューサーは憧れの職業だと思われますが、それは良いところしか見ていないから。実際は、とても泥臭くてプレッシャーの多い仕事です(笑)」
自身の仕事内容が変わっていく中で、苦手だった分野へ敢えて飛び込むことで、小林氏にとって視野を広げるきっかけとなっていたのである。入社当初バイオハザード一作目のコードを書くところから始まり、現在に至るまで20年ほどに渡りバイオハザードを取り仕切り、まさに第一線で活躍する小林氏の視点から見て、カプコンという会社はどのように映っているのだろうか。強みとして意外な話を聞くことができた。


ものづくりにおいてカプコンが持つ「強み」とは

入社当初バイオハザード一作目のコードを書くところから始まり、現在に至るまで20年ほどに渡りバイオハザードを取り仕切り、まさに第一線で活躍する小林氏の視点から見て、カプコンという会社はどのように映っているのだろうか。強みとして意外な話を聞くことができた。
小林氏「まず大阪にあるということですね(笑)。東京という大都会から少し離れているので比較的引き抜きが少ないです。プロフェッショナルな人材が集まっているのですが、作家ではないので会社の社員としてものづくりをすることならではの強みがあります。また、業務時間が一般的な制作会社と比べ朝早いということもあります。夜帰る時間が早いと、朝から作業できるんですよね。コアタイムがきっちり設けられているため、メンバーで集まっている時間が長いです。その時間の密度の違いはあるかもしれません」
プロフェッショナルな人材が、限られた時間の中で集まって作業できる強みがカプコンのものづくりをより強力なものにしている。ゲーム業界をはじめ制作体制は、プロジェクト毎に各業界の人材が企業の垣根を超えて集まる傾向が高い中で、カプコンの独自の持ち味がより色濃くなっていきそうだ。



編集部の視点

先端技術を用いたリアルなビジュアル表現は、CGやフォトリアル、VFXなど様々な手法が生まれ、表現可能なことの幅もクオリティも広がっている。今回の小林氏への取材の中で印象的なのは、これらを活用しリアルな表現を極めていくと、次第に現実世界の表現へと近づいていくということ。デジタルとリアルは相反するものだとする認識は一般的だと思うが、次第に背中合わせになり、最終的には境目がなくなっていく。時代ごとに先端技術を駆使して作り上げてきたバイオハザードCGアニメーション映画シリーズ。今後デジタルかリアルかが見た目では判別できない段階に行き着くのはそう遠くないかもしれない。