クリエイティブ経済誌 BUSINESS TIMELINE
Vol.45
テクノロジー
2019.02.21

BtoB掛け売り決済サービス「Paid」の導入が増えているわけ

BtoB市場には多くの課題が潜む、
「後払い決済」を低価格保証料率で実現する

POINT
✔決済機能を切り出してサービス化したのがBtoB向け掛け売り「Paid」
✔煩雑な掛け売り決済を効率化し、バックオフィスの疲弊を回避
✔審査システムにAIを導入し、より短時間に精度の高い審査をすることでBtoB取引の機会損失をなくす


BtoB取引において決済手段の選択は、事業を進める上で非常に重要である。特に、信用取引上、上場企業でない場合や初取引などの場合、銀行振込で前払いといった取引条件も少なくない。これは、スタートアップや中小企業によってビジネスの機会損失を招く大きな課題でもある。そこに目をつけ、与信管理から代金回収まで掛け売り決済における請求業務を代行するサービスが登場。それが「Paid」である。2011年にリリース以降、ASPサービスとの連携をはじめ、業界・業種を問わず相性が良いことで、右肩あがりで事業成績は伸びている。そんな勢いのあるPaidについて、株式会社ラクーンフィナンシャルPaid推進部長 及川哲哉氏へ取材を行った。

決済手法にクレジットと代引きしかない頃、「掛け売り」ニーズが意外に多くあることに気づく

–はじめに、「Paid」サービスをリリースするに至った背景を教えてください。
及川氏「もともと弊社の代表が、貿易商として起業し健康食品を輸入して販売するということを行っていました。当時、流通の課題解決のために、オンライン激安問屋という過剰在庫品を販売するサービスを立ち上げたことで、小売店が集まってくるようになったのです。そうすると、新商品や流行品も販売してほしいという声が寄せられるようになり、スーパーデリバリーを立ち上げました。最初は決済手段としてクレジットと代引きしかなかったことで、掛け売りを入れてほしいという依頼が小売店より多く寄せられました。そこで掛け売りができるように対応したところ、スーパーデリバリーの業績が伸びたことで、事業者に掛け売りニーズがあることがわかったのです。そこで、この掛け売り決済機能だけを切り出し、他のBtoB取引にも展開できるのではないか?ということで、2011年に『Paid』としてリリースしました」

BtoB市場で広げるべく「法人企業のキャッシュレス化」にも取り組む

–では、PaidサービスのBtoB市場における活性化を、どのようにイメージされていますでしょうか?
及川氏「導入企業の取引が活性化することがPaidの成長にもつながっていて、一つ目のポイントは業務効率化です。インターネットの急速な普及によって、ウエブを使って商品やサービスを販売する機会が増え、BtoB市場では小さな債権処理が増えています。お客さんが増えるほど請求業務は大変になるので、バックオフィスが疲弊する要因に繋がり、働き方改革が推進されている昨今では逆行する業務量となってしまいます。その辺りを効率化することがとても重要なのですが、例えば事業者用カードの審査登録など、1ヶ月以上かかってしまうことも多く、普及しないのが現状です。Paidでは、審査部分に関して、最大3営業日で結果を戻すことができます。審査自体も自社で開発した仕組みを使っていますので、審査結果を早く戻せる理由の一つでもあると思います。もう一つのポイントは決済方法を充実させることです。建設業者のついで買いや、経費での物品購入など、店頭決済を中心に法人利用であっても現金が使われるシーンが残っています。レジで現金で支払うよりも月末締め翌月末払いでまとめて支払ったほうが購入する側は格段に楽になりますし、高額の利用もしやすくなります。またウェブサービスの場合も、決済方法を前払いだけでなく掛け売りにも対応できるようにしたいとPaidを導入いただくケースが多いです。安心して掛け売りを利用してもらい、売上を伸ばしてもらうことがPaidの活性化にも繋がると考えています」

様々なASP事業者との連携したことで、PR効果に繋がった

2019年1月現在、導入企業が3,000社を超えています。2011年のリリースからこれまで、どのようなPR手法を取られてきたのでしょうか?
及川氏「ASP事業者とのデータ連携が進んだことが、プロモーションとしては結果的に良かったのではないかと考えています。例えば、BtoBのカート機能を提供しているBカートと組ませていただいているのですが、ECサイトを開設する際にBカートを使って行う事業者は、Paidという選択肢も簡単に選ぶことができます。それまではBtoB決済代行サービス自体が認識されていませんでしたが、Bカートを使う人たちの間で増えていったのは認知が広がるきっかけになったと思います。また、LINEや、リクシルビバ、チャットワーク、クラウドワークスなど、物販から役務系事業者まで幅広く使えるところがPaidの特徴だと考えています。最近ではサブスクリプションモデルのサービスが増えてきていることで、その辺りも後押ししてウエブサービスで決済を使う人たちが増えてきています」

データ蓄積とノウハウにより、AI判断もスムーズに行える

–AI活用を含めて他社にはない仕組みがいくつかありますが、世の中にないものを作るということで一番苦労された点は何でしょうか?
及川氏「やはり、審査の部分でしょうか。個人事業主も含めて、一般的な信用情報が揃っていない相手でも与信判断をしないといけない。その辺りのノウハウを作って行くのが一番大変な部分になります。これまで人が介在してやっていたことをAIで行えるように2018年1月にリリースしました。それによって短い時間で精度の高い審査をすることができるようになり、社内の業務効率化にもつながっています。審査の内容としては、ウエブパトロール等を行い、独自に開発しているアルゴリズムと照らし合わせながら、過去の審査実績等に合わせて支払可能かどうかを判断します」

–また、初期費用や月額費用など無料で、取引金額の保証料率〜3.0%のみの料金設定になっていますが、ビジネス的にこの数字は十分に成立するという裏付けはどのように持たれているのでしょうか?
及川氏「もともと、スーパーデリバリーでの実績があるので、保証料率はどれくらい貰えれば良いかはわかっています。あと、料金形態に関してなるべくシンプルにしなければわかりづらいだろうというのがあり、なるべくわかりやすいサービスにしたかったということが理由としてあります。また、審査自体は99%前後が通る状況ではあります。あと、BtoB市場で大事なことは継続性というところだと考えているので、最初の段階で審査を通して企業がどれくらいの信用力があるか、限度額の設定を行い、途中段階では審査は行わない手法を取っています」


及川 哲哉 Tetsuya Oikawa 
株式会社ラクーンフィナンシャル
執行役員
Paid推進部長
1976年神奈川県生まれ。2001年に入社。「オンライン激安問屋」や「スーパーデリバリー」の営業担当として活躍後、事業戦略部長として「スーパーデリバリー」の成長を牽引し、クラウド受発注ツール「COREC」の立ち上げに参画。2016年に売掛債権保証事業を行うトラスト&グロース(現ラクーンフィナンシャル)へ出向後、2018年5月より「Paid」事業推進部長、同11月より執行役員を務める。