クリエイティブ経済誌 BUSINESS TIMELINE
Vol.30
TIEUP
2017.12.20

市場では手に入らない野菜が食べられる モスダイニングの戦略



美味しい野菜づくりの源泉は「土」にあり
「安全安心で美味しい野菜は、どうすればできるのか」モス創業者による野菜への追求が、ダイニング事業開業へと繫がった。事業立ち上げの経緯について、清水氏が次のように話す。
清水氏「20年以上前に遡るのですが、モス創業者の櫻田に『医食同源』について研究を進めるよう言及されました。多くの野菜を使う中で行き着いたのが、美味しい野菜が出来る源泉は『土』にあるということ。食べる人のことを考えると、『なるべく農薬を使わない方法で野菜を育てられないか?』ということでした。当時、健康な土づくりを行うことで作物が健全に育つ手法を取り入れて野菜作りをしていた生産者の方とタッグを組み、1999年に1号店としてオープンしたのが和食店の『あえん自由が丘店』です。あえんは、『里山の恵み』がコンセプトになります。野菜は農薬に極力頼らないものを全国各地から、豚は、栃木県で飼育している『桜山豚(おうしゃんとん)』を仕入れています」

なるべく添加物は排除する
安全で美味しい野菜を、更に美味しく仕上げられるかどうかは調理手法や、使う調味料によっても変わってくる。
清水氏「実は、調味料に関しても無添加のものにこだわっていて、科学的なものはなるべく使わないようにしています。『あえんで飲食した翌日は、二日酔いや胃もたれがなく体調が崩れることがない』という声を常連のお客様からいただくこともあります。基本的に素材を引き立てる調理法を大切にしているので、辛いものや味の濃いものが好みの方には口に合わないこともあるようです」


旬の野菜をシンプルな味付けで提供する
素材の味を生かすために、どの調味料をどのように使うかにも気を配るダイニングは、日本食本来の「旬のものを食べる」という精神のもと調理法が決められる。
清水氏「ちょうどこれから旬の時期に入るのが、ごぼうです。北海道の新千歳空港近くで、前述した栽培方法を継承して栽培している農家があるのですが、私も一度訪問したことがありまして、畑なのに磯の香りがするのです。なぜかと言うと、海老や蟹などの甲殻類を肥料として使っているためです。その畑で育ったごぼうは、一般的なスーパーで見るごぼうの約2倍の太さがあり、すごく甘みのある味で、ダイニングの店舗では素揚げにして塩のみで召し上がっていただきます」

全国から新鮮な食材を集められる理由
街のスーパーはもちろん、市場でもなかなか目にすることが難しい食材を、ダイニングでは直接仕入れている。清水氏の話によると、人からの紹介やコネクションを駆使して料理長とともに全国各地を訪れて、モスグループが目指す「食を通じて人を幸せにすること」という経営ビジョンに共感してもらえる生産者と話を進めると言う。
清水氏「日本全国を見渡すと、実は流通に出回らない食材が多くあるのです。例えばスーパーなど多くの野菜売場で目にするのは、『傷のない真っ直ぐで大きさが整ったきゅうり』だと思います。減農薬や無農薬で栽培された野菜は、虫がつきやすかったりしますが、安心できる食材です。しかし、曲がっていたり少し傷がついたりするだけで流通へ乗せることは厳しい。ましてや大量に作ることは難しいのが現実です。その他にも、奈良や三重の山ではイノシシによる被害等が発生していて、処分に困っているというお話をいただいたので料理長が現地へ向かい調理をしたところ、ジビエ料理として絶品に仕上がりました。また、青森の大鰐(おおわに)で温泉熱と温泉水を用いて栽培されている大鰐温泉もやしは、大量栽培されていないので、これも一般の流通には出回りません。ダイニングでは、そういった食材を直接仕入れて素材が引き立つ調理法によってお客様へ提供させていただく。こういった仕組みで多店舗展開することは難しいことですが、生産者との連携をとり、安全安心な食事の提供をすることはとても意義のあることだと感じています」

編集部の視点
健康的な身体づくりを考える際、新鮮な旬の野菜を選び食べるというのは、日本古来より伝わる食事の基本である。しかし、現代人は嗜好の多様化により、食材の味付けもバラエティに富み、スーパーの陳列棚には多くの調味料が並ぶ。健康を意識して有機野菜や減農薬野菜を選んでも、実は無意識に使っている調味料に多くの添加物が含まれていることは見落としがち。安全安心の野菜とはどういったものなのか。どのような味付けをすることが健康的なのか。消費者こそ、考え選択するタイミングに来ているのではないか。