クリエイティブ経済誌 BUSINESS TIMELINE

お店に入ると店員さんからの元気の良い「いらっしゃいませ」という声が聞こえる。店内は清掃が行き届き、店内を彩るインテリアも落ち着きと安らぎを演出してくれる。そして、一番おいしい温度でいただくことができる手作りのハンバーガー、みずみずしい野菜。食べ終えてお店を出るときには「ありがとうございました」という気持ちの良い声。こうしたお店は印象が良く、また利用しようという気持ちになる。たくさんの人から選ばれるお店となる。そして、それはお客様としてだけでなく、働くお店として選ばれることにもつながるのだ。

モスバーガー基本方針

お店全体が善意に満ちあふれ
誰に接しても
親切で優しく
明るく朗らかで
キビキビした行動
清潔な店と人柄
そういうお店でありたい
「心のやすらぎ」
「ほのぼのとした暖かさ」を
感じて頂くために努力しよう

モスバーガーにスタッフとして入った際に最初に伝えられることは良いお店のイメージ。お店が目指すことが具体的に示されたものが基本方針だ。
入店間もなくても、この文章から想像する目標は働くスタッフの共通意識となる。そして、どう行動すれば良いお店になるのかということをスタッフ自身が考え、行動へと落とし込むこともできる。モスバーガーのような大きな組織では、スタッフ全員が同じ思いを共有することは難しいと思われる。しかし、根底に流れる思いが明文化されており、スタッフ全員が共有することで、モスバーガーのホスピタリティが生まれる。


モスバーガーのアルバイト採用戦略
かつてはフランチャイズのオーナーへ一任していた採用も3年ほど前から本部主導で採用を支援する形に変化したという。本部がモスバーガーで求める人材やメッセージを伝えるサイトの作成や、採用媒体への出稿の強化、さらに、採用後の定着にも着目し、採用定着セミナーなども開催している。モスバーガーの採用について人材開発部教育グループリーダーの濱崎氏に伺った。
濱崎氏「飲食業界は全体的に人材確保が厳しい状況と言われています。昔は待っていれば応募が来ましたが、今は待っているだけでは集まりません。待ちから攻めの採用に変化しています。そんな環境の中、採用にとって大事なことは働きたいと思ってもらえるお店作りだと思います」
最初に紹介したモスバーガー基本方針が、働いているスタッフの共通言語となって作り出されるモスバーガーのお店。実際にアルバイトスタッフにモスを選んだ動機を聞いたところ、元々はお客様として利用していたスタッフや、両親に勧められて応募したスタッフが多くいるのだという。
濱崎氏「このお店はホッとするし、働いている人が楽しそうにしている、若い人もあいさつができるお店だったから、チャレンジを考えたという定年後の方もいます。若いスタッフも、お客様だったスタッフやご両親からアルバイトするならモスバーガーが良いのではと勧められたと、周囲に後押しされている人も多いんです」
そして、入店後はやり甲斐をもって長く続けてもらえる仕組みも用意している。
濱崎氏「外部のミステリーショッパーを利用し、結果を各店が店内で共有し、改善活動に対する意見出しをスタッフ同士で行い、内省して改善しています。スタッフの良いお店にしたいという思い、お店の経営に自分の意見や思いが伝わるということが、モチベーションアップとなっています」
さらに、モスバーガー基本方針を始めとするモスの心を具現化するために、Hホスピタリティ、Dデリシャス、Cクレンリネスの頭文字「HDC」という共通言語を設け、年に二回の「HDC強化期間」にレベルアップを図っているという。
濱崎氏「店舗のスタッフさんも主体的に、最近うちの店舗はHが弱いなどと問題意識を持って業務に取り組んでいるのを見かけることが多々あります。共通言語を持つことにより、お店のスタッフの心が一つの目的へ向かうことができるんです」


編集部の視点
「どうせ仕事をするなら感謝される仕事をしよう」モスバーガー創業者櫻田慧の言葉である。仕事とは楽しいこともあれば、大変なこともある。しかし、仕事を通して得られる経験、さらにお客様からのダイレクトな喜びの感想を得ることができるのはやり甲斐を感じる瞬間であろう。スタッフ全員の胸にモスバーガーの心が共通で存在しているからこそ、お客様からもスタッフからも選ばれるお店になるのであろう。

株式会社モスフードサービス 教育グループ 濱崎氏