クリエイティブ経済誌 BUSINESS TIMELINE
Vol.34
TIEUP
2018.04.13

整備士の「モノ作り」から生まれる乗客との新たな接点


青森空港に到着し、預けた手荷物を受け取るターンテーブルに流れてくるのは本物かと目を疑うほどリアルな大間のまぐろ。乗客は驚きながらも皆写真を撮り始める。時折現れる全長約140cmのまぐろは、発泡スチロールで作られた精巧なオブジェ。これは日本航空の整備士3人が、乗客を楽しませようという 思いで制作したものだ。SNSでも話題になったこの大間のまぐろはどのようにして作られたのか、日本航空の整備士 田中氏に話を伺った。


日本航空 整備士/左から田中氏、境氏、深谷氏

モノ作りが好きな整備士ならではのアイデア
まぐろのオブジェを制作しようとしたきっかけや着想はどのようなところからきたのだろうか。
田中氏「旅客担当のスタッフが季節のイベント毎にJALカウンターを装飾するのを見て、整備スタッフも何かできないかと整備士3人で話していたのがきっかけです。JALでは毎年ねぶた祭りで制作物を出していることもあり、『何かを作ろう』という気持ちが自然と湧き出たのだと思います。インパクトがあり印象に残るものを考える中で、『青森といったら大間のまぐろ』、『ターンテーブルに流したら面白そう』というアイデアが出てきました」
こうしたアイデアのもと、大間のまぐろの制作が始まった。リアルなオブジェは、廃棄される発泡スチロールを集めて形にし、紙やすりで削って制作されている。プラスチックで作ったヒレを取り付け、塗装し完成。制作には7カ月程かかったという。


荷物を待つ時間がちょっと楽しくなる
2017年5月1日に初めてターンテーブルを流れた大間のまぐろ。乗客の反応はどうだったのか。
田中氏「驚かれて二度見される方が多かったです。子供だけでなく、大人の方も近づいて見たり、写真を撮ったりして楽しんで頂けていると思います。手荷物を待っている時間は退屈だと思うのですが、まぐろが流れるときはターンテーブル周辺が少し賑やかになります。残念ながらすべての便で流すことが難しいのですが、時折お客さまから『今日はまぐろないの?』と聞かれることがあり、認知されていることに嬉しく思います」

SNSでの想像以上の反響
情報の拡散スピードが速いSNS。特に面白いコンテンツは拡散力が高い。今回の大間のまぐろは話題になる予感はあったのか。
田中氏「あえて自分たちからは何も発信しなかったのですが、反響は想像以上でした。流し始めてから1カ月以内で多くの問い合わせがあり、SNSの影響力を肌で感じました。『ターンテーブルからまぐろが流れる』という意外性とリアルに近いまぐろの写真のインパクトが強かったのではないかと思います」
SNSのつぶやきの中には、まぐろのオブジェを見るためだけに青森に遊びに来たというコメントもあり、やって良かったと心から思えた瞬間だったと田中氏はいう。

新たな接点の創出
今回の取り組みによる整備士と乗客の接点の変化について田中氏は次のように語る。
田中氏「今回の取り組みは青森空港内でのJALのプレゼンスを高めることになったのではないかと思います。私たちの強みである『モノ作り』を活かした結果、お客さまに喜んで頂くことができ、大間のまぐろというクリエイティブを通してつながりが生まれ、整備士のモチベーション向上にもつながったと感じています」
現在、新たな制作物を考えているところだという。次の作品にも期待したい。

大間で釣られたまぐろにはブランド目印として「大間まぐろ」のシールが貼られる。 営業の担当者が漁協と   掛け合い、シールを貼れることになった。


編集部の視点
自身のもっている技術を生かして、乗客をもてなし楽しませる今回の取り組みは、整備士ならではのコミュニケーション手法ではないだろうか。何かアイデアを思い付いてもそれを実行に移すことはなかなか難しい。今まで事例のない取り組みは、なおさら社内の承諾を得るのが厳しい。ちょっとしたアイデアも尊重し、後押しするJALの企業としての姿勢からも学ぶところがあるだろう。