クリエイティブ経済誌 BUSINESS TIMELINE
Vol.42
TIEUP
2018.12.13

ブレイクスルーの前日はクレイジーなアイデア ANAがAVATARで実現する未来

“The day before something is a breakthrough, it's a crazy idea.”


「AVATAR IN(アバター・イン)」する。ANAのWEBサイトを開いて航空券を予約するか、AVATARを予約するかが選択できるようになる。人々は行きたい場所、経験したい体験をAVATARを通してできるようになる。例えば、身体は移動しなくても意識は宇宙にいくこともできる、東京に居ながらにしてヨーロッパを旅することもできる。未来の話ではなく、今まさにANAが新規事業として実現へと進めていることだ。ANA AVATARについてデジタル・デザイン・ラボの深堀氏、梶谷氏に話を伺った。


AVATARでできること
AVATARはあらゆる制限を超えたまったく新しい移動手段。ロボティクスや物を触ったときの感覚を疑似的に伝える技術等を用いることで、離れた場所にあるAVATAR(ロボット)を遠隔操作し、あたかもそこに自分自身が瞬間移動したかのように行動、体験ができる。そんなAVATARのアイデアはどのように生まれたのか。

深堀氏「これだけ飛行機という移動手段が世界中に広がっても、実際に飛行機を使用しているのは全世界人口のたった6%しかない、と言われています。ANAが追い求めていることは世界中の人々を繋ぐこと。そこで、私たちの強みを使ってどうやって世界中の人を繋ぐことができるか、従来の考え方とは違う視点から様々なアイデアを検討しました。最初は本気でテレポーテーション(瞬間移動)ができないかと考えました。しかしまだ物理量の最小単位である量子レベルでのテレポーテーションという話を聞き、『それなら身体は移動しなくても意識が移動すればいいのではないか』という考えに行きつきAVATARが誕生しました」

実証実験が行われているANA AVATAR

世界各地にAVATARを置き、接続して意識、技能、存在感を転送する。提供されるサービスは宇宙開発、教育、コミュニケーション、ヘルスケア、観光、ショッピング、エンタメ、スキルシェアと様々だ。

梶谷氏「AVATARの特徴の一つがスキルシェアできることです。プロの技術を機械学習して、素人が行っても自動的に補正してくれます。見て覚えるだけでなく体験して覚えることができるようになるのです。また、現在一般消費者向けサービスの実証実験も進めています。最近は東京から沖縄にある美ら海水族館を繋ぎ、東京にいる方がAVATARを使用して美ら海水族館のジンベイザメを目の前でみて楽しんでいただきました。他にもフィッシング(釣り)、ダイビング、ヘルスケア、教育、観光体験など、様々なシーンでの利用を準備しています」

ANA AVATAR XPRIZE
そして、実現に必要なAVATAR (ロボット)の開発はどのように進めているのか。ANAが必要とするAVATARは様々な世界最先端の技術でないと実現できない。ANAは「イノベーション界のカリスマ」として有名な、ピーター・ディアマンデス氏が設立したXPRIZE財団が主催するXPRIZE(人類に利益を与える技術の開発を促進し、世界が直面する課題の解決を目的とした国際賞金レース)の次期レーステーマを設計するコンテストでグランプリを獲得。次の賞金レースのスポンサーとなり、『ANA AVATAR XPRIZE』を通して独自開発が進む各分野の技術を融合させて高性能なAVATARの世界各国における活用への理解を促進し、技術革新と環境整備を同時推進する。

遠隔地から操作ができるようになるイメージ

ANAの実現する未来
深堀氏「AVATARを使えばどんな場所にでも行くことができます。高齢者や体の不自由な方でも活用できる、本物のダイバーシティなのです。また、短時間で様々な経験ができるAVATARを利用することで、人間の経験知は爆発的に増えます。そうすると社会的課題を解決するヒントを得られるのではないかと考えています。ANAの新規事業という枠を超えた人類のための新規事業なのです。AVATARという技術で世界中の人々をつなぎ、世界をより良くしていくことを目指しています」

意識の転送と遠隔操作によって瞬間移動を実現するAVATAR。ポイントは、仮想ではなく現実であるということ。遠隔で誰かを助けようと思ったら本当にできるようになるのだ。こうしたアイデアにたどり着いたのにはバックキャストの考え方があったからだという。未来がどうなっているかを想像し、そこから逆算して今なにをすべきか考える。最初は究極の瞬間移動、テレポーテーションができないかという突拍子もない発想だった。将来的には本当にテレポーテーションできる時代がくると2人は考えている。そこに行き着くまでの今できる近い方法が意識を瞬間移動させるということ。「ブレイクスルーの前日はクレイジーなアイデア」。望む未来が突拍子のないものでも、そこにたどり着くまでの過程で新たなイノベーションが生まれる。

interview
左:梶谷氏、右:深堀氏