#システムエンジニアリング | 2017/06/15 | 残間 光太朗(ざんま こうたろう) | 1view

新しい技術の成熟とビジネス創発のタイミング

Global Open Innovation




ブロックチェーンの登場の仕方はインターネットと似ている

「ブロックチェーンは、銀行業界において何百億ポンドのコスト削減と高いセキュリティをもたらすだろう」これは、2017年4月12日に英国国際通商省が開催したインターナショナル・フィンテック・カンファレンスにて登壇した、イングランド銀行総裁のマークカーニー氏の言葉です。
ブロックチェーンの登場は、インターネットが誕生したときのことを思い出させます。当時、インターネットが金融のインフラになるなんてどれくらいの人が信じていたでしょうか。私は当時、必ずそのような時代が来ると「信じる」側として、金融インフラとしてインターネットを活用することに注力しました。
そして今日、ブロックチェーンが本当に社会のインフラになるのだろうかと半信半疑の世の中。インターネットと同じようにブロックチェーンも5年後10年後、当たり前の社会インフラになっているかというと・・・「わかりません」というのが正直なところです。従来の「中央集中型」ではなく、ブロックチェーンの「分散型」の仕組みは本当に素晴らしいパラダイムシフトだと思います。しかし、既存のインフラを総替えするスイッチングコストや、運用まで含めた技術レベル等を考えると、現在の仕組みを全て代替されるかどうか判断できるのは、もう少し先のことではないかと考えています。


現段階のブロックチェーンで「金鉱」を見つけた企業

ところがそんな中、すでにブロックチェーンを活用してビジネス化に成功している企業があります。世界第二位のアクセラレーター(※1)であるテックスターズ出身、ロンドンのEverledgerという企業です。彼らのビジネスはブロックチェーンの技術を活用して、ダイヤモンドの発掘から流通の全てをトラッキングし、真贋性(しんがんせい)の保証をする世界で初めての社会インフラを目指しています。彼らのビジネスの特徴は大きく2つあると思っています。まず、ブロックチェーンの技術を必要とする正当性を見出せていること。多くの人が介在しても透明性・改ざん耐性・利便性を担保してくれるブロックチェーンでなければこれ程早く彼らが提供するトレーサビリティ(※2)のソリューションは実現できませんでした。そして、今ある技術レベルで、最大限に価値を提供できるビジネスモデルを発見したこと。彼らは、現段階のブロックチェーン技術で成り立ち得るビジネスモデル、つまりそれほどリアルタイム性やスケーラビリティ(※3)を必要とせず、かつ世の中へ貢献性の高いソリューションを提供することができている数少ない企業であると思います。

(※1)ビジネスの拡大に焦点を当て、起業家に早い段階から良い機会を提供する企業や団体のこと。

(※2)物品の流通経路を生産段階から最終消費段階あるいは廃棄段階まで追跡が可能な状態のことを指す。

(※3)システムの拡張性、拡張可能性のこと。システム規模を状況に応じて柔軟に対応できる適応力。



新しい技術の進展とビジネス創発の同時進行

新しい技術が登場したときに重要なことは、新技術の進展と同時並行で新しいビジネスモデルを創発することだと思います。すなわち、新しい技術の場合、技術者がとにかく実証実験を繰り返し、技術を成熟させる方向に進みがちですが、まだ初期の頃からビジネス創発も同時並行的に進めることで、初期の技術レベルでも全く新しいソリューションを生み出すことができるかもしれないのです。

実は私がインターネットを金融インフラの最初として手掛けたのは「iモード」だったのです。まだ、画像や動画を送ることには遅延があり脆弱だったインターネットでしたが、テキストデータのやりとりで出来るキラーアプリケーションとして、モバイルバンキングを手掛けていました。その頃はまさに時代がひっくり返るだろうという今のブロックチェーン登場のような興奮の中やっていた記憶があります。またこの応用として、大企業に特有の話だと思うのですが、成熟しなかったために眠っている技術を改めて見直してみることも挙げられるかも知れません。新しいビジネスモデルの創発に改めてチャレンジすることで、そのような技術も新しいビジネスモデルに生まれ変わらせることができるかもしれません。このようなリノベーション要素の含んだイノベーションも今後、生みだすこともできるのではないかと期待しています。

これからは、ブロックチェーンのみならず、技術の進展とビジネス創発を同時並行に進めていくということ、いや、むしろ現段階の技術レベルでビジネス創発ができないかを繰り返しリーンスタートアップで追及していくことが、思いも寄らない革新的なビジネスモデルの気づきを与えてくれるのではないでしょうか。



残間 光太朗(ざんま こうたろう)

残間 光太朗(ざんま こうたろう)

NTTデータ オープンイノベーション事業創発室室長。1988年、NTTデータに入社後、新規ビジネス推進やコンサルに従事。2014年よりマンスリーフォーラム「豊洲の港から」やグローバルビジネスコンテストなどで“さあ、ともに世界を変えていこう”を合言葉に、革新的で迅速な新規ビジネス創発に邁進している。

プレミアム会員募集 プレミアム会員募集

コミュニティ企画

  • 新着記事
  • ランキング

BTL TOKYO

TAG

TWITTER

FACEBOOK

RECRUIT

求人
  • 2017年10月号
  • 2017年09月号
  • 2017年08月号

毎月15日発行 クリエイティブ経済誌「BTL TOKYO」は
企画・マーケティング・クリエイティブ職に就く
ビジネスパーソン向け無料の月刊誌です

無料定期購読