2015/10/27 | 伝わること | 47view

伝わること

トレンディードラマからサスペンスドラマ出演など多彩な役を演じている他、バラエティ番組でも軽快なトークを繰り広げ、年齢を問わず支持されている俳優・椎名桔平。役者を目指してから間もなく30年を迎えようとしている。若かったがゆえの葛藤から、経験を重ねたからこそ見える役を通じて伝えること、伝わることについて語ってくれた。




俳優としてのクリエイティブとは、「伝わること」に拘りを持つこと。



役者を目指してから間もなく30年、椎名桔平は何を思う?

トレンディードラマからサスペンスドラマ出演など多彩な役を演じ、俳優としてベテランと言われる域へ入っている椎名桔平。どんな思いで役者を始めたのか。 「最初は、自分が役者に向いているかどうかなんて分からなかったんだけれど、時間が過ぎていく中で自分自身に10年という期限を与えたんだよね。よく、石の上にも3年というけど、3年とかじゃなくて、とりあえず10年やり続けてみようよって思って」21歳で役者を目指し、ちょうど10年後の31歳の時にトレンディードラマ出演が決まったそうだ。 

では、椎名桔平にとって、この30年をどのように捉えているのか。「よし、役者になろう。と志してからちょうど30年ですね。しかし、最初の10年は何もないですから、役者としての職業は20年ぐらいですかね。今は、若手じゃないっていう思いが強いし、言い訳は通用しない。ちゃんと責任を持って仕事をやらねばって思います」 

そして、年齢と共に経験を重ねる中、考え方で大きく変わったところがあると言う。「若いころはお金がないからこそ、ブランドものを持ってみたいなとか、良いレストランに行きたいなとかに興味があった。でも、今は改めて高い安いではなく、自分が好きか嫌いかで選ぶようになってきたところは大きく変わったところかもしれない。例えば、高いワインより焼酎の方がうまいなぁとか(笑)」 

とても気さくに話すところは、椎名桔平という人の人柄の良さが伺える。しかし、役の話になると表情は一変し、役者の顔になる。


家族への思いと、夢への葛藤

今回NHKドラマ「破裂」で、「医学史に名を残す」という夢を持つ一人の男性、心臓外科医役を演じている。このドラマは、超高齢化社会という難しい背景がある中で、その役を通して何を伝えたくて、どう伝わるのか? 複雑な役どころから垣間見る「伝えかた」と「伝わること」の核心へ迫る。 

「主人公は、夢をもって医者になったんだよね。夢の実現化に対して真っすぐ突き進んで行くのだけれど、そこにいろいろな壁が待ち受けていて、本意じゃないことも起こる。それでも、本意でないことを乗り越えないと自分の夢を達成できないわけですよ。そこに向かうにあたって、さまざまな苦難と立ち向かっていくっていうね。でもそれは、どこか諦めない、何があっても諦めないで自分の夢に向かって走っていく。そういう姿に見てもらえればいいと思う」夢への葛藤をどう演じているのか、そしてそこから何を伝えようとしているのか、興味深い。

そしてもう一つ忘れてはならない「家族」という側面も、今回のドラマでは重要な位置をしめているが、生きていくうえで、家族の存在が重要であると続けた。「家族のあり方は、切っても切れないものだし、どんな軋轢が生まれたとしても、やっぱり家族として捉えて生きていくんだって思う。家族の絆と自分の果たすべき夢への葛藤、そこにこの物語の軸があるんですよね」 

身近にある「家族」と、誰もが持つことの出来る「夢」というものがどんなものであるのか? を役を通して伝えようとしている。


「伝えること」、「伝わること」とは

椎名桔平にとって、「役を演じる」ことで伝えるとはどういうことなのか。「今回、葛藤を乗り越えていく役で、その姿勢みたいなものが、なぜか説得力がある。それはいい人じゃないからというところにあると思う。誰からみても好かれていて善人で真っ当な人が夢を実現しても、頑張ったし、いい人だからねってなるけれど、僕が演じる医者は、夢を妨げる者に対してとても正しくない行為をしてまで夢を実現しようとする。決して良い医者じゃないけど、ひたむきな姿に説得力がある」 

演じる役が、画面を通してどう見られるのかということを、とても客観的に見ている。しかし、客観的になりたくてもなれなかった若い頃の葛藤について続けた。「若い時はお客さんにどう届くとか、お客さんにこの作品をもってなにかを与えたいとか、こういうメッセージを届けたいとか。それは一応頭の中にあっても、そういうところまで追いつかない。若いころは学ぶことの連続で苛立ちさえ感じていたよね」そのような葛藤を乗り越えてきた今、今回の医者役をどのように演じようとしているのか。「じゃぁ、こいつの夢って何?って考えると、結局は人を救うことなんですね。人を救うことが実現できれば、医者にしがみつく気持ちはないっていう。そういうところはひとつ筋が通っているなと僕は思うんだよね」伝えることだけではなく、どう伝わるかを徹底的に分析して考えているからこそ見えることがある。 

そして20年の役者経験から導かれた役との向き合い方について語ってくれた。「こういうメッセージを今見ている人に伝えたいとか、それが出来るのはどういう芝居か?たぶん見ている人はこう思うでしょうから、もうちょっとこれこういう風にやりましょうかとかね。そういう話を監督とするんだけど、それは多分見た人はここで誤解しやすい、こっちの意味で捉える人もいるかもしれないから、ここは誤解がないようこのセリフちょっと丁寧に付け足しておきませんか。とかね」そして今、俳優として等身大で伝えたいことを語る。「自分が、やり易い芝居に逃げるとかじゃなくて、伝わる為のお芝居っていうのがどういうことかなってことをよく考えますよね」 

伝えることと伝わることは、視点が違ってくる。伝わることを大事にするということは、役というものを「客観的」に見ることができるからこそ可能にする、とてもクリエイティブなことなのだと感じた。


土曜ドラマ「破裂」<全7回>
NHK総合 毎週土曜午後10時~放送中
出演/椎名桔平、滝藤賢一、仲代達矢ほか


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椎名 桔平

椎名 桔平

'64年三重県出身。21歳で俳優デビュー。'93年映画『ヌードの夜』で注目を集め、以降、映画、ドラマ、舞台、CM等多岐にわたり活躍。'99年『金融腐蝕列島・呪縛』では日本アカデミー賞助演男優賞など、数多くの映画賞に輝く。近年の主な出演に'10年『アウトレイジ』、'13年『謎解きはディナーのあとで』、'15年『悼む人』、『暗殺教室』などがある。2016年には『64ーロクヨンー』前編・後編が公開予定。

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