2016/01/29 | The Nippon Brand | 26view

#02_国民みんなカメラマン、日本はユニークだよね。


Global Artist

プロカメラマン桐島氏。17歳でスカウトされ、ファッションモデルとして活動する。モデル活動をしながらカメラマンを目指していた中で、モデルとしての経験がすごく役に立っているという。現在は日本を中心に活動をされているが、海外と日本の両方の文化をよく理解しているからこそ、現在の日本の課題を痛切に訴える。それは、日本で育ちにくいクリエイター文化について本質を探る。



国民全員がカメラマンな時代へ。

カメラがフィルム時代だった頃、写真が出来上がるまで、どんな風に撮られたのかを知る術はなかった。だからこそ、カメラマンがそこに居る意義があり、また、その場では確認できないということがモノづくりの中で緊張感を生み、良いモノに仕上げたいという底知れぬ意気込みがあった。

しかし、デジタル時代となった今、撮影した写真がその場で確認できる。その現状を桐島氏はこう例える。「みんな、現場はモニターの奴隷になってるよね。それがなかった70年代~80年代の頃は、写真そのものがすごく良かった。今は、モニターで確認する全員がカメラマンみたいなものだし、全員がディレクターになっている」

すでにフィルム時代を知らない人たちも多く存在し、デジタル撮影が一般的になった現代、写真へかける想いも昔とは変わってきてしまったのかもしれない。モニターで満足してしまっている最近の撮影現場が当たり前になったからこそ、モニターを出さないカメラマンも出てきているそうだ。

更に、ファッションカメラマンの卵たちが、目指すカメラマンとして名前を挙げるのが、「篠山紀信氏」「荒木経惟氏」。彼らは勿論、素晴らしいカメラマンではあるものの、ファッションカメラマンではない。その事実を若者に伝えると言葉を失うことが多い。

そう、圧倒的に写真というもに対する知識が足りないからこそ本当のリスペクトもできていない。その部分に、日本の本質的な課題が隠されているようにも思う。


なぜ、日本は新しい○○が生まれにくいのか。

日本は、新しい○○が非常に生まれにくい国だと桐島氏は言う。果たして海外と何が違うのか。「美術などに触れる環境が大きく違いますね。海外では、美術館など身近にあって、小さい頃から無料のところへ見に行くことが当たり前の環境。でも、日本の場合、美術館はそこまで身近になっていない。あと、MTV(※1)なんかも身近に見ているか見ていないかによって感性は変わってくるかもしれないね」




日本企業の「スタンプラリー」文化

他にも日本の企業体質において、新しいモノが生まれにくい環境にあると桐島氏は言う。「いろんな新しいモノに興味があって、こうしたら面白いかも。とアイデアを持っている若者は少なからず居る。その直属の上長までは理解してもらえるかもしれないけれど、印鑑しか押してないようなポジションのところまで行くと、サラリーマン的に冒険をしなくなるのがほとんどだよね。だから、言われたことを忠実に守って実行したり、少しだけ改善することだったり、相違工夫することは本当に得意。でも、そこから新しいモノは生まれにくい」いわゆるお伺いを立てながら印鑑決裁をもらって回るスタンプラリー文化が日本企業では根強く残っている。そのラリーそのものが仕事となることでクリエイティブさは薄れる。

カメラマンの世界でも、日本人が海外で活躍している例はあまり聞かない。しかし、海外では著名になると、アシスタントが10名ぐらい付くことも。PR担当やマネージメント担当など、多数のアシスタントが付き、日本とはカメラマンという職業そのものの考え方が違うようだ。更に、日本はクリエイティブな仕事をする人達への理解の壁がすごくあると桐島氏は言う。「日本企業はエキスパートを育てることを避ける傾向にあるね。その人が居ないと成り立たなくなるのが怖いのもわかるんだけど、誰かが辞めたら誰かが補えるような仕事の遂行の仕方が一般的になっているから、そのあたりでもクリエイティブの意識は高まらないかもしれない」

処世術という言葉があるが、自己主張をしてはいけないなんて教えはない。日本が新しい○○を作るためには、社会の構造も、企業の構造も、意識的に変えていかなければならないかもしれない。


重要なことは、「真似してロゴを作った」ということではない。

日本としてのクリエイティブへの理解について、象徴的だった出来事が今年起きた。2020年オリンピックのロゴ問題だ。一人のクリエイターを取り上げ、連日マスコミは騒ぎ立てた。桐島氏の見解はどうなのか。「問題は、真似したとか真似してない。というところではないと思う。一番の問題は、クリエイティブな分野の知見や知識がない人たちが、寄ってたかってデザイナーを誹謗中傷したところにある」このような見解から、テレビなどで流れる情報を信じ込んでしまう人も多く、誰かが良いと言えば良いと思うし、悪いと言えば悪いと思ってしまう人が多いのも日本の特徴だ。ランキング好きな国民性もここに通じるのかもしれない。

しかし、日本人が海外で活躍している分野もある。それは建築だ。何故なのか。「建築の場合、デザインの他に数値的な知識と見解が必要になってくる。それは緻密な仕事であることから、日本人に向いているのかもしれないね」それを証明する一つとしても、今の都内中心にそびえ立つ高層ビル群含め、デザイン性だけではなく、非常に強固に作られている。

2011年に起きた関東東北大震災においても、震度7に耐えられるビルがほとんどであったことで日本の建築技術力の高さが証明された。恐らく海外ではほとんどのビルが崩壊してしまうかもしれない地震にも耐え、経済が完全ストップするほどのダメージも受けていない。だからこそ、今日本は何となく平和に過ごせていて、大きな危機感もさほどあるように感じない。資源が無い中、ハードワーキングに耐えられることと自立心が他国よりも特に優れていることで、国全体がガラパゴス的に成り立っている。海外と日本を見た桐島氏が最後に言ったことは、「日本ってある意味ユニークだよね」ということだった。

このユニークさをもっと活かすことができれば、かなり強いクリエイティブ力が担保されるのではないだろうか。

(※1)1981年にアメリカで誕生し、24時間ビデオクリップを放送する「MUSIC TELEVISON」としてスタート。ミュージックビデオを単なる宣伝ツールから革新的な映像作品へと押し上げ、 数々のアーティストやクリエイターとともに新しい音楽シーンを創り上げている。


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桐島 ローランド

桐島 ローランド

写真家・映像作家・クリエイター。1968年横浜生まれ。47歳。小学校3年でNYへ移住。ニューヨーク大学・芸術学部写真科を卒業。ニューヨークで写真家として活動を始め、1993年、活動の拠点を東京に移す。父親はアメリカ人、母親は作家の桐島洋子。長姉はモデル・女優の桐島かれん。次姉はエッセイストの桐島ノエル。2002年に結婚。子煩悩な二児の父親。2007年のダカール・ラリーにモーターサイクル部門で初参戦し、完走。2014年より、日本発のフォトグラメトリー専用スタジオAVATTAをオープン。フォトグラファーとしての技術と才能を活かし、デジタル撮影による3Dクリエイティブの分野においても活躍の幅を広げる。趣味 : 茶道・バイク


東 真子

東 真子

フォトグラファー。1985年生まれ、大阪府出身。人物およびクルマを専門にす る写真家。広告、雑誌などの撮影を手がける。2012年、NYCで開催される世界最高峰写真コンペ(IPA)にてHonorable Mention受賞。2013年、ポーランドにて撮り下ろしファッション写真集Glossを出版、全国書店にて発売。「レクサスRX×東真子」など、写真作家としての広告も手がける。2015年、Sony Mobile Xperia広告出演。同年、AKB48マドンナの選択のMVで初の動画撮影。その他、2015年度の仕事例に、あべのハルカス、Lucua1100、日清やきそばU.F.O.など。

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