2016/11/29 | 「世界基準」でクリエイションする | 54view

#02_リフレーミング手法で課題解決する

日本初上陸「プリシラ」は、1994年に公開された3人のドラァグクィーンたちのドタバタ珍道中を描いたオーストラリア映画。世界中で大絶賛を浴びた後、2006年には待望のミュージカル版がオーストラリアにて誕生した。日本での上演にあたり衣装以外は自由。自由だからこそ、宮本亜門の演出に期待感が高まる。世界基準の視点で、日本ならではの演出へ転換させるグロースハックはリフレーミング手法にあった。




観客の気持ちの誘(いざな)い方

3人のドラァグクイーンが砂漠にあるリゾート地のショーに出演するため、バス“プリシラ号”をチャーターして3000キロの旅に出るストーリー。宮本亜門は、より難しい演出への挑戦を選択することで、日本人だからこそ受け入れられる作品へ仕上げようとしている。

宮本亜門「プリシラの映画では、LGBT(※1)を含めてとてもデリケートな要素が含まれています。砂漠を走るバスの中でドラァグクイーンたちのデリケートな描写があるのですが、これまで世界で上演されたミュージカルではデリケートな部分は無く、明るく表現されていました。しかし、僕は砂漠の中の孤独感やマイノリティな痛みを敢えて入れていこうと。舞台上から誰が一番近くて誰が一番遠いのかを計算して観客の気持ちを誘うように演出を考えていきます。今回、“変わった面白いヒトたち”で終わってしまう可能性がある中、元々がアンダーグラウンドな映画のため、そこを表現しようとすると非常に難しいのです。共鳴しやすいけれど、共鳴しにくい。そんな難しさがあるからこそ試行錯誤していますね」

(※1)性的少数者の総称。女性を好きになる女性のレズビアン(L)、男性を好きになる男性のゲイ(G)、両性愛のバイセクシャル(B)、心と体の性が一致しないなどのトランスジェンダー(T)の頭文字に由来。



重要となる「バス」が予算都合で持ってこれない

演出を考える中で、コストとの闘いがある。限られたコストの中でどのように最高の演出に持っていくのか、演出家の手腕が問われる。

宮本亜門「衣装は各国で使われているものを持ってこれましたが、演出として外せないバスは予算の都合で持ってこれませんでした。しかも日本でも高くて作れない。あと2、3週間で答えを出さなければいけないのですが、バスを違う目線で見てみたらどうだろう?そもそもバスってなんだろう?という思考で考えてみることを今は行っています。コストの問題は毎回ぶつかってくることなので、一旦は予算の話をおいといて、プロデューサーにも口は一旦挟ませず、目的を明確にした上で何をやるのかの案を多く出すのです。まずは発散させるイメージですね。そこから取捨選択しながら組み合わせたり、構成を組み立てたりしていきます」


演出で「バス」が必要な本質を探る

宮本亜門「とても愛おしいのは、バスの中では、はしゃいでいるけれど、外では石を投げられてしまう。そういったマイナスの要素を違う視点で乗り越える必要があります。つまり、バスが必要ではあるけれど、小さな箱の中でどんなことが繰り広げられているか、逆にその外ではどんな見え方をされているのか、その表現を実現するための手段を見つけることが必要なのだと考えているのです。何か足りないものが出てきた時に、“コレが無いから出来ない”と直ぐに結論づけてしまうことはクリエイションではないと考えています」


「コレはコップである」と思わない訓練をする

バスという一つの枠組みから視点を外し、別の枠組みで組み立ててみる。リフレーミング手法を身につけることは多くの課題解決に役立たせることが出来るが、では物事を見る視点を変えるにはどのようなことが必要なのか。

宮本亜門「思考を変えたり視点を変えたりすることは、訓練しかないとも思っています。例えば、“コレはコップである”と思わない訓練も一つです。コップを真上から見てみたり、真横だったり、下からだったり、とにかくあらゆる角度から見て何が見えてくるのかを訓練することだと思います」

今回の取材は9月26日。ちょうどバス演出について考えを巡らせている最中であった。 “バス”演出の答えは、12月8日から日生劇場で確認することが出来る。


全責任を追う演出家のマーケティング力とクリエイティブ力

ミュージカルの告知の一つであるポスターではメインキャストの顔が並ぶ。撮影は世界的に活躍するフォトグラファーのレスリー・キー。舞台の演出に留まらず、集客におけるマーケティング思考力とそこで表現が必要となるクリエイティブ思考力も併せ持つ宮本亜門は、ポスターにも気を配らせる。

宮本亜門「キャスティングはプロデューサーと半々なのですが、ポスターやチラシなど全て目を通します。言うなれば、まずは劇場に足を運んでもらえないと始まらないので、“行ってみよう”と目を引くポスターやチラシは大切だと考えています。今回のチラシも、色合い含めて最初はとても真面目な感じでした。プリシラを想像するカラーであるピンクやレインボーなどを特徴として出してもらうようにデザイナーへ4回ほど変更指示をしましたね」

結果的に、「蛍光色のピンク」を使い作品の個性を引き出して、目を引くビジュアルへ仕上げた。


個人を再発見する場所

最後に、ミュージカルとは社会にとってどのようなものなのか。

宮本亜門「人間が人間のことを語る、個人を再発見する場所であると思っています。色々な考え方、ある意味では固定概念を覆し、新しい視点を持ってもらえるような場所かなと考えています。今回、イメージ的に女性には観に来てもらえるように思っているのですが、是非、隣りの男性を誘ってもらって多くの男性にも観てもらいたいなと(笑)」



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宮本 亜門

宮本 亜門

1958年東京・銀座生まれ。ミュージカル、ストレートプレイ、オペラ、歌舞伎等、ジャンルを越える演出家として国内外で幅広い作品を手がけている。今年10月に、能と3D映像を掛け合わせた世界初めての試みとなる「幽玄」をシンガポールのアジア文明博物館でワールドプレミア、12月ミュージカル「プリシラ」を上演予定。

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