2017/03/15 | 野村萬斎から学ぶイノベーション力 | 50view

#01_2020年に魅せたいのは 「最先端」より 「日本文化の幅の広さ」

日本文化は、それまでの文化を否定することはなく積み重ねていく歴史をたどってきた。「舞楽、能・狂言、歌舞伎、文楽という歴史あるものに、新派から新劇、小劇場、AKB48、きゃりーぱみゅぱみゅまで幅広い」と話す萬斎は、伝統芸能である能・狂言と先端テクノロジーを融合させた作品づくりに積極的に取り組む。しかし、単純に「最先端」を追うだけではない萬斎の秘めたる思いに迫る。 


野村萬斎×真鍋大度『三番叟 FORM』とは

2017年1月、野村萬斎と真鍋大度によるパフォーマンス『三番叟FORM』が上演された。それは、伝統的な狂言の舞踊曲『三番叟』に先端映像アートを掛け合わせたパフォーマンス作品である。「狂言の教養は『型』である」と言う萬斎が、先端テクノロジー分野との共同作業で目の当たりにしたこととは。
萬斎「僕の『狂言サイボーグ』という本でも触れているんですが、フォーマット化が可能な型そのものがデジタルな領域という発想が成り立つと考えているんです。日本には、伝統的で様々な舞台芸術の知恵があります。オリンピック等で日本が世界から注目される時、最先端の科学と舞台芸術の知恵を別々に扱うのではなく、上手く融合させることで『日本文化の幅の広さ』として魅せたいという思いがあるんですよね。ただ、それを2020年にいきなりやるのでは遅い。だから、今からお互いに歩み寄ったり埋めたり、考える期間も作り2016年に始動して2017年早々にやってみたわけです」


デジタルへのアンチテーゼ

新たな挑戦の中で、逆にデジタルでは表現出来ない自然の素晴らしさに改めて気づく。
萬斎「最近、デジタルが絡んだ仕事もやらせてもらっている中で、プログラムしたものがそのままアウトプットされていくけれど、果たしてその先には何があるのかな?というアンチテーゼを同時に持つわけです。デジタルが主流になってきたとすると、逆にデジタルでは表現出来ない水や火を使ったりしてみようかな?と思ったりします。例えば、水面に何かが落ちる時に水紋が広がる、そういったところに人間は思いを馳せるのではないでしょうか」


観客と演者の引っ張り合いにどれだけデジタルが合わせられるか

萬斎は、型はデジタルな領域と似ている部分があると考える一方で、デジタルだけでは表現出来ないこともあるという。今回の挑戦の中で、デジタルにおける表現の課題を次のように語る。
萬斎「どれだけデジタルが進んだとしても、地球上の多くのものはデジタルでは簡単に割り切れないと思うんです。人間は特に優柔不断で曖昧な部分があるため、すべてをデジタル化するのは本当に難しい。例えばPerfumeで言うと、彼女たちはデジタルな音楽に合わせるために、ある意味『ロボットに徹せられる』それは凄いことなのです。僕の場合はその逆で型をアナログへコントロールしているんです。囃子(はやし)という音楽は生身の人間が奏でるもので、間合いが微妙に異なり、メトロノームの絶対的なリズムがなくなるわけです。そして、その場の観客と演者側の僕との引っ張り合いは人間同士のコミュニケーションになりますから、その駆け引きにどれだけデジタルがついてこられるかということかもしれませんね」


『シン・ゴジラ』の手の構えについてイメージをふくらませる1コマ

『シン・ゴジラ』の構えを萬斎流に分析する

また、2016年に大ヒットした映画『シン・ゴジラ』では、萬斎が329人目のキャストということで話題となった。『シン・ゴジラ』の「シン」は、新、神、真など明確な答えがない中で、萬斎自身は狂言の世界にはない新しい表現にも挑戦している。
萬斎「ゴジラはすり足で前進していますが、狂言の基本的な型がすり足です。逆に狂言にはない構えとして、手のひらを上向きにするというものがあります。手のひらを下にして前に構えるよりも上に向けている方がゴジラの神様というイメージに近くなると考えたのです。仏像は手のひらを上に向けているものが多いのですが、それは玉や龍を持っているイメージのようです。また、従来のゴジラには背中から放射線が出るイメージは無かったと思うのですが、『背中で演技をする』という表現は狂言の中にあるので、そういったイメージから監督が背中から発せられる熱線をゴジラへ投影したのかもしれないです」




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野村萬斎

野村萬斎

狂言師。1966年、東京都生まれ。狂言師。人間国宝・野村万作の長男。重要無形文化財総合指定者。2002年より世田谷パブリックシアター芸術監督を務める。国内外の能・狂言公演や舞台・映画出演はもとより、世田谷パブリックシアターでは『まちがいの狂言』など狂言の技法を駆使した舞台や、『国盗人』(「リチャード三世」を翻案)など古典芸能と現代劇の融合を図った舞台を次々と手掛ける。芸術監督就任後初の構成・演出作『敦 ―山月記・名人伝―』では朝日舞台芸術賞、紀伊國屋演劇賞を受賞。構成・演出・出演を務めた『マクベス』は全国各地で上演を重ねるほか、海外公演(ソウル、ニューヨーク、シビウ、パリ)も果たした。

松井るみ

松井るみ

舞台美術デザイナー。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。劇団四季を経てロンドンへ留学。帰国後、舞台美術家としての活動を開始。2004年『Pacific Overtures』(宮本亜門演出)でブロードウェイデビューし、同作品デザインで第59回トニー賞にノミネート。2007年にはOISTATより“世界の最も名誉ある舞台デザイナー12人”に選出。タン・ドゥン作曲『TEA: A Mirror of Soul』(宮本亜門演出)ではオペラ界においてもアメリカ進出をはたす。さらに、2010年6月には『The Fantasticks』(宮本亜門演出)でロンドンのウェストエンドデビューを飾った。 近年は、上海公演や、AKB48の5大ドームツアー、国立競技場公演のセットデザインを手掛けるなど、活動の幅を広げている。これまでに参加した作品は400以上にのぼり、紀伊國屋演劇賞個人賞、第8回・第19回読売演劇大賞最優秀スタッフ賞,伊藤熹朔賞、菊田一夫演劇賞他、受賞多数。2015年より東京藝術大学の非常勤講師を勤める。

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